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チュウニでショウゴ  作者: いちの くう
6・ゲーセン
27/43

6-9 無事解決

 左手に柚里香たち、右手に美樹たちからの視線を集めて正悟が立った。

「じゃあ、最後の確認をしたいと思います」

 そしてテーブルに1枚の千円札を置いた。何の説明もなく置かれたお金に美樹が聞いた。

「何これ、お詫びのつもり?」

「違うよ。店長さんに確認して借りてきたんだ」

「借りたって、それが今回とどう関係あるわけ?」

「あるんだよ。その千円札とね」

 指さしたのはベーベアの小銭入れに入っていた千円札2枚。まとめて折られていたそれを正悟は丁寧に広げた。

「本当は指紋を確認すれば確実なんだけど、そんな手間をかけられないから指紋の変わりになるもので確認しようと思うんだ。紙幣番号でね」

 正しくは紙幣記番号。全ての紙幣には番号が当てられており、同じものは2つとない。

「こっちのお札ってまとめて折られているのと、割と綺麗なのが気になって見てみたんだ。そうしたらほら、番号が連続しているんだよね」

 美樹によく見せるように目の前に置いた。美樹は一度だけ視線を落としただけで十分だと感じたのか長くは見ようとはしなかった。

「そして借りてきた千円札。ほら、番号がこの2枚と連続しているよね?」

 同じく少し見ただけでまともに確認しようとはしない美樹。

「そして折り目も少し残っているけど、この2つと同じ折られ方。番号が揃っていて折られ方が同じ……元はピン札だったんじゃないかな?」

 振り向かれてようやく発言権を得た柚里香が口を開いた。

「うん。お年玉の3千円だったの。でもそのお札って……」

「そう、この千円札は両替機のだよ。店長さんに確認してもらって、僕と小野さんが最初に会った時の両替機から見つけたんだ。ちなみにその両替機をカメラで確認したけどお姉ちゃんたちが使っているのは確認できなかったよ」

 既に勝利を収めつつある。正悟の口調がやや強まり、柚里香も身を少し乗り出していた。それでも美樹は表情を変えていなかった。

「お札の一致と監視カメラという証拠からこの小銭入れがお姉ちゃんのものではないのが証明された以上、どうして持っていたのかという疑問が出てくるよね。あとは状況証拠だけど小野さんがプリクラ内に置き忘れた可能性とそのプリクラ内での不明な行動と逃げるように出てきた事実を繋げれば自然と答えは出てくると思うんだ。……これでどうかな?」

 そこですべての視線が美樹に集まった。

 美樹は足を組み替えると突然手を叩いた。それが拍手であるのに一同が気付いたのはしばらくしてからだった。

「流石は名探偵って感じね。途中からただの子供ではないと思っていたけど、これほどまでとは素直に負けを認めるしかないみたいね」

「じゃあ……」

「そう、私ら……といっても主犯で実行犯は私だけど、私があの中でこれを見つけて取った事実に間違いわないよ。私もちょっとは抵抗したんだけど、ピン札で繋がっていたのは気付かなかったなー。君の勝ちね」

 拍手からこれまでさほど表情は変えなかった為、どこか投げやりな感じがぬぐえなかったのだが、スッと美樹が立ち上がると机に当たるのではと思うほど頭を下げた。

「私の身勝手な行動で迷惑をかけてしまって申し訳ありませんでした。これでどうにかしてほしいわけではないけど、まずは謝らせてもらうわ。ごめんなさい」

 急な展開。オレンジの髪を重力のまま真下に垂らし、テーブルにぶつかりそうなほど90度近く頭を下げた美樹。それまで足を組んで上からの態度をとっていた同一人物とは思えない行動に目の前にいた柚里香は驚きを隠せなかった。全く頭を上げる気配がなかったため、日本人の性と呼べる反射的な行動で諭した。

「あのっ、財布も無事に返ってきたので、大丈夫です」

 その声にゆっくりと頭を戻した美樹は少しだけ優しい表情になっていた。

「そう、よかった。こんな私に優しくできるなんて本当にお姫様みたいね。ありがとう」

「そ、そんな事は……」

 照れる柚里香を横に店長には表情を戻して硬くした。

「さて、私は警察に行けばいいのかな? それとも出禁(出入り禁止)?」

「あのっ、都合がいいかもしれませんけど無事に財布が返ってきたので大事にはしたくないというか、それに……本当はそこまで悪い人だとは思えなくて。確かに財布を取ったかもしれませんけど、私が忘れたのも事実だし、他の目がないから思わぬ出来心という……それがいけない事なのはわかっていますけど、でも――」

 敵対していた柚里香がここまで美樹のことを庇うとは思っていなかった。驚きの行動に薫子や正悟たち、店長を含めて美樹までもが呆気にとられた。店長はしばし間を開けると、なおも話し続ける柚里香を手で抑えて美樹に伝えた。

「被害に合った彼女がそこまで言うのなら、お咎めなしとします。ただし今回はあくまで特別ですので、以降何かあれば家族や学校に、警察への通報もあるので心に留めておくように」

「はい」

 こうしてベーベアの小銭入れ盗難事件は解決した。

 正悟の名推理のおかげで『ベーベアの小銭入れ』の盗難事件は解決したのだった。

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