13 クラス
ね。
稼げないわ。
これ、どうなってんの。
冒険者何て職業は最底辺だった。
全然だめだ。むしろ俺が駄目だ。
スキル持ちであろうゴブリンをぶち殺した後、迷宮内を散策する。何もない。仄暗く光る壁しか見当たらない。
地図を作成しながら探索を行っているのだが、どこにも宝石はなかった。
もう何も手に入っていない。ただ虐殺をしただけだ。
ゴブリンを数匹殺して、迷宮を後にしている。
帰り道、地面を見ながら歩く。
ごめん、皆。情けない話、一銭たりとも稼げていないんだよ。
みんなの命を使っているのに、この体たらく。
本当にかける言葉が無いよ。
「あーあ……」
溜息をつきつつ、何気なしにステータスカードを見た。最近の楽しみではある。ゲームのように偶にレベルが上がるのは、見ていて楽しい。
10あればクラスとやらが手に入るらしいし、今はその辺が目標ではある。
最大の目標は金を稼ぐことではあるのだが。
と、ステータスカードには変化があった。
「今日だけで2も上がってるぜ」
今朝、レベルを確認した時にはレベル8だったが、今は10レベルだ。
あの強いゴブリンの経験値が大きかったのだろうか。それ位の特典でもないとやっていられない。
「おお。これで、クラスとやらが……!」
俺自身の数少ない変化だ。
それにギルドに行く口実にもなる。
そこで情報収集をしようと決意しつつ、帰り道を急いだ。
宿に荷物を置いて、ステータスカードを片手にギルドに向かった。
中にはたくさんの同業者が居たので、邪魔にならないように端による。
何か気まずいからこういう態度だ。
俺って最下級じゃん? 何調子こいてんだよ、みたいな? なら端っこによっておけよ。邪魔するなよ、的な感じで。
一番最後に手続きをしてもらおうとしているだけだ。
それと観察。
やはり宝石みたいなもんを主に皆はギルドに提出して、換金している。
あれってどこで手に入れるんだろう。
欲しいな。一個分けてくれないかな。あわよくば、どこで手に入るか教えてほしい。
なんて思いながら一時間くらい待っていると、ようやく人が少なくなってきた。
俺はそれを見計らい、カウンターへ行って前に話しかけた金髪の受付嬢さんに話しかけた。
「すみません」
「はい、って久しぶりですね。死んだかと思ってました」
受付嬢さんは開けぬけにそう明るく行った。
軽く傷つく。
「魔宝石の提出ですね」
魔宝石というのか。
あの宝石のようなものは。
「あ、っと、今日は、それじゃなくて」
「? 回収されていないんですか?」
回収。
「と言いますと?」
「魔物からですが?」
「……?」
「ん?」
二人して首をかしげる。
やばいぞ。この流れは。
「変な事言いましたかね、私。魔物の心臓ですよ?」
心臓。
胸の中心にあるものだ。
「心臓だったんですか?」
魔宝石とやらは。
「そうですよ? 知らなかったんですか?」
やばい。言いつくろえ。
変な目で見られることだけは避けた方が良い。
「い、いいえ? 知ってましたとも。えっと、今日は生憎と、魔宝石は持ち合わせていないんです」
「……はぁ」
いぶかしげな表情をする受付嬢さん。
そのつぶらな瞳で貫かれたら、俺も一たまりもない。
なんて。
「でも迷宮に行ってたんですよね?」
「う、そうですけど。あ、明日。明日持ってくる予定だったんです。……それより、レベルが10になったんですよ」
大切な情報は手に入れた。
話をうやむやにして、次の話へと強引に移行する。
「ステータスカードを見せてください」
「はい、これ」
カードを手渡し、それを確認してもらう。
金属のような不思議なカードには、すでに俺のステータスが表示されている。
レベルは10だ。
「本当ですね。でも、なんで?」
「へ?」
俺はバカみたいな声を出して、呆けた顔をしているに違いない。
「今まで魔宝石を提出せず、レベルを上げる人なんて見たことありませんよ? 何してたんですか?」
やばい。もう変な事になっているらしい。
もういやだ。やる事全部、裏目に出ている。
「ま、まぁ? 金自体はあったんで? 要らないかな? 的な?」
「……変な人ですね」
「そ、そうですか?」
俺は薄ら笑いをしつつ、頭をかく。
何も悪い事はしていないのに、変な気分だ。
「ま、いいです。仕事ですし。深追いはしません。……では、こちらに」
受付嬢さんは立ち上がって、違う部屋へと案内された。
ドアを開けると、ソファーが二つ。机が一つ。簡素な部屋だ。
受付嬢さんは一つのソファーに座り、俺は対面に腰掛ける。
「今からクラスを決めます。分かっているでしょうが、一生を左右するものですので、ちゃんと決めてくださいね」
「は、はい……」
それほどの物なのか。
俺は気を引き締めつつ、受付嬢さんの言葉に耳を傾けた。
受付嬢さんは部屋の端っこにあった水晶を持ち出してきた。
「では、この水晶に手を当ててください」
「それは?」
「その人に向いているクラスを示してくれます」
それだけかよ。良く分からないが、ここの人たちにとってはこれだけで通用するのだ。
郷にいては郷に従え。
俺も理解した振りをしつつ、水晶に手を当てた。
すると、パアァと水晶が光り輝き、文字が浮かび始める。
「わ、すげ……」
魔法の道具だろうか。火魔法があるのだ。魔法の道具があってもおかしくない。
水晶の中には何個か文字が踊り狂っている。少し見づらい。
「いろいろありますね。予想通りですが」
「何か?」
「いえ、独り言です。……それより、どれにしますか?」
「どれにするたって……」
水晶内には文字が複数浮かび上がっていた。
「戦士、聖騎士、魔法使い、聖職者。より取り見取りじゃないですか。普通の方は戦士で手いっぱいです」
「お、おススメは……?」
適当に聞いてみた。オドオドし過ぎだろうか。
毅然とした態度で居たい。でも性格上それも難しい。
「一人で迷宮に潜っているんですか?」
「は、はい」
「うん、なら。戦士か聖騎士ですね。聖騎士は数が少ないし、ギルドとしてはこっちにして欲しいです」
「なぜですか?」
「そのほうが、仕事が振りやすいでしょ?」
またしても良く分からないが、良く分かったふりだけはしておく。
うん。
聖騎士。
かっけー。
なら、
「聖騎士で」
「わかりました。それでは手続きに入ります」
受付嬢さんが水晶に触って、何事かしている。
良く分からないが、俺も手を当てておいた。
すぐに終わってしまったのか、受付嬢さんは水晶から手を離した。
「では、これから聖騎士としての人生ですね。次はレベル30の時にクラスを決めることが出来ますので。最後に自分のステータスを正確に把握しますか?」
「はい?」
疑問形になってしまったが、受付嬢さんはイエスと受け取ったみたいだ。
水晶に手を触れると、俺の名前が出てきた。
他にも文字がたくさんある。
ゲンキ・ユウキ
レベル10
クラス 聖騎士
武術系統
剣術レベル4
盾術レベル4
魔法系統
火魔法レベル3
光魔法レベル4
特殊系統
限定奪取
「これ、なんですか?」
受付嬢さんは笑顔で俺の顔を見てきた。
まずい。
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