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チュウニでショウゴ  作者: いちの くう
9・クライ
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9-6 どれくらい彼女のことを…?

 自分なんかが。果たして自分なんかがそんな資格を持っているのか。

 まだはっきりしないのにチャンスを生かすも何もないと思うのだがこれからどうすればいいのだろうか。

「あー、やっぱり混んでるねー」

「そうだね」

 告白する、といっても何を告白すればいいのだろうか。

 中学生がアラサーの女性に告白することなんて一般的にもこの場合においても特にないはずだ。

「あー、とっとと先に行きなさいよ! あー、また赤になっちゃった」

「そうだね」

 そもそもあの場所にいて会話を聞いていたのだから本命だとか好きだとか告白するような感情は持ち合わせていない。

 ただ、嫌いではない。むしろ好きだ。でもそれは恋愛感情までの好きではない。ラブよりライクだと思う。

 そんな状態で好きだの言えば誤解を招くし、世間的にも色々問題がある様に思える。

「今日は疲れたね」

「そうだね」

「……ねえ、正ちゃん」

「そうだね……?」

「やっぱり話聞いてないでしょ。考え事? 何かあったの?」

 そこで『貴方について考えていました』とは言えない。

「いや、たいしたことじゃないよ」

「もしかしてあの子達のことじゃないの?」

「…………」

「図星ね。あのテンション高い子も正ちゃんのことが好きだったんだってね。知ってたの?」

「うん。今日会った時からそんな感じはしたんだけど」

「それにあの眼鏡の子もやっぱり好きだったんだね」

「うん。そうみたいだね」

「振るなんてもったいない。嫌いじゃなかったんでしょ?」

「うん。嫌いじゃないよ」

「彼女をリードするのは大変だけど、彼女なら逆に対等くらいでも別にけなしたりはしないと思うけどね。それに正ちゃんを高評価してたんだから。まさか女の子と付き合うのが苦手だとかそんな理由じゃないでしょ?」

「……ん、でもその理由もあるのかも」

「それは仕方ないって。正ちゃんくらいの年齢なら女性の方が大人びているんだから。それに彼女は特にしっかりしているから、そう言った意味では勝てる人なんていないんじゃない?」

「それはそうだけど……」

「今からでも遅くないとは思うよ。明日にでも友達経由で連絡先聞いてみたら? 絶対正ちゃんから話せばあの子は断らないから」

「お姉ちゃんは……僕が付き合った方がいいと思うの?」

「そうね。断る理由がそれならもったいないと思うな。草食肉食なんて言われてるけど人間は人間なんだから草ばっかり食べて生きていけないでしょ?」

「そう、だね」

 どうやら祥子もくっつけたがっている。理由はわからないが率先してくっつけたがっているのは感じ取れた。



 本当に明日連絡を取ってみようか。だとすれば帰ってから庄太郎にメールして……いやいつ家に帰るかわからないから明日にしよう。明日に昨日の感想とお願いをしてみよう。電話では言えない。メールなら何とかなりそうだ。今日帰ったら早速言葉を考えないと。

 それでも付き合うということが想像できない。薫子は嫌いではない。好きだ。その好きもどうやらライクに近いが向こうはラブに近いという事実があった。こちらはラブではないにせよ大して断る理由がないはず。でも恥ずかしいとか苦手とかそんな理由で説明できない何かが、その何かが見えてこない。公園で2人きり、一緒に遊園地、そこにいる自分が想像できない。

 祥子の言葉に素直に頷けないのは何故だろう。今まで祥子には色々あれど必ずこちらが折れていた。それなのに今回だけは腰が重い。強制されても行動に移そうという気持ちがどうしても湧いてこない。何故だ。


『じゃあ彼女がいない生活を考えてみたら?』


 確かあの時は出会ってから色々な場所に行って楽しかった、そんなことを言った記憶がある。確かに今まで行かなかった所に連れて行ってもらったから楽しかった。


『場所は重要じゃないのよ。ただ一つ大切なのはどのように一緒に過ごしたかなの』


 とにかく強引だった、そんなことを言った記憶がある。間違いではない。

 でもあの時のやりとりを今こうして振り返ると薫子が言いたかったことがわかった。勘違いしていたのだ。祥子へのライクをラブだと勘違いしていたのだ。

 そう考えると薫子も祥子と似ているかもしれない。強引だ。自分の思い通りになるのが普通だと思っている。それに従わない自分がおかしいと思っている。



 でも、不思議と嫌悪感はない。祥子も薫子も好きだ。

 付き合いたいではないけれど一緒にいるのが心地よいとは言える。

「そっか……」

「え、なにが?」

「ん、いや。何でもない」

 心の整理ができてとてもすっきりした。

 それを言葉にしよう、そう思ったのは薫子からの告白しろの言葉が残っていたかもしれないが、正悟にとっては自然なことだった。

「お姉ちゃん」

「何?」

「あのね……」

 渋滞でなかなか進まない車中でゆっくりと正悟は話し始めた。

「お姉ちゃんは青森に行ったことある?」

「青森はないね。学生時代の修学旅行で日光と京都くらいしかないかな」

「竜飛岬って知ってる?」

「石川さゆりだっけ。津軽海峡冬景色の歌詞にあるよね」

「うん。青森の中心部からその近くまで国道が繋がっているらしいんだけど、お姉ちゃんとだったら『その国道だけ』を使って車で行ってみたいな」

「……突然どうしたの。何かあったの?」

「いや、お姉ちゃんと一緒だったらそうしてもいいかなって話」

「青森ねぇ……確かに色々行ってみたいね。私の知らない日本がまだまだたくさんあると思うんだよね。その時は正ちゃんを誘ってもいいの?」

「うん。……お姉ちゃんと一緒にいると楽しいから」

「そう? 嬉しいこと言ってくれるじゃないの」






 どうやら正悟の照れくささが増した告白は祥子には伝わらなかったようだ。

 それでも違う意味でニュアンスは伝えられたらしく、結果的にはひとつの形に収まった。

 最終的には『一緒にいると楽しい』というありきたりな言葉になったが、それが2人共通の単純な関係を示す言葉になった。

 これからも続く夏休みに2人はどこへ行こうとしているのか。

 それは作者である私にもわからないが、2人の仲はこれからも続くことを一言だけ添えておわりにしよう。

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