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103話 荷解き

 

「──────タマちゃん、どうだった?!」


 タマの部屋から出るなり、外で待っていたユユが駆け寄ってきた。その表情から、相当心配しているのが窺える。


「もう大丈夫。多分ちょっとしたら部屋から出てくるよ」

「よかったぁ…なんだったの?やっぱり体の調子が悪かった?」

「そんなとこかな。でも、もう完治したから、安心して部屋に戻っときなよ」

「そっか…あれ?シンイチさんの指、治ったんだね」

「あぁ、くっつけるだけだから、クルネのとこ行ったらすぐだったよ」

「指拾ってくれた人に感謝しなきゃだね」


 まったく…とユユは肩をすくめた。

 指のことは“料理していたら包丁で切って、窓から指が吹っ飛んだ”とユユには伝えている。明らかに無茶のある経緯だが、ユユは馬鹿なので納得してくれていた。


「あっ、今更だけど、もう外に出歩いても大丈夫だからね。こっちで話はつけといたから」

「お、おお…そっか。でも今日は家でじっとするよ。外に出てもやることないし」

「不健康〜」


 ユユの中では、昨日の僕は言いつけを守って外に出ていないことになっている。このままバレないことを祈ろう。


「それじゃ…僕引きこもるよ…」


 毎度、外に出てもロクなことが起きないので一先ずは部屋でじっとしてみることにした。これでもロクな目に遭わないというなら、明日は多分外に出るだろう。


「──────ストップ」


 と、肩を突然掴まれた。ユユは僕の方を見ておらず、険しい表情で端末を見つめている。


「…なに」

「昨日さ、外出した?」

「……そ、それってさ、何分以上外にいたら、外出ってことになる?」

「5分以上」

「あー……ギリギリ、外出してるかな〜」

「絶対!ガッツリ外に行ってるじゃん!!バガッ!!」


 容赦のない鉄槌が僕の脳天に下された。

 手加減してるとはいえ、亜人の一撃。そのあとはしばらく耳鳴りが続いた。ユユは不機嫌そうに端末をいじり、僕へあるメッセージを見せてくる。


 送り主はキバ

 あの日付けていた機械の義手が撮影されている。


 “小僧にいっぱい喰わされた。直すよう手配しろ”


 と、ふてぶてしい文章が綴られていた。


「はぁ…なんでそんな毎日毎日何かに巻き込まれなきゃいけないの…?」

「知らないね。僕だって巻き込まれたくて巻き込まれてるわけじゃないんだよ」

「でも昨日は外出ないでって言ったじゃん!なんで普通に出てんのさ!」

「だって暇だったし〜♪」


 口笛を吹きながらそっぽ向いてみる。

 やるなと言われたらやりたくなるアレだ。

 そういう性なのだから。仕方がない。僕の外へ出るな言ったのが間違いなのだ。


「はぁ…でも、そろそろ頃合いかな…シンイチさん、もう十分楽しんだでしょ」

「…?なんの話」

「ずっと言ってきてる“頼み事”もう説明する時が来たかなって」

「…!」


 ずっと仄めかされていた、僕が生き返された理由。死んだ僕がこうして生かされた意味。それはミルモから僕への“頼み事”が全てだという。


「ね、覚悟はできてるんでしょ」

「そんなに?覚悟しなきゃいけないほど?」

「なんでちょっと日和ってんの。何でもやってくれるんでしょ?」

「そんなこと言ってないよ」

「言ってないけど、言ったようなものでしょ」


 ユユは端末を弄り、誰かと連絡を取っている。

 キバ曰く、僕はミルモの切り札なんだとか。

 何に対しての切り札なのか。もしや、何かと戦わされる羽目になるのだろうか。情けないことに、いざとなったら募るのは不安ばかりであった。


「──────よし。それじゃあ行こっか」


 準備を終えると、ユユは端末をしまい、薄く笑みを浮かべた。いつもとは違う、ユユから少しピリついた空気を感じた。


 〜〜〜〜〜〜


 街のメインストリートを真っ直ぐ進み、街の中心部に向かって歩いていく。その先にあるものは、この街を初めて見た時も目についたあの“透明なタワー”。

 聞くところによると、あれは明星タワーと呼ばれる街のシンボルらしい。

 中は関係者以外立ち入り禁止らしいが。


 ひたすらに歩き、タワーのセキュリティゲートにまでたどり着いた。


「なに突っ立ってんの」

「入れるの…?」

「私たちは“関係者”だよ」


 ユユが端末をかざすと、ゲートは電子音を立てて開く。僕はその開いた一瞬の隙を突き、入ろうとした。


 ガ ゴ ッ !!


『端末をタッチしてください』


 ゲートが進もうとした僕を阻んだ。


「…何してんの」

「えっ、だって僕の端末じゃ入れないんじゃない?」

「はぁ…やってみなよ」


 言われるがまま自分の端末を当てた。

 すると、ゲートは緑色の光を放ちながら僕を迎え入れた。


「おぉ…!」

「しっかりしてよ…シンイチさんはもうウチの一員なんだから」

「ウチってのは…?」

「それは…着いてから説明するよ。とりあえず中に入ろ──────」

「うおっ!!ま、マジでいる!!」


 と、通ってきたゲートから驚く声が聞こえてきた。

 振り向くといたのは、亜人だ。間違いなく会ったことがある。

 が、何故か名前がすぐに出てこない。

 “サナダ”だった頃に“明けの明星”の亜人の名前は全員覚えていたはずだが…。


「スクネちゃん、珍しく遅刻?」

「うす、キバさんからおつかい頼まれちゃいまして…で、そこの男が例の…?」

「スクネ…?スクネっていうと……あ」


 そこでようやく思い出す。

 管木スクネ

 こいつはかつて、キバと共に“明けの明星”を襲った亜人だ。あの時とは違い、小綺麗な服を身にまとっている。ボサボサだった髪も、随分綺麗に結い上げられている。


「お久しぶりっスサナダさん。相変わらず、平和ボケした面してるっスね」


 ニヤ、と歯を見せて不敵に笑んだ。


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