僕は、一度も空を飛べたことがない。
僕は、生まれてから空を飛べたことがない。
それは非常に恥ずかしいことだ。
何度が挑戦したものの、ヒザを擦りむいてばかり。
高い所からジャンプしても、全く飛べる気配はない。
友達はみんな飛べるのに。
昨日、学校で空の飛び方講習会があった。
みんな学校の屋上からスイーと飛んで、どこから来たか分からないえらい人に、信号の飛び方とか、道路を飛ぶときに注意することとか、色々なことを教えてもらっていた。
僕は、飛べないから屋上からみんなが飛んでいる姿を見ていた。
僕以外に飛べない人は二人いた。でも、一人は足を骨折していたし、もう一人は風邪を引いていたらしくて、純粋に飛べないのは僕一人。百五十人も四年生がいるのに、飛べないのは僕一人。三年生の時は、もっと飛べない人がいたけど、この一年間でみんな練習をしたらしい。
空が飛べなかったら、ジェット機の免許も取れないだろう。
今どき、ジェット機の免許を持っていない大人なんて聞いたことない。
大人になったら、外国製で左ハンドルのジェット機に乗るのが夢なんだ。
でも、その前に空を飛べるようにならないと。
お父さんやお母さんに後ろを持ってもらって、何度か飛ぶ練習をしたら自然と飛べるようになる。と言う話を聞いたので、今度ためして見よう。
と、いうところで目が覚めた。
あまりも自転車に乗れないので、変な夢を見てしまったようだ。
今日こそ乗れるようになってやろう。
なんだよ、空を飛ぶだなんて。僕はプッと吹き出すと、自転車の乗る練習を始めた。
あ、そうだ。
「お母さーん、自転車の後ろもって!」