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17 奴隷

評価者数が100名を超えました。

ありがとうございます。

 迷宮の入り口前まで戻ってきた。

 転移石が俺を入口まで転移させたことで、あのデカコボルトから逃げることが出来た。

 あれはやばかった。


 あれと戦っていたら間違いなく殺されていた。

 一人じゃこれ以上無理だ。


 あのコボルトの群れもきつい。

 一人でやっていると、倒すのに時間がかかる。

 そうなれば戦闘時間が伸びて、他のコボルトに発見されて、遠吠えされる可能性が高まる。

 

 遠吠えされれば終わり。

 他のコボルトが集まってきて、俺を殺そうとするだろう。

 いや、殺す。

 殺されることは確実だ。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 気づかない間に呼吸が荒くなっていた。

 ここ一か月近く運動というか、戦いをしていたから体力は付いたはずだったのに。

 こんなに呼吸が荒いのは、久しぶりだ。

 

 というより、初めてだ。

 

 あのコボルトから逃げるのにそれだけ必死だったという事か。

 恥ずかしい。


 何が限定奪取(リミテッド・スチール)

 かっこ悪い。


 所詮は人対策の技だった。


 人に対して、優位に慣れるかもしれないだけだ。

 しかも条件が少しだけ、厳しい。


「こんなに弱いんじゃ……」


 復讐もままならない。

 今までこうやって日銭を稼ぐことに注視していたが、俺のやりたいことはこうじゃない。

 だが、どうアクションを起こす。

 

 分からないだろ。

 31人の復讐をするために。


「いったいどうしたらいいんだ……」


 俺は時間は早いものの、迷宮から足を遠のけた。

 太陽はまだ真上にあった。



 考えを巡らせる。

 古い街を通過しながら、ここはどこらへんだと思いながら俺は街を歩く。


 うまそうだな、とか。あれなんだろ、とか。

 もうクラス連中はこうやって歩く事すらできないと思い出しながら。


 弱いな。俺。

 もし。あのコボルトより強い奴が復讐対象だったら、どうやって俺は復讐を果たすのだろう。

 考えたくもないが、あの階層より奥へ行く冒険者は結構いる。


 俺と同じく新兵(ルーキー)は、一階層や二階層で頑張っている。

 このあたりの迷宮では、コボルトが最初の鬼門になる。


 調子に乗ってコボルトのいる階層に行くと、仲間を呼ばれて囲まれてリンチされて死ぬ。

 今日感じた事だ。


 どうやって、俺は3階層を突破すればいいんだ。

 強くなるにはどうしたらいい。

 

 一人でもやっていかないといけない。

 俺はこの世界で一人で、俺に協力してくれる人はいない。


 人間を殺すと言っているのだ。

 喜んで協力する奴なんて、殺人鬼以外居ない。


 いったいどうしたら。

 みんな教えてくれ。




「奴隷でも買ったらどうですか?」


 一時間くらい町を見て、ギルドに数個の魔宝石を換金しに行った。

 

 金髪の受付嬢さんがそう言った。

 目がパッチリしていて、鼻がすっ通っている美人さんだ。胸もそれなりにある。いつもの人だ。

 最近ようやく顔を覚えた。名前は知らない。

 物覚え悪いな、俺。


 まぁ、その辺はいいのだが。

 受付嬢さんの言葉は突然じゃない。

 全部話していないが、俺が帰って来るのが早いのをいぶかしがり、受付嬢さんは俺に話しかけてきた。

 コボルトの3階層を突破できないというと、受付嬢さんはアドバイスをくれた。

 具体的には。


「一人で行こうなんて無理ですよ。聖騎士だからって無茶したら死にますよ?」

「それで、奴隷……?」

「はい」


 当然のように言ってのける。

 馬鹿な。この世界では、まだ奴隷制度が残っているのか。

 文化レベルが低すぎる。


「他の方も割と活用しているみたいですよ。お金がある人限定ですけど。ユウキさんもどうです? 奴隷。それとも、どこかのパーティーにでも入れてもらいますか?」

「い、いえ、ご心配なく……」


 頭がくらくらする。 

 奴隷。

 知識でしか存在しない。人を虐げる制度だ。

 そんなものがまかり通っている世界だなんて。


 俺も危ない所だったのか。

 金が無ければ、どこかの奴に捕まり、奴隷にされていた可能性もあるっちゃある。


「でも、奴隷って意外と高いんですよね。最低でも金貨十五枚から。手が出ませんよね」

「はぁ!??」


 たっか!

 この一か月稼いだ金でようやく金貨一枚分に届きそうだというのに。

 奴隷一人に対して、金貨十五枚!? 

 

 しかも最低価格だろ。

 ありえん。


「でも絶対服従なんですよね。いつか私もイケメンの……おっといけない。では、私は仕事がありますので」


 暗に忙しいのでどこかに行ってくださいと言われたので、カウンターから退散した。

 時間は昼だ。

 ギルド内はがらんとしている。

 俺以外に数人、同業者らしき人が居るくらいだ。


 その前に、聞き逃せない単語があった。


 絶対服従!!

 命令には絶対に従わなければならない。


 これは。

 いい。


 仲間が出来る。

 どんなに嫌でも、俺の復讐に付き合わせることが出来る仲間。

 

 俺はどこかこの世界では俺は一人ぼっちだと考えていた。

 だが、違った。


 奴隷。

 奴隷制度だ。


 これは俺に味方している。

 この制度を使い、目にもの見せてやる。


 仲間。

 使えるやつが良い。


 まずは金を稼ぐ必要がある。


 それに奴隷がどこで売っているかの確認。

 それはオルガにでも聞けばいい。


 問題は金だ。

 金貨十五枚もの金を稼ぐ手段だ。


 これはある。

 あの掲示板だ。


 あれは主に騎士団や地域の人が依頼を出している掲示板だ。

 それ以外だったら、野良パーティー募集とかだ。


 俺はその中で、賞金首の男の似顔絵を見つけた。

 金貨20枚の値段をかけられている。他にも何枚か賞金首の顔が乗っている。

 指名手配犯みたいなものか。

 それに加え、盗賊団の排除。


 最近、この辺で商隊を狙った盗賊団が跋扈しているらしい。

 騎士団が居場所を突き止めたから、冒険者にも協力を依頼して、排除を要請しているとのことだ。

 討伐完了で金貨一枚だ。

 前金に銀貨も30枚くれるらしい。


 超太っ腹だ。

 もし賞金首をぶっ殺したら金貨が20枚も手に入る。

 だが、無理だろうな。


 主導は騎士団らしいし、冒険者は後詰戦力といったところだ。

 でも行くだけで、金貨一枚と銀貨30枚の大型依頼だ。

 これは大きい。

 

 まぁ、奴隷を買うのにはまだまだ足りない。

 

 すると後ろから声をかけられた。

 スキンヘッドのおっさんだ。怖そう。ていうか怖い。めっちゃでかいし。2mあるよ。絶対。あのデカコボルトと同じだ。

 おっさんならデカコボルトも倒せるのだろうか。


「坊主もこれやるのか?」


 スキンヘッドのおっさん、略してスキンは遠慮なく話す。

 バシバシ俺の背中を叩いて、得意満面といった風だ。

 後輩を発見して、いい気になっている先輩といった風だ。


 うざい。


「ええ、まぁ。お金、欲しいんで」

「そうだよな。金は大切だ。ガハハハハ!」


 なんだこのノリ。付いていけない。

 おっさんことスキンはまだ喋り倒す。


「俺も行こうと思うんだ。よろしく頼むぜ! このザイルとかいう賞金首はめっちゃ強いらしいから、関わるなよ。先輩からの忠告だぞ! ガハハハハ!」

「はぁ……」


 スキンはそれだけ言って、カウンターに行って依頼を受ける手続きをしている。

 それだけで30枚の銀貨を受け取っていた。

 やはり、この仕事は旨い。


 銀貨30枚何てまだ何日か狩らないと、稼げる額じゃない。

 それが依頼を受けるだけで、30枚の銀貨。

 成功報酬は金貨一枚。


 ふっ。

 受けよう。

 金はいくらあっても困りはしない。


 三日後か。

 俺も受付に行って、俺もこの依頼を受ける事にする。


「これ、俺も受けたいんですけど」


 盗賊団排除の紙を持って、カウンターに行く。

 先ほどと同じく対応してもらう。


「あまり詳しい事は分かりませんが、どこかに陣取っている盗賊団を襲撃するらしい依頼です。それでも大丈夫ですか? 当日作戦を発表するという事なので」


 惜しいな。

 情報は欲しいが、受付嬢さんも分からないという事ならしょうがない。


「はい、大丈夫です」


 その後は受付嬢さんに簡単な概略を説明されて、夜に町の門の前に集合することになった。


 さらに、前金の銀貨30枚をもらい、懐に入れる。

 それと割符ももらった。


「割符が依頼達成の証明書となるので、無くさないでください。また、重大な問題でも発生しない限り、勝手に依頼を辞めると、最悪賞金首になって追いかけられることになります。ご注意ください」


 最後の方の、賞金首のくだり始めて聞いたんですが。

 しょうがない。

 依頼は出ればいい。


「分かりました」

「何か質問はありますか?」

「えっと、関係ない事なんですけど」

「なんです?」

「名前、教えてくれませんか? 心の中でずっと受付嬢さんって呼んでて、面倒だったんです」


 金髪の受付嬢さんは少し驚いたような顔をして、にっこりとほほ笑んだ。


「マーシャです。初めまして」

「これはご丁寧に、結城 元気です」


 俺も軽くお辞儀して、礼を現す。


「……? ゲンキ・ユウキでは?」


 しまったよ。はい、逆だ。


「えっと、自分の地域ではこうやって、姓と名を逆転させるのが一般的で……」

「そんなのあります? もしかして国外の方でしたか?」

「え、と、まぁ、そんな感じ?」

「……言いたくないならいいですよ。訳アリですね」

「そんな感じです……」


 前のクラス決めの時といい、受付嬢さんことマーシャさんは人が良い。

 だが、深入りすることは決してしない。


 スタンスはこんな感じだ。

 まだ、この世界の人間を信じ切ったわけじゃない。

 というより、だれも信用なんてしていない。


 心の奥底から安心したいが、それも難しい話だな。


「それじゃ、これで」

「はい、依頼頑張ってください」


 激励の言葉を浴びて、俺はギルドを後にした。

 目標は決まった。


 奴隷だ。

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