私の胸は誰の為?
今日はR15です<m(__)m>
黒いお話です!
同じクラスになった長野くんは爽やかなイケメンで清潔感もあるから……やっぱり私は好きになった。
「また簡単に好きになって!!愛乃のそう言う所って、どうかと思う」
親友の夏希の言葉は耳が痛いけど、どうせ片想いだし、いつもの様に遠くから愛でて脳内妄想を募らせるだけ!
なんて思っていたら化学の授業で実験をやった時に長野くんと同じ班になって……長野くんが点けたアルコールランプに私の髪の毛が触ってしまい、ちょっと焦げてしまった。
変な臭いがして髪は2cmほどダメになり、長野くんは平謝りしてくれたけど、その事がきっかけで、なんと!!
いや、なんとなくなんだけど……
長野くんと“お付き合い的”なものが始まった!
髪はまた伸びるものだから私は惜しげもなく切り揃えたのだけど……
長野くんから「内田さんのキレイな髪をダメしてしまってホントにゴメン!!」と気遣って貰って……片想いの子から気遣ってもらうなんて“人生初”な私は天にも昇る気持ちだった!!
「これは絶対チャンスだよ!!」と夏希からも応援されて、二人で男の子ウケする女の子像を模索した。
勿論!小学生の時から培って来た“腐女子オーラー”は噯にも出さない様、充分に注意して!!
そして遂に!!
彼の部屋で!
セイコーしたの!!!
いや!その!
エッチまでじゃないよ!!
ギュー!っと抱きしめられて……
キスをね!
されたの……
今日は日曜日。いつもなら「明日からまた学校かあ」なんて気分なんだけど、今はそれどころじゃなく、家に帰った後も何度も何度も記憶を再生!!
そう!いつもはこの時間、ブルーレイで“推し”のシーンを繰り返し観て胸キュン!しているのだけど……
やっぱり生は違うわ!!
しかもヒロインは私自身!!!
この幸福感と『次はどうすればいいんだろう??』と言う不安のマリアージュに、私はしこたま酔っぱらい、ずっと顔を赤らめながら「この事を夏希に報告すべきかどうか?」なんて悩んでいた。
次の日、教室に入ると、なんだか夏希が思い詰めた顔で私の袖を引っぱるので、とにかく後について階段を昇って行くと屋上に出る鉄扉の前でようやく私を振り向いた。
「2組の柏木って男子知ってる?」
「うん……なんとなく」
「アイツの親とウチの親、昔からの知り合いでさ!柏木とも幼馴染みたいな感じだったんだよね……」
何、これ?!
ひょっとして幼馴染から片想いへの発展形恋バナ??
よし!ここは“片想い成就”のセンパイとして相談にのってあげなきゃ!
「それ、どう言う事?!」なんて身を乗り出したのだけど……
「その柏木と長野くんは同中で、今でも結構つるんでるらしいんだ!」
「そ、そうなの?」
「うん、それでね……」
いつもは私にハッキリ物を言う夏希の言葉の歯切れがどうも悪い……
「それで??」
「うん、あの、柏木もさ!愛乃と長野くんが付き合っているのを知っているから……昨日の夜、たまたま長野くんに聞いたらしいんだよね、『内田さんと最近どうよ?』って、そしたら……」
私の胸はザワザワドキドキして……今度は私の方が歯切れ悪くなる。
「……そしたら?」
夏希、一瞬逡巡して「ゴメンね」と頭を下げて切り出した。
「長野くん『今日、オレの部屋に引っ張り込んで抱きしめてキスしたんだけどさ! キスがぎこちないのは“初物”の証拠だろうから許せるんだけど、抱きしめたらペコン!となってやんの!あれじゃダメ!全然たたねえ!』って言ったって!!」
私、真っ赤になって絶句した。
「長野があんなヤツだとは思わなかった!! 柏木も私に話すかどうか迷った挙句、夜中に私に連絡寄越したの! ゴメンね愛乃! 長野と付き合うの私も後押ししちゃったから……」
「アハハハ!」
私はいきなり笑い出していた。
「やっぱりねー!! なんだか話が出来過ぎだと思ったのよ! そう!私だって下心あったんだ!! やっぱさ!“2次元”の“推し”とはどうにもなりようがないけど、“2.5次元”の男子とならできるもんね! でもシクったなあ~ “チッパイ”で失敗!! あ、でも、キスが出来ただけマシかあ?! なんにせよ笑いが止まんねぇ」
私は壊れてケタケタ笑い続けた。
こんな体たらくで……私ってこれからどうなるんだろう??
たまりかねて私の事を抱きしめてくれた夏希の……柔らかなふくらみが更に私を鬱にする。
この触感にきっとオトコは安らぎを覚えるのだろう……
オトコにそれを与える事が叶わぬ私に果たして“その先”……“赤ちゃんにあげる”なんて事が訪れるのだろうか??
ちっぽけな私の胸っていったい誰の為のもの??
こんな自虐の問い掛けに……私は涙と笑いが止められないでいた。
おしまい
書いていて落ちました……(-_-;)
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