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115話 いい大人は年齢で語らない

 

 入館証を首にかけ、脱靴場から校舎内へと入った。

 警備の方からもらった入館証なのだ。流石にこれで捕まるなんてことは無いだろうが…前回のこともあってか、少し怖い。

 ビビりながらも“セントラル”校内へと踏み込んでいく。


 シティの中では最も大きい学校ということもあり、どこまでも続くような廊下だった。今は授業中ということもあり、廊下には人っ子一人いない。


「さて、ここからどうするかだが…」


 フ ァ ?


 着信。見ると、またキバからメッセージがあった。どうやら2階の多目的室?に行けとのこと。あっちは何をしているのか…だが、今の僕にはそこに行く他ない。


「──────夏休み明けだが、皆気を引き締めるように」


 静かな校舎を教員の声が響いている。

 僕は堂々とした立ち振る舞いで教室の前を通っていく。

 座って並んでいる男女の生徒、教卓の前に立っている教師…その光景を見ると、誰しもノスタルジーに浸ってしまうだろう。僕とてそうだ。


 そんな教室をいくつも通り過ぎ、階段を上がってすぐの所に、ちょうど目的の部屋はあった。

 ご丁寧に“多目的室”と表札がぶら下げてあったので、迷いなく扉を開けた。


「──────おっ、と…し、失礼します」


 開けると、女生徒が1人座っていたので、思わず声を上げてしまった。

 女生徒の方も少し驚いたようで、肩を一瞬跳ね上げてからこちらに振り向く。


「は、はいお待ちしており…シンイチさん?!」

「なんだユユか…知ってるヤツでよかった」


 ユユだと分かり、途端に気が抜けた。

 置いてあった椅子に即座に座った、


「ユユもキバさんに呼ばれた?」

「いや、私は今日からここに来るスクールカウンセラーの方と、新任の体育教師の方を案内しろって…」

「へぇ…ユユ今日からこの学校でしょ?いきなり大変だね」

「い、いやそこじゃないでしょ…?もしかしてスクールカウンセラーの人って…」

「……え?」


 ユユの視線が僕を捉えている。

 まるで、そのスクールカウンセラーが僕だと言いたいみたいじゃないか。そんなわけが無い。僕はただキバにここに来るよう言われただけだ。


「…待ちなよ。多分、勘違いだよ。僕ただ──────」


 バタッ

 直後、部屋のドアが勢いよく開けられた。


「──────待たせたな。少し警備連中を撒くのに手間取った」

「キバさん…撒くのはマズいんじゃ…?」

「問題ない。後でどうにでもなる」

「…あれ、ユユ?」


 ジャージ姿で現れたキバを目撃した途端、ユユが頭を抱え始めた。どうしたのだろう、と僕も数秒してから、色々と察し出した。恐らく僕がここに呼ばれたのは…。


「あの、キバさん?キバさんのその格好って、あれですか?体育教師的な…」

「もう五十棲ユユから聞いたか。そうだ、私は今日からここで体育教師をする。そして小僧、お前は今日からスクールカウンセラーだ」

「スクールカウンセラーだ、じゃなくてっ…なんで最初に言ってくれないんですか?!」

「言ったら来ないと思ってな」


 ふっ、とキバは笑みを浮かべた。確かに事前に告げられていたら、正直言って来なかっただろう。


「そして、五十棲ユユ。お前は校内での我々のサポートを頼む」

「…私、ただでさえ風紀委員とかで忙しいんですけど」

「ふっ、“西天”の秘書兼幹部なのだ。その程度ワケないだろう?」

「それを現在進行形でこなしてるの知ってて言ってます?言ってますよね?!」

「まあ、何はともあれ“天使”の手がかりを掴むためだ。色々と頼むぞ」


 キバは悪びれもせず、腕を組みながら言った。

 その“色々”にはどんなことが含まれているのだろうか。ユユの表情を見るに、それが気軽に頼める仕事量ではないことが窺える。


「…ユユ、僕のことはいいから。とりあえず、キバさんのことだけ気にしてて」

「……ああ、やっぱシンイチさんが気を遣う程度には、この人おかしいですよね…よかった、私がおかしいのかと思った…」

「力を合わせていくぞ。“西天”、ファイっ」


 オー、とは僕もユユも続かない。

 よかった。この場にスクネがいなくて。

 アイツがいたらこのキバのノリに乗っかりかねない。


「…ノリが悪いな。体育教師らしくしたつもりなんだが」

「しまいにゃ殴られるか刺されるかしますよ」

「…?誰にだ」


 キバは首を傾げていた。

 全く分かっていない様子はまるで、睨んできているユユのことが見えていないかのようだった。


「ともかくだ。五十棲ユユは小僧を案内してやれ。私は校内の構造はあらかじめ暗記でしてきている」

「キバさんを放置ってのは少し心配ですけど…とりあえず分かりました」

「何も心配いらない。私はこの中で一番年上──────」


 ガチャン

 ユユに連れられ、部屋から出た。

 それと同時にユユは深いため息をついた。

 心中、お察しする。手伝う気はないが。


「ねぇ、シンイチさん」

「なに」

「キバさん、どうにかして捕まってくんないかな。一応、シティには警察とかいるんだよね」

「どこかに閉じ込めても、どうにかして脱出してきそうだけど」

「……てかウチらが警察的なやつだった…」


 もう一度、ユユは深くため息をついた。

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