表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/201

113話 蚊帳の外

 

「おーほっほっほっ!!これにて一件落着ですわー!」


 ルピンは“親衛隊長”を含めた、辺り一帯の無事を確認すると、高らかに笑って見せた。ガランとした集会会場の中心から、ルピンの笑い声がよく響いた。


「これでロコ達にはバレずに済みましたわ…危ない危ない…ふふふ…」


 調子に乗っているかと思えば、額にはこれでもかというくらい汗が滲んでいた。内心、かなり焦っていたのだろう。浮かべている笑みは、どこか引きつっている。


 後ろでは元に戻った“親衛隊長”をフレンとフランの2人が介護していた。


 何はともあれ、僕がこれ以上ここにいる意味はないだろう。

 さっさと帰ってしまおう…と思っているところ、ルピンに呼び止められる。


「そこのアナタ。名前は知りませんけど、今の一件、アナタが解決してくれたのでしょう?」

「いや…?解決したのはさっきの鉄仮面の人ですよ」

「いやいや、私様は見逃しませんでしたわよ。アナタがケータイで誰かを呼ぶところを。それでタイミングよく、アナタを守るために現れたあの鉄仮面を」

「…気のせい、です」

「ふっ、私様には全部お見通し…私様、頑張った人にはちゃんと褒美を与える主義ですの」


 そう言いながら、ルピンは油性マジックを取り出し、僕の仮面に何かを鼻歌まじりに書いていった。


「…何を書いたんですか」

「私様のサインですわ。私様の国民だったら、喉から手が出るほどに欲しいはず!」

「あぁ…その、いただいてからで悪いんですけど、この仮面正規に手に入れた物じゃなくて…ていうか、そもそも僕“DMK”の人間ではなくて」

「あら、不法入国者ってワケ?どれどれ…はぁはぁ、なるほど…安心なさい。私様は懐が深いことで有名です。その仮面はアナタに差し上げますわ」

「あ…はい」


 今気づいたが、今の僕はサングラスを着けていない。今仮面を取られれば、素顔をルピンに晒してしまうことになっていた。危ない…。


「その仮面…大事になさいね。私様のサイン以前にレア中のレアなんですから。シリアルナンバー3…そこのフランとフレンの次に古参ですわよ」

「へぇ、前の持ち主はどこに行ったんです?」

「…たしか、豆腐の角に頭をぶつけて亡くなられました」

「そんな馬鹿な」

「そうですわね…馬鹿な死に方をした方でした」


 ルピンは物憂げに天井を眺めた。ナンバー3、となると“明けの明星”の一員だった者だろうか。使う者がいないのなら、持っていっても構わないだろう。


「ま、今日の集会は中止ですわね。また近いうちに開くので、アナタも来たかったら来なさいな」

「はぁ、じゃあ気が向いたら」

「安心なさい。不法入国者と言えど、それなりにもてなすつもりですので…ではごきげんよう。もう夜も更ける頃ですので、気をつけて帰りなさいね」


 ルピンは踵を返し、フランフレンの方へと戻っていった。もちろん行く気はない。また“親衛隊長”に腕を折られたくはない。


 と、少し周りを見回し、隅に縮こまっている小さな影に目を向けた。

 火川ニオが、唖然とした顔で固まっている。


「ニオちゃん…?大丈夫?」

「……。」


 返事はなかった。

 無理もない、今日の彼女の一日はショッキングなことが多すぎた。バケモノが現れるわ、目の前で見知った人物の肉と血が飛び散るわ、ろくな目にあっていないのだから。


「……バ」

「バ?」

「バッズちゃんと喋っちゃいました…」

「え…?」

「あのバッズちゃんですよ…?滅多にあることじゃありません…これ、本当に現実ですか…?」

「…想定してたセリフだけど、なんか思ってたのと情緒が違うなぁ」

「凄いですよねぇ…あ、ていうかシンイチさんですか?」

「そうだけど…ニオちゃんて“海ディ”のファンじゃないの?」

「そりゃ“海ディ”は誰でも好きですよ…バッズちゃんはもっとこう…マイナーというか…カルト的人気って言うんです?」

「いや知らないけど…ともかく、元気そうでよかったよ。1人で帰れそう?」

「ご心配なさらず。どうにかバッズちゃんと握手してから帰りますので、シンイチさんはお先にどうぞ」


 すっくと立ち上がると、ニオはのしのし足音を立てて、ルピンの方へと向かって行った。本当に、なんの心配もなさそうだ。

 いい加減、息苦しい仮面も脱ぎたいし、帰るとしよう。


 会場から出て数歩、仮面を外す。


 外はとっぷり暮れており、夜の海には街の灯りがチラチラと反射している。夜の海を見るのは何気に10数年ぶりだったりする。趣深い、なんて思っているのも束の間──────


「そっちは無事に終わったようだな」


 会場を出てすぐ、壁にもたれたキバが立っていた。


「うお、びっくりした…キバさんの方は大丈夫でした?」

「上々だな」


 とか言いながら、その手に持っているのは切断されて、電子部品のはみ出した機械の義手であった。


「どこか上々なんですか…」

「いや、おそらくお前が思っている以上の収穫だ。あの逃げたヤツ、見た時に何か感じなかったか?」

「え…なんか、違和感というか…不思議と、目が離せなかったですかね」

「それが“天使”に対して感じるお前の“直感”だ。その感覚をよおく覚えておけ」

「“天使”って…さっきまでここにいたヤツがですか?!」


 突然の報告に思わず声を荒らげる。

 まさか目標がそんな近くにまで来ていたとは。


「そうだ。小僧が来た途端に事態が進む…お前は確かに我々の秘密兵器なのやもしれん…」

「いやいや、たまたまでしょ」

「ヤツ、“癒す者”は学校の制服を着ていた。あの制服は間違いなく“セントラル”の物だ」

「“セントラル”って、確かシティの中心にある一番デカい学校でしたっけ」

「ともなれば、次に我々がするべきことは…分かるな?小僧」

「えっ……まさか…」


 キバはボロボロの服のまま、ニタリと笑った。


「明日、行くぞ“セントラル”」

「いや…無理でしょ」


 そんな僕の断りなど聞いてないかのように、キバは端末で誰かに連絡を取り始めた。もう既に、嫌な予感しかしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ