6-5 助けようとして
この手はできれば使いたくはなかった。しかし現行犯でない以上彼女たちを引き留める程の理由はなく、仮に無実だったらこちらが訴えられる側になる。だからこの場を離れにくい状況を作る必要がどうしてもあった。
「お姉ちゃん、僕のお金見てない?」
少女は大人に反発する。では子供ならどうだろう。それも泣いている子供なら。自分の意思が伝わりにくく、立場が上であるが故つっけんどんな態度を取りにくい相手。
演劇経験がない正悟だがこの際そんな事は関係なく、助ける一心で正悟は涙ウルウルを演じた。
「見てないよ」
「でも、確かにあの中に置いたのに、見に行ったらなくて……」
「そんな事言われても知らないって」
「……じゃあ、お姉ちゃんは何のためにあそこにいたの?」
「は? プリクラ撮りに行ったから入ったに決まっているでしょ」
「でも写真の取り出し口が外にあるのに、取らずに出て行っちゃったから……」
「!」
確かに勢いよく出てきてそのまま2人は出口へ向かった。するといつ写真を手に取ったのか。
「取ったよ。取ってから一度中に入ったんだって」
「本当に?」
「そんな下らないウソついてどうするんだよ。もうこれでいいだろ」
正悟は念を押して言い訳の確認をさせた。ここまではある程度の想定内であり、会話が成立できた時点で半分勝利を手中に収めていた。
もうそろそろ来てもいいはず。横目で確認すると店員を連れてきた柚里香と薫子が見えた。
「連れてきたよ」
店員の姿を見て舌打ちをする女子高生。店員が彼女に近づいた。
「ちょっと事務所まで来てもらえますか?」
「何で? 私ら何もしてないのに盗人あつかいするの? そんなに盗人呼ばわりするなら証拠を見せてほしいんだけど」
そう言われては黙るしかなかった。仮にここで荷物チェックが出来たら出てくるかもしれないが、周囲の目がある中こんな通路のど真ん中では出来ない。
店員含めて皆がどうしたものかと口を閉ざしていたところに正悟が前に出た。
「証拠ならあるよ」
「へー、どこに?」
「この場では難しいよ。身体検査をこの場でやってもいいならやるけど、それは困るでしょ? 事務所に行けば見せてあげるよ」
「……もし証拠が出なかったら?」
「その時は土下座でも何でも」
「へー、面白い」
小5並の正悟と、祥子には劣るものの顔1つ分の差がある長髪を染めた少女が互いに正面を向き対立していた。
「ねえ、美樹……」
この空気に耐えられなくなったもう1人の赤髪の女子高生が口を開いた。
「朱美は黙ってて。絶対にしゃべるんじゃないよ」
やはりどうやら2人のうち鍵となるのは美樹と呼ばれたオレンジの少女の方らしい。見た目はギャル系で決して賢くなさそうなのだがなかなかの切れ者らしかった。
「今日は面白い事になりそうだね」
美樹は舌なめずりをしながらうっすらと口角を上げたのだった。
今回も出題はありません。
果たして事務所内でどんなやりとりが行われるのか。正悟が追い詰めるのか、美樹が逃げ切るのか、それとも別の真相が出てくるのか……と無駄に大風呂敷を広げてみました。
推理は困難ですが、ここから先の解決編を楽しんでいただければ光栄です。




