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聖夜の手紙(2015年・冬)

⚫︎像

⚫︎鈴木聖夜(30歳)

⚫︎佐藤順子(26歳)

⚫︎岩本清順(42歳)

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


鈴木聖夜くん、こんにちは初めまして! もう「くん」を付けるような歳でもないかな?

突然だけど、君のことは昔っから全部知ってるよ。昔、君が学校の嫌な連中にいつも何をされていたか。君が帰り道の途中で、あの目の悪いおばあさんがやってる古本屋で何をしていたかもね。

とはいえ、僕は君の敵じゃない。味方なんだ。

君が本来の君に戻るため、その部屋を抜け出してすごかったあの頃の君を取り戻すためにね。気になったら返事をくれないかな? 僕は君を待ってる。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


返事、ありがとう!

だいぶ怪しんでたみたいだけど、返事を送っちゃったら同じさ(笑)。僕の正体について、聖夜くんは色々と考えてくれてたみたいだけど、いい線いってるけど秘密。ネットで調べても出てこないよ。

さて聖夜くんがまずしなくちゃいけないのは、現状確認だ。どうして君がそうなってしまったのか。

それはね、ハッキリ言っちゃうと君のせいさ。いい年こいて社会が怖い、運転免許さえ持ってない、ハローワークに行けないのは君のせいさ。

とりあえずネットの流れで皆が「あいつは悪い」って言ってる悪そうな奴を、君もなんとなく尻馬に乗って「あいつは悪い奴だ」って叩けば何か良いことをした気がして少し眠れるんだろう?

それって、君をいじめてた連中と何か違うかい? 圧倒的に君が悪い。大人なんだから責任ある行動をとらなきゃね。

でもね、君の責任ではないことも少しあるんだ。それは君が子供の頃のことさ。

君のお父さんが原因なんだ。昔々、君がお人形で遊んでいたら、お父さんは君をクローゼットに閉じ込めて出られないようにしたことがあっただろう? 君が今でも外に出られないのは、そのせいなんだよ。

人間関係を形成する大事な基盤となる人形遊びができなかった子供は、将来友達なんかできないんだ。

君はもちろん現状は最悪だけど、そういう精神構造にしちゃったことの責任はとってもらわないとね。君はその時のことを謝らせなくちゃいけない。だって公平に見ても、明らかにお父さんのせいなんだからね。

それは幼い君を、今の君が救うってことさ。それをしなければ始まらないんだ。

さあ、謝らせようよ。


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やあ、成功したみたいだね。ちょっとやり過ぎちゃったみたいだけど、聖夜くんがこんなに積極的になりはじめたんだから、お父さんも内心喜んでると思うよ。

さて、やっぱり山がベストだと思う。海だとかなり遠くまで行かないと砂浜に流れ着いちゃうからね。確か君のお父さん、山は人間の故郷だって言ってたしさ。


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お礼なんていらないよ、人間なら当たり前だって。強いて言うなら、ある像を送っておくから、それを受けとってほしいんだ。友情の証としてね。さて、お父さんのこと、つつがなく終わったみたいでおめでとう。君はもう立派に外に出られるね。でも残念ながら悪いニュースがある。

実は君は見られちゃったんだ。あの時、見てる人がいたんだ。隣の家の佐藤順子さんだ。彼女は誤解してるから、早くなんとかしないと警察に言っちゃうかもしれない。

できるだけ急いで彼女の口をふさいでほしいんだ。頼むよ。


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――以上、自身の父親を含む数人を殺害した鈴木聖夜の部屋で見つかった手紙である。鈴木聖夜自身は同室内にてクローゼット内で首を吊って死んでいた。この手紙は他にも数点押収されたが、全て差出人ならびに消印もなく、筆跡こそ違うものの指紋が鈴木のものしか存在しなかった点から、文中の「僕」なる存在については鈴木の別人格であると捜査本部は早々に結論づけ、事件は終焉を迎えた。


※警察官岩本清順のファイルより抜粋

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