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91話 エイリアンの暇潰し

 

「海色ディーヴァの面々に会ってしまった…と」


 ライブの翌日。

 僕はバンド3娘と対面してしまったことをユユに話した。不本意だったとはいえ、会ってしまったのは事実。申し訳ないとは思いつつ、敢えてふてぶてしい態度で僕は昨日のことを話していた。


「ちなみに“サナダ”とは気づかれてないよ。多分」

「それはどうかな。話を聞いた感じじゃレンちゃんは気づいてそうだけど」

「…言っとくけど僕は悪くないよ。声だけで気づく方がおかしいって話で…」

「別にいいよ。目立つなとは言ったけど、会うなとは言ってないし。あの3人なら、言いふらそうなんて考えないだろうし」

「…あ、そう」


 僕が思っていたよりも、ユユの反応は薄かった。言われてよくよく思い出してみると、目立つなとは言われたが、知り合いに会うなと忠告されてはいない気がする。

 死んだ人間が生き返ったら騒ぎになるのは分かるが、それは生前の私を知ってる者じゃないと分からないはず。だとすれば、むしろ知り合いに会わないよう忠告するはずだ。

 では、何故に…?


「納得いってない顔してる」

「何故僕が目立たないことを優先してるのか…それが分からない」

「聞きたい?」

「聞いていいのか?」

「うーん…多分大丈夫、かな」

「なんだよその反応」

「ミルモちゃんからの“頼み事”の話する時に話そうかなって思ってたけど、シンイチさん自身の話だし、もうしてもいいかもって」

「僕自身の話…?」

「今のシンイチさんは、ミルモちゃんが取り込んだ“サナダさん”の体を基にして作った“因子”で作ってあるの」

「因子…なんか死ぬ前に聞いた気がするな…」

「AC因子とは別の因子だけど、今のシンイチさんを構成してるのはほとんどそれ。つまり今のシンイチさんは人間というよりも“天使”に近いの。私たち亜人よりもね」

「…僕が?」

「そう、シンイチさんが」


 今自分は“サナダ”とは別人だと自分で言ってはいたが、まさか本当に別物になってしまっているとは思わなかった。

 だが、それを知った上でも今の自分の体に変化は感じられない。亜人のような超人的な力を僕も持っているというのか…?


「…ちょっと外で走り回って来てもいい?」

「あ、いや期待してるところ悪いけど、別にシンイチさんが強くなったわけじゃないよ」

「なんだよ…」

「だって元はサナダさんの因子だよ?ほぼ普通の人間じゃん」

「じゃあ天使なんて大袈裟な言い方するなよ」

「でも、ミルモちゃんが持ってる因子から作られたことには変わりないから。天使ってよりは…天使とは別の未確認生命体、って感じ?」

「嫌な言い方だ…」

「今ちょっと皆敏感な時期だから…シンイチさんみたいな、イレギュラーな存在を公表するわけにはいかないの」

「…君らの事情よくわからないけど、要するに僕は得体が知れないから目立つなって言いたいわけだ」

「ん〜…ごめんね。こっちの事情はまた詳しく説明するから」

「いいよ、別にそこまで知りたいわけじゃないから」


 話を終え、僕は席を立つ。置いてあった端末を手に取り、ユユの部屋を後にしようとした。


「あっ、ちょっと待って。シンイチさん、私のお願い聞いてくれない?」

「…どうせ暇だからいいけど」

「学校に忘れ物したから取ってきて欲しいんだよねー。ほら、寮からすぐ近くでしょ?」

「断る。そうやって僕をはめようとしてるんだろ」

「違うってば。ほら、入構許可証」


 そう言ってネックストラップのホルダーに入った許可証らしき物を僕に渡してくる。


「こんなこともあろうかと貰っといたんだよね」

「こんなもの用意する暇があったら自分で取りに行けよ」

「今から用事あるから無理でーす。そんじゃよろしくね。はい出てって出てって」


 そう言うと、ユユは僕の背を押して部屋から追い出した。毎度毎度、用事があるとは言っているが、一体ユユは何をしているというのか。

 僕は渋々、学校へと向かった。


 〜〜〜〜〜〜


 今は夏休みシーズン。

 西区亜人学校からは、蝉時雨に紛れて、部活に勤しむ元気な生徒たちの声が聞こえてきていた。


 ファイッ オー ファイッ オー


 学生時代を思い出す。

 帰宅部だった僕は、この声を聞きながら校門をくぐっていた。お前らがクソ頑張ってる間、僕は家でゴロゴロするんだぞ、とほくそ笑みながら帰宅していた気がする。なんて青春からかけ離れた行為だ。もっと色々しておけばよかっただろうか。


「──────あー!シンイチ兄やん!」

「君は…タマの友達の」

「アカリだよ!ちゃんと覚えとけ!」


 陸上競技用のユニフォームを着たアカリがこちらへと走ってきた。陽の光を浴びて、腹ににじんだ汗がチラチラと光っている。


「陸上部?こんなクソ暑い朝によくやるよ、ホント」

「もう少しで大会だからな!休むわけにはいかない!」

「君ら亜人の基準だと、どのくらいで速いって言えるの」

「私は50mを2.3秒がベストタイムだ」

「…分からん。それは早い方なの?」

「早いだろ!舐めんなよ!」

「舐めてないけど…」

「ところで、兄やんはなんで学校にいるんだ?」

「あーユユが生徒会室に忘れ物をしたらしくてね。取りに来た。入構許可証あるから、通報はするなよ」

「生徒会室どこか知ってるか?」

「いや知らない出来れば案内して欲しいんだけど…」


「おーい!アカリ!練習サボってんなよー!」


「あっ!はーい!そんじゃな兄やん!」

「おい場所くらいは教えてけよって…もう聞いちゃいねぇ…」


 アカリは呼ばれた方向へとさっさと走って行ってしまった。

 さすがは亜人、どの生徒も、遠目に見ても分かるくらいに速い。早送りの映像を見ているみたいだった。


「……はぁ、探すか…」


 首から下げた入構許可証を振り回しながら、校舎へと入っていった。


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