30話 ファンクラブのススメ
フレンとフランを引き連れ、最も騒がしい場所へと向かった。
部屋への扉を開けた途端、重低音が部屋より鳴り響いた。
「サナダ〜♪サナダ〜♪その名はサナダ〜♪」
「「変態!ロリコン!」」
「サナダ〜♪サナ──────」
「お前ら、中々愉快な歌を作ってるじゃないか…作詞は誰だ?」
「……サナダさん!こんにちわ!」
「サナダこん〜」
「…おっすサナダ氏…」
「答える気は無さそうだな」
気まずそうに目を逸らすバンド娘3人組。
先程の楽しそうに歌っていた様子が嘘みたいに今は押し黙っている。
何故かこっちが悪いことをした気分だ。
「お前ら…これこの前歌ってたヤツだろ。丁寧にブラッシュアップするような曲か」
「ミルモちゃんが気に入っちゃって…フルで聞きたいって要望を貰ったんです…はい、すいません」
「サナダ〜、間が悪いよ〜。サナダを罵るのはあのパートだけなんだって〜」
「私を罵る合いの手を入れるな」
「…それも…ミルモちゃんの要望…」
「ミルモ…!!」
「…“天使”への復讐に狂う男が、ここに1人…」
「はぁ…まあいい。今日はそんなことを聞くために来たのではない。とりあえず…」
キョトンとした顔で立っている双子の背を押し、ファンクラブへの勧誘を促す。私が言うよりも、2人が勧めた方が確実だろう。
フランとフレンはパタパタと走っていき、ルピンがでかでかと描かれているチラシを渡した。
「ファンクラブですか」
「…ルピンって…あの…?」
「ついこの前帰ってきた人だよね〜」
「今それを勧誘して回っているところだ。ノルマは3人。あと必要なのは2人分なんだが、どうだ?」
「ふふ…サナダさん」
「ん?」
「ん〜〜〜丁重にお断りさせていただきます!!」
「ためて言うことか…?しかして、その理由は」
「私たちはファンクラブを作る側だからです!なんならもう既にあります!一流のアーティストというのは、誰かに媚びを売っちゃダメなんですよ」
ちっちっちっ、とレンは人差し指を左右に振る。珍しく他2人も揃って頷いている。コイツら、いっちょ前にバンドとしての矜恃を持っているようだ。
「ノルマと言いましたね?小さい子使って楽に仕事終わらせようったってそうはいきませんよ!」
「どういう立場からの発言だ…でも、まあそんな気はしていたよ。お前らは受け取らないだろうとな」
「おおサナダ、ウチらのこと分かってきたな〜」
「だから、ここに来たのはファンクラブを開設するにあたってのアドバイスが目的だ。お前ら、ファンクラブは既にあるとか言ってたが、具体的に何をしてるんだ?」
「……何してる?」
「何もしてなくね〜?」
「…今してるじゃん…要望の曲作ってる…」
「ミルモちゃんってファンクラブ入ってるん?」
「多分入ってな〜い」
「…サナダ氏…私達何もしてない…」
「何もしなくていいみたいだぞ」
「……。」「…!」
何やら不満そうに手を振っている。流石に何か1つくらいアイディアが欲しいみたいだ。
「せめてアドバイスをくれ」
「…サナダ氏が前言ってたヤツがあるじゃん…
Tシャツとか、ワッペンとか自作して配れば…?」
「チェキとか写真とかでいんじゃね〜?」
「普通に歌ってるの録音してCDに焼けばいいんじゃないですか?」
「思ったよりちゃんとした意見が出るじゃないか…どうだ、参考になったか」
「「…!」」
2人は満足げに頷いている。
ルピンのそれらグッズに需要があるか知らないが、フランとフレンが納得しているようなので良しとしよう。
「貴重なアドバイス助かる。参考にさせてもらうぞ」
「はい!できたら聞かせてくださいね!サナダさんの歌!」
「サナダのブロマイド〜」
「サナダ氏作ワッペン…」
「そんなものは欠片も生み出されない」
好き勝手言っているスリーピース共を無視して、フレンとフランと共に部屋を後にした。2人は聞きたかったことが聞けたようで、かなり満足げだが、会員を増やすノルマには1つとして近づいてけていない。
「さて、入会してくれるあては他にいるか?」
私の問いに対して2人は翼を羽ばたかせるジェスチャーをした。
「…クリフか?クリフだな?」
「…!」
「西部隊と北部隊は隊長以外が仲いいのか…?だが、アイツは快く引き受けてはくれないだろう。こういうのには興味無さそうだぞ」
とは言ってみるが、フランとフレンは構わず私の手をぐいぐいと引っ張っていく。年端もいかぬ少女と言えどやはり亜人。全く抵抗できる気がしない。
半ば引きずるような感じで連れていかれる。
「──────不審者発見」
と、2人に連れていかれる私に誰かがシャッターを切った。
ジトリとしたオレンジ色の瞳が私を刺している。
「…次にお前は“相変わらず女の子侍らせている”という類の言葉を私に吐く」
「残念。“幼い女の子を連れ回す異常性愛者”と罵るつもりでした」
「つもりじゃなくて言ってるが」
「あら失礼」
明石サラは、携帯端末のレンズを私に向けてイタズラに微笑んでいた。




