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チュウニでショウゴ  作者: いちの くう
6・ゲーセン
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6-7 とっておきを見つけ

 正悟はゲーセンという場所に慣れていない。行った事がないわけではないが、少なくともこのお店は初めてだし、自らの意思で進んでゲーセンに行こうとは思ったことがない。そのためゲーセン事情というものを知らず、例のキャラクター『ベーベア』の存在もその名前も、小銭入れがゲームの景品である事も知らなかった。

 現時点で正悟は過去に同じく攻める立場でありながら決定打を欠いている。それは舞台が相手のフィールドだという事で、相手はホームの利と知識を十分に生かして有利に戦っている。さて、プリクラの中という隔離された場所での出来事をどうやって証明すればいいのか。

「どうしたの、もう弾切れ?」

 隠すつもりもないニヤニヤ顔を見せつける美樹。対して正悟は黙り込んで下を向いていた。

「名探偵君が一気に迷探偵君になっちゃったね」

 言っただけだが『名』が『迷』である事はこの場の全員が理解した。もうダメなのか。決定的な証拠がなければ美樹は犯行を認めない。犯行の現場を捉えた決定的な証拠。それぞれが力になれればと考えるが出てくるのは指紋程度。行えば確実だろうが今この場で出来るようなものではない。

「もう少しは楽しめると思ってたんだけど残念だなー」

 正直な所、正悟の持つ銃に弾はもう入っていなかった。わずかな手がかりを元に諦めてくれればと思っていたが、確実な証拠もないまま動き始めてしまった結果がコレだ。プリクラ写真を確認する事が出来ず、監視カメラもプリクラへは向いておらず空振り。これ以上攻める場所があるのなら教えてほしいくらいだった。

「そういえば、証拠がでなければどうなるんだっけ……?」

 必死に考えている正悟に聞こえるように独り言を呟く。楽しい夏休みになりそう、なんて言葉も出てきた。

 柚里香や薫子たちの睨みも何のその、美樹は薄笑いをしながら物思いにふけていた。


 正悟は追い込まれていた。

 攻め方は悪くはないと思う。捨てたりはしないであろう財布が出てくれば最初のポイントだ。しかし美樹は捨て駒のように扱った。結果的に景品であるという理由で同じ財布を持っていてもおかしくはない状況になった。次に財布の中身だ。金額がある程度わかれば誰のものなのか期待値を上げられると思ったのだが、逆手を取って効果を打ち消した。そして最後の砦としてプリクラや監視カメラの確認を行おうとしたが、最初から向こうがそこまで理解していたのか不明だが天に見離されてしまった。指紋も粉とかセロハンテープとかで簡単にわかるようなものではない。

 今この場で確認できるものはもうない。目の前にあるのは嘲笑っているかのようなクマの小銭入れ、まとめて折りたたまれた千円札が2枚と百円玉が2枚。これだけで解決しろと言うのか。

 正悟は恨むような目つきでそれらを見つめていた。お金のためではないのだが、2200円のためにここまでするべきだったのか。まるで自分の価値が2200円であるかのように錯覚する。

 そもそも小銭入れにお札を入れる時点でどうにかしているのだ。200円だったら諦めもついただろう。わざわざ折りたたんで入れるようなものではないだろうに。比較的新しそうに見えるお札を折り曲げてまで入れる必要性があったのだろうか。

「……?」

 おもむろに立ち上がった正悟。目の前に置かれている千円札2枚を手に取った。丁寧に広げて透かしを確認するかのように上にかざしてじっくりと見つめた。

「どうしたの、名前でも書いてあるの?」

 完全に茶化している美樹の言葉も頭の中に入らない。それどころか勢いよく千円札を机に置いた。先程までの正悟とは比べ物にならないほど力が入った音に一同が驚いた。

「店長さん、確認したい事があります。いいですか?」

「あ、はい」

「少し時間を下さい。これで最後です」

「楽しみにしているよ」

 力を取り戻した正悟を見ても危機を感じず、むしろ遊ぶ時間が延長したとしか思っていない美樹は笑顔で返した。

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