6-3 仲良くなって
祥子は待っていた。
「……どこ行ったのよ」
両替に行ったはずの正悟が帰ってこない。もう数分経つのだが、どこまで行ったのだろう。キョロキョロ見渡して、そして見つけた。
「あ、おそ……いっ!?」
まさかこんな事があろうとは。正悟が自分以外の女の子と手を繋いでいる、というより繋がれて引きずり回されている。
「どうしたの、正ちゃん」
「えーと、ごめん。手伝ってくれるって」
「はじめまして。お子さんが苦労しているって聞いたもので」
引きずり回していた赤眼鏡の少女がそう言うのだった。とりあえず、色々誤解をしているようだがこの場でどうこう言うのは不適切だと判断した。祥子と正悟は互いにアイコンタクトをした。
「あ、これね。えっと、これなら2~3回かな。この手前のやつでいいんだよね?」
「うん」
赤眼鏡の少女は100円を入れるとボタンを押した。アームが降りた場所はぬいぐるみの中心からずれた所だった。
(あ、失敗!)
そう正悟が思った瞬間、あれほどクマにやさしいアームが足の部分を持ち上げて落とした衝撃で穴の方へずらしたのだった。そしてその繰り返しで3手でぬいぐるみが穴に落ちた。
「すごーい!」
「すげー」
祥子と正悟がそれぞれ声を漏らした。
「私は見てないけど、素直に真ん中を狙ったらダメだからね。もう今はキャッチできるほどの力がないから、できるだけ力がかかりやすい、例えばアームの端っことか景品の隅を狙って動きやすいところを狙わないとね」
そう言いながら赤眼鏡の少女はゲットしたクマを正悟に渡しながら手を握り締めるのだった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「あ、お金……」
「いいよ。好きな人に悪い人はいないしね」
「え?」
「柚里香(ユリカ)、今のは誤解を招くと思う」
驚く正悟に、ずっと前から赤眼鏡の少女と行動を共にしていた肩甲骨まで伸びた黒髪ストレートの銀ぶち眼鏡の少女がようやく口を開いた。
「え? ああ、コレを好きな人に、はね。にゃはは、薫子(カオルコ)ちゃんナイスフォロー!」
「……それと、その手もね」
薫子と呼ばれた銀ぶち眼鏡の少女はブリッジ部分を人差し指で上げながら付け足した。柚里香はクマをあげてから今の今まで正悟と握手をしていた手をようやく離した。
「薫子ちゃん、ナイスフォロー!」
「ご迷惑かけました。では」
「じゃあねー!」
慣れっこのように1人になった柚里香を薫子は引き戻し、その場を去った。柚里香はそれでもめげずに正悟にバイバイをするのだった。
「……」
「……」
完全に視界から外れて2人だけとなり、互いを見合った祥子と正悟。
「何だったの?」
「僕にもわからないよ」
「んー、まいっか。無事にゲットできたことだしね。今時親切な子もいるもんねー」
「そうだね。ちょっと色々言いたいことはあるけど、いい女の子だったね」
「正ちゃん、惚れた?」
「なっ! そ、そんな事あるわけないでしょ。変な事言わないでよ」
「はいはい。言い訳は帰りの車の中で聞くからね。じゃあ、次は――」
正悟の意見を聞き流しながら祥子は次のゲームを探すのだった。




