62話 短縮
後日。
受け取った本を読み漁る。
ツムギの書いたエッセイはなかなかに読みごたえがあった。
己の生い立ち、亜人に至るまでの過程は省略されていたが、私が来る前のこの“組織”の状況が、ツムギ視点で詳細に書かれていた。
私でこの組織の亜人管理官は7人目。
以前の亜人管理官は、リニスに電子オルゴールを渡したという元リーダーの亜人を殺した者だった。今となって思い返せば、私が来た時にD部隊の皆が警戒するのもしょうがなかったことだろう。
組織が“保護”してきた亜人は合計で10人。
D部隊に今4人しかいないのは、残った者以外の皆が戦死したか、この組織から逃げ出したからだ。登録番号はD-01からD-10まで。
リニスの前にリーダーを務めていた亜人はD-05。名を“多田羅タスク”というらしい。そして、D部隊に関して分かったことはそれだけではなく…。
「…07」
岩戸ユルム。彼女の登録番号はD-07。
リニスの次にここへ来た亜人らしい。
組織の拠点周辺を彷徨い歩いていた所を保護。
能力は“物質の生成”で、あらゆる物質を生成し、頭髪から液体状にして打ち込むことができるらしい。
これを利用して鎮静剤や止血剤を作り出せば、なるほど兵士の治療にも役立てるわけだ。毒ガスなどを生成すれば戦いにも利用できそうだが、この組織の人間はどこまで能力を把握しているのだろう。
「──────何を読んでるのです?」
と、色々と考えにふけっている所にミルモが現れま。私はすぐさま読んでいた本を懐に入れる。
「…隠しましたね。何故なのです?」
「俺以外が読んだら死ぬ本だからだ」
「私はそんなもので死なないのです」
「いや、死ぬのは俺だ」
「ん…?そういう冗談なのです?前も豆腐の角に頭をぶつけてなんとか…言ってましたけど」
「今回ばかりは本気だ。これ以上は詮索しないでくれ…」
「アナタ達の冗談は未だに理解できないものが多いのです…」
「それで、わざわざ私の部屋まで来てなんの用だ」
「暇になったのです。しばらく戦闘もなさそうですし、私は退屈なのです」
「知るか。本部まで走って、皆に私の無事でも報告してこい」
「それはさっきやって来たのです」
私の冴えたアイデアにミルモはため息混じりに返した。
ここから“明けの明星”本部までどのくらい距離があるのか知らないが、ミルモはものの2時間で拠点間を往復できるらしい。名を騙っている組織なのだ。そう近くにはないはずだが…。
「トランプはどうした。昨日楽しそうにやってたじゃないか」
「ハルラに勝てないのでもうやらないのです」
「勝てるまでやればいいんじゃないかな…」
「今、面倒だなと思ってますね?」
「そうとも言える」
「殴っても…?」
「っ……分かった分かった!いい感じの暇つぶしを考えてやるから!とりあえず兵舎の方に行く──────」
仕方なく立ち上がったその時であった。
「──────ぞ?」
世界が一回転を始める。
立ち上がったはずなのに、地面は顔に近づく──────
「サナダ?」
その声を最後に、私の視界は暗転した。
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