『地域密着名呑新聞』より抜粋(1995年・春)
⚫︎マハカメリア宮(?歳)
⚫︎リリジョン101
⚫︎花奥恵(18歳)
⚫︎像
⚫︎雨多ノ島
『ナノまでミます! 4月分』
今、話題のあの人にインタビュー!
眼鏡をかけた小太りな姿の変人。性別も本名も不明。若きカリスマ、名呑町の名物教祖、マハカメリア宮は駅前のカフェ「浪漫珈琲」にあくびまじりに現れた。
――本日はインタビューに応じて頂き、ありがとうございます。
教祖マハカメリア宮(以下教祖):いえいえ、こちらこそ宣伝して頂けるのはありがたいお話ですから。それにここは近いですからね。裏名呑のリリジョン101跡から。
――何故、このようなことをなさろうと思われたんですか?
教祖:これを始めた時、私は学生で、組織はまだ自主サークルでした。当初は学校側の手が入っていない非公式の謎サークル――ミステリーサークル、なんて呼ばれてましたけどね。何か新しい生き方を提示できないかな、という気持ちからで。あ、宗教法人「リリジョン101」になったのは実はごく最近のことなんですよ。登録した後で信者の一人――外国人の方もいるんですが、「発音的にレリジョンだヨ?」なんて言われちゃって。もっと早く言えって話ですよね(笑)。
――リリジョン101を有名にした雨多ノ島工場反対運動も記憶に新しいですが、まだその頃は宗教法人ではなかったんですね。
教祖:ええ、そうです。当時はまだ協力してくれる方が少なかったですからね。正式に宗教にしたのは、今年はじめの震災のこともあって、人間の傲慢さと言いますか、穢れ祓いと言いますか、そういうものについて考えさせられましたからね。亡くなった方の御冥福をお祈りします。
――アパートの101号室、ならびにコタツに入ってみかんを食べながら説く教祖という、斬新な形式は「現代のディオゲネス」とも呼ばれていますが、このアイデアはどなたが?
教祖:サークル以前のことですが、友人たちが私の部屋のコタツ(夏はちゃぶ台)から出なくなり帰らなくなったんです。いえ、正確には彼らは私の家から学校に行って授業を受け、私の部屋に帰ってくる、みたいな。そこで私はお茶とか料理とかを出してお金をもらってました(笑)。
――そういったものが「宗教」として結実した経緯は?
教祖:もともと相談されやすいタチだったんですけど、ここの学校に入ってた時はホントに多くって。友達にご飯を振る舞ってると、みんな悩みを打ち明けてくるんです。入り浸る人も増えてきて、ご飯代を踏み倒す人も出てきた。いや、私自身は材料費だけ戻ればよかったんですけど、律儀にお金を払いつづけてる人に悪いなと思って。それでいつかサークルとして学校側から部費を貰えないか、とね。でもお悩み相談室的な内容じゃ部として認められなかったんで、あえて「宗教研究室」 として出したんです。真面目に宗教を研究する部。ホントはそこにメガテン(女神転生シリーズ)好きが多くて、よく神話とか信仰の話をしてたからなんですけ ど(笑)。
――そうした、言ってみれば「エセ宗教」が本格的になっていったのは何故ですか?
教祖:現代って信じるものが人によって違うじゃないですか。その中で比較的他者に理解されやすいものが「物語」で、そうじゃないものが「宗教」。でも信じると幸せになれるって意味じゃ二つは同じで、一般的に享受されてる物語「恋愛」だって宗教でしょう。恋愛してない人は幸せではない、みたいな論調がよく女性誌にありますけど、そういった迫害さえ除けば宗教だって恋愛だって信じて幸せになれる。要は他人に迷惑かけるなって話ですよね。そう考えたときに「別に宗教でもいいや」「信じて幸せになれるなら、信じればいいや」って思えたんです。
――ではオリジナル宗教ということですが、この御本尊はどうされたんですか?
教祖:知り合いの芸術家(美少女芸術家、花奥恵)に頼んだんです。イメージを伝えて「よろしく」って。私の夢に出てきた神です。不思議なことに、その晩その方も同じ夢を見ていたらしくって完璧な出来でしたね。
――なるほど。今日はどうもありがとうございました。
教祖:いえいえ、こちらこそ。今度はコタツで話しましょうか。夢の101号室でね。
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