6-8 途中女子会があり
正悟が店長と共に事務所を出てどれくらいが経っただろうか。
「あーあ、眠くなってきちゃった」
欠伸をしながら他人事のように呟く美樹。
今この部屋には女性しかいない。容疑者側に美樹と朱美、探偵側に柚里香と薫子と祥子の5人だ。
「朱美、喉かわいたー」
それまでしゃべることもなくまともに動くこともなかった美樹の横にいた赤系短髪の少女が鞄を開けてペットボトルのお茶を取り出した。朱美から手渡されたそれを受け取ると遠慮なしに口をつけて飲み干した。そして空を朱美に返し、彼女は鞄へとしまった。色々とギャップのある光景に手前の3人は困惑気味だった。
「実は私たちプリクラ撮ってないんだよね」
そんな時にさらりととんでもない事を言うものだから3人はいまいち内容を掴めずにいた。
「それ、どういう意味ですか?」
代表して聞いたのは柚里香だった。
「どういう意味もなにもそのまんまだよ。どうせいつかはバレるから言っておくけど、今回私たちはプリクラを撮ってないって事。撮る気がゼロではなかったけど、周りから見えないと色々と都合がよかったんだよね」
一体どんな都合なのか、3人の頭に『?』が出ているのを見たようにその正解を実演した。それを見た3人は『!!!』の驚きに包まれた。
美樹と朱美がキスをしていた。
美樹が顔を寄せて朱美が受けるように瞳を閉じた。やさしく重なる唇と混じる吐息が見るものを混乱させ、妖美なオーラを出していた。
レズ、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。言葉の知識はあっても、全く免疫のない中学生が女性同士のキスの光景を見るのはとてつもない衝撃だったに違いない。
「ちょっと、あんたたち何してるのよ!」
少し遅れて祥子が声を挟むも時すでに遅し。それから5秒以上して顔が離れた2人だが、軽く10秒以上はキスが続いていた。
「何って、キスよ。それとも女の子同士でなんて古い考えの持ち主なの?」
「いいえ、私はアメリカが長かったからその辺の理解がないわけではないわ。でも今ここでやるような事ではないでしょ!」
「へー、アメリカね。減るもんじゃないし、ハグだってやるわけだからその延長線上って考えでじゃいけない?」
「いけないもなにも、そんな意味合いでやったわけじゃないでしょ。変なこじつけを付けないでくれる?」
「あー、バレた? 念のため言っておくと、私はかわいければ誰でもいいけど朱美はどうやら本物らしいよ」
美樹がそれを言うなり、朱美が恥ずかしがって目線を下げた。おそらく彼女はつり目で赤系短髪という見た目ほど気が強くないのかもしれない。好きな美樹と一緒にいたいがための毛染めであり、公表しにくい関係であるがゆえ全権を美樹に委ねており金魚の糞状態なのだと祥子は考えた。
中学生2人が美樹の作る妖しい雰囲気にのまれていた。しかしアメリカ生活が長く唯一の大人である祥子が負けじと噛みついた。
「そんな事は聞いてないわよ。たとえプリクラ撮らずに中で乳繰り合っていたとしても今回の件とは全く関係ないじゃない。捕まらない余裕か何か知らないけど、いい加減にしなさいよね」
「何もできないおばさんに言われてもね……。小さくてかわいい男の子が今どこかで頑張っているというのに足だけが自慢の人に言われてもなぁ」
「……あんた、私を馬鹿にするのは勝手だけど、正ちゃんを甘く見ていると痛い目に合うからね」
「……そうか、私はそう見られているわけね。私は別に甘く見ているわけではないんだけどな。かわいいから『正ちゃん』を甘い目で見てはいたけど」
「ふざけないでよ!」
再び祥子の言葉が荒々しくなった時だった。
ドアをノックした音が聞こえた。ドアノブが回ると正悟と店長が姿を見せた。
「どうかしたの?」
周囲を見渡して1人立ち上がっている祥子と目が合った。
「何でもない。……それより見つかったの?」
「うん、見つかったよ」
正悟のその返事に祥子は目を輝かせ、柚里香は薫子の手をとって喜びを表し、薫子は驚き半分の視線で正悟を見た。
「へー、じゃあ見せてよ」
美樹は実に楽しそうな表情だった。当事者でありながら他人事のような様子だ。
正悟は店長がいたセンターポジションに立った。その背後に店長も立つ。皆の視線が集まる中、正悟は最後の銃弾を撃ち放った。




