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チュウニでショウゴ  作者: いちの くう
2・イカリ
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2-3 次回の行方

 うまく話をそらすことができただろうか。少なくとも今はこの謎のスーパーに注意が向いているようだ。結構ドジな性格みたいなので、この話を長く続けることで上手くいけば忘れてくれるかもしれない。

 それにそもそも正悟はパンツを見ていないのだから、何故ここまで責められなくてはいけないのかが不思議だった。ついうっかり見ようとしてしまった時なんてざらにあると世の中の男性陣にこの場を借りて聞いてみたい。

「お姉ちゃんが買おうとしてたものを当てようか」

「そんなことがわかるの? うん、当ててみて」

「薬、でしょ?」

「あ、すごい。本当に当てた」

 正悟がたっぷり時間稼ぎと威厳を保つように咳払いした。よく聞いてね、そんな顔をしてゆっくり話した。

「えーとね、専門家じゃないから多少話がアバウトになるけど、数年前に薬事法っていう法律が改正されたの」

「聞いたことはあるね、そんな法律」

「でね、つまりは薬の効き目で副作用の影響も強い弱いとか差があるから3つのレベルで別けたの。第1類・2類・3類って感じで」

「うん」

「で、多分お姉ちゃんが買おうとしていたのは第1類、つまり効き目が強い薬だったんだと思う。というのも第1類の医薬品は必ず薬剤師とかの専門スタッフじゃないと販売できなくなったみたいだから。だから空箱だったのはそれを持って一般のレジじゃなくて、専門のレジへ行けって事だよ。他の2・3類は資格をとった責任者さえいれば普通に販売できるんだけどね」

「へー、なるほど。アメリカとは全然違うね。アメリカなら基本的に市販薬で事足りるからね」

「そうなんだ」

「うん。病院に行く人なんてよほどのことがないと行かないし。風邪くらいではまず行かないよ。救急車だってタダじゃないんだよ」

「え、そうなの!?」

 素直に驚いて、祥子の話に共感する。時間をかけてとにかくあの話題を遠ざける。この事だけを意識した結果、どうやらそらすことが出来たようだ。祥子はしっかりと正悟の話に聞き入っていた。

「それにしてもやっぱり正悟くんはすごいね!」

「これは僕も薬を買うときに実際に経験したから知っていたんだよ。全然すごくないって」

「でも私の話が薬だなんて判断できるのは知っているだけじゃできないよ。コロンブスの卵って知っているでしょ? 底をつぶせば安定するのは誰もが知っているけど、それを実行するにはそれぞれを繋げないといけないよね。正悟くんはそれができるからすごいって言っているんだよ」

「そう……なのかな?」

「うんうん。かわいくて、かっこよくて、賢いなんて……それに少しだけエッチな所も私は好きだよ」

 最後だけ祥子は囁いた。

「なっ……僕は別に見てないよ!」

「うん。見てはないと思ったよ。でも見ようとは思ったよね?」

 こんな聞かれ方をされれば答えは「はい」だろう。だとするといけない事だと知っていたから思いとどまったなどというのはただの負け惜しみにしかならない。

 ひどく追い詰められて普段以上に背が縮んだ正悟に祥子はテーブルを挟んで頭を撫でた。

「別におばさんには言わないから安心していいよ。だって私は正悟くんが好きなんだから」

「……ホント?」

「本当に本当。じゃあ、今度一緒にデートしよ?」

「デート、って?」

「ちょっとしたドライブかな。正悟くんと一緒に買い物して、美味しいもの食べていい景色を見て……ね? 楽しそうでしょ?」

「……うん」

「よし、じゃあ決まりね。約束だからね!」

 とても嬉しそうに祥子が話した。聞いている限りウソはついていないようだし、確かに正悟の一連の行動について演技で大袈裟に怒っているだけで、本気のようにも感じなかった。

 それにしても正悟はこの状況で新たな疑問を持っていた。

「祥子お姉ちゃん」

「何?」

「……いや、何でもない」

「そう?」

 言いかけた正悟を気にすることもなく、祥子はそうそうと思い出したかのように補足した。

「ちなみに、こうして胸元を見せているのは態とだからね」

 胸元がゆるく広げられたカットソーが頭を撫でて前屈みの姿勢でとても見やすくなった胸の谷間。それを時折確認する正悟を祥子は見逃していなかった。

 やっぱり間違っていなかったという思いと、醜態を見られていたという一生の不覚のダブルに正悟は何も言えなかった。




 2・イカリ  完

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