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俺の友達の話シリーズ

シオマネキ

作者: 尚文産商堂
掲載日:2010/10/31

小さなころ、夢を見た。

海岸沿いと思うところに、私は一人で立っていた。

足元も、見渡す限りがすべて砂浜で、海は地平線とも水平線ともとれるような彼方に静かにあっただけだった。

ふと、砂浜のあちこちに小さな穴があいたと思うと、その穴からカニが出てきた。

片方のはさみがもう片方よりも大きいのが特徴のシオマネキだ。

その動きから潮を招いている様子からつけられた名前らしい。

しかし、それは1匹ではなく、文字通り無数に出てきた。

同じ穴からも数十匹単位で出てきた。

私は、その光景を見て、一歩足を引こうと思った。

だが、その足元にも、シオマネキが海のようにやってきていた。

そのとたん、私は悲鳴を上げた。


夢から覚めると、着ていた服は寝汗で小湿っていた。

「どうしたの?」

「怖い夢を見たの…」

私が夢の中で出した悲鳴は、本当に出していたらしく、母が様子を見に来てくれていた。

「どんな夢?」

私が寝ている敷布団のすぐ傍らに座り、私がついさっき見た夢を話した。

話していると、じょじょに母の表情がこわばっていった。

「…お母さん?」

私が心配になって母に聞くと、どうやら母も同じ夢を見ていたらしい。


もう寝れそうもないから、そのまま私は起きて、居間へ向かうと、すでにテーブルには、父もいた。

「今日はいつもよりも早いじゃないか。まだ6時15分だぞ」

テレビでは、NHKが6時のニュースをしていた。

「あなた、この子もあの夢を見たんですって」

そういうと、父は持っていたお箸を丁寧に置いた。

「…そうか」

「そうか、じゃなくて、あの話通りなら…」

「あれは単なるうわさだ。信じるんじゃない」

父は、今まで見たことがないほどの口調で、静かに言い切った。

「さあ、もう一度寝てなさい。学校の班の集合時間は7時45分だっただろ?」

「ねえ、あの話って?」

私は父に聞き返した。

母と父は、目を合わせ、そして何も教えてくれなかった。


翌日、家に帰ると、父がなぜか家にいた。

「お父さん、仕事は?」

「今日は早上がりにしてもらった。もうそろそろ…」

その時、電話が鳴った。

「はい…あ、そうですか。わかりました」

それから、母のところへ行き、父は告げた。

「大間のところにいた伯父が亡くなったよ。交通事故だそうだ」

「やっぱり…」

私は、何で、そんなことを言うのかわからなかった。

「ねえ、それって昨日話していた話を関係あるの」

「もう、話してもいいだろうな」

「ええ」

母と父はそう言って、私を居間のテーブルのところの椅子に座らせた。

「昔、お父さんのお爺さん、里香から見ればひいお爺さんに当たる人が亡くなる前日、一家全員で不思議な夢を見た。水平線まで広がっている砂浜に無数のシオマネキがいるという光景だ」

昨日私が夢とほとんどそっくりだったらしい。

「それで、よくわからなかったお父さんは、お父さんのお父さん、つまり里香から見ればお爺さんに聞いたんだ。そしたら、お爺さんは昔話をしてくれた」

その昔話というのは、昔、一匹のシオマネキが砂浜を歩いていると、死体がうちあがっていたそうだ。

そこに海から上がってきた神様が、どうしてもこの死体を海に戻してほしいと、シオマネキにお願い詞をしたらしい。

そこでシオマネキは、仲間を呼んで一生懸命、その死体のところまで潮を招いて死体を神様のところに送ったそうだ。

そこから、神様がシオマネキに潮を招かせるという力を与えたという話だった。

「そして、そこからシオマネキという言葉が生まれた。だけど、そこからもう一つの意味も生まれたんだ」

「もうひとつの意味?」

「"死を招き"という言葉だよ。さっき話した昔話は、もともとは生きた人間だったという話もある。そのパターンだったら、ひん死の人間を見た神様が不憫に思い、近くにいた一匹のカニに命じて潮を招かせた。それが、今のシオマネキになったという話だよ」

その話を聞いたのも、もう相当前になる。


そういえば、この話を思い出したのは、昨日、シオマネキの夢を見たからだ。

そこまで考えた時、携帯に実家からの電話がかかってきた。

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