表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

扉の先には

作者: 音月風香

 私には、どうしても思い出せない記憶がある。何故、思い出せないのかは分からない。随分と昔の話である事だけは確かだ。私がこの先の為に成長するには、亡くした記憶を思い出すしかない。他の(すべ)はないのだから。





 掌に目を落とす。この手で夢を掴めるだろうか。・・・・・・いいや、きっとできるはずだ。今日こそは、と決意を新たに手を扉にかける。是迄(これまで)ならば、無かった手応えを感じる。

 躊躇などする事もなく、全体重を掛け、扉を開く。ギッと軋んだ音を立てながら、淡い光が線になって漏れる。隙間から這い出た、仄暗く湿った風が頬を撫ぜた。新たな空気が訪れ、視界が眩む。



 扉の先には信じ難い光景が広がっていた。私は今まで自分がいた場所を外側だと思っていたが、どうやら違っていたらしい。何故なら、扉の向こうでは霧雨が降っていた。

 糸雨(しう)が体を濡らすが、そんな事はもうどうでもいい。天を仰ぐと、どこまでも広がる大空。遮る物は見当たらず、見渡す限りの雨とその先に続く地平線。私の内側はこんなにも豊かだったのか。


 私はずっと閉じ込めた記憶を求めていたつもりだった。だが、それは間違いだった。私はずっと閉じ込められていたのだ。

 今迄居た場所とは比べ物に成らない程明るい外へと出た事で、先程は気付かなかった物を見つけた。扉の横に赤褐色に錆びた鍵が落ちていた。それも幾つも。ああ、私はこんなにも愚かだったのか。

 光が無ければ真実など目にできない。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

よければ、感想や評価をよろしくお願いします。m(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ