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10 本の好みは千差万別2

フィランダー視点→シェリル視点→トミー視点


視点がコロコロ変わってすみません。







 話はトミーが執務室に戻った時までさかのぼる。


「ただいま戻りました」

「助かった。ありがとうトミー」


 受け取った本を見ると、一冊だけ頼んでない本があった。


「これは?」

「それも積み重なっていたので」


 そんなものあったかなと思いつつ本を開くと、……中身は物語の様だ。


「これは……小説?」

「あ。もしかしたらそれ、ネルが持ってた本かも知れません」

「ネルが?」

「先ほどぶつかってしまいまして」

「ならこれは、シェリルが頼んだ本!?」

「若! 時間がないです」

「そうだった」


 慌ててトミーと今ある本を開いたが肝心な情報が載っていないものだった。

 もう取りに戻る時間もないと頭を抱えているとドアを叩く音が聞こえた。


「失礼します。本を届けに参りました」

「ルース。助かった」

「それで入れ替わった本は……」

「すまない。もう会議に向かわなければならないんだ。後で返す」

「かしこまりました。いってらっしゃいませ」


 何とか会議が始まる前に情報が確認でき、無事会議は終わった。






 会議が終わり帰るとやはりあの本の事が気になった。


「ちょっとだけこれを読みたいから、今日の会議結果をまとめといてくれ」

「かしこまりました」


 小説を開くと、どうやら恋愛小説の様だ。

 目を素早く走らせ、ゆっくりと本を閉じた。


「若。読めましたか? もうそろそろ書類の山に移ってください」


 トミーの言葉で目が覚め慌てて仕事を再開した。











 夕食の時間になると、フィランダーが本を持って食堂に現れた。


「シェリル。これ、入れ替わっていた本」

「あ。ありがとう」


 受け取ると確かに入れ替わっていた本によく似ていた。


「助かったよ。戻る時間も惜しかったから」

「間に合ってよかった。ネル、これ私の部屋に置いてきてくれる?」

「……はい。お預かりします」


 ネルはどこか緊張気味の様子で食堂を出て行った。

 少し気になったけど、食事が運ばれてきたのでついそっちに目が行ってしまった。

 おいしい食事を食べて気分が高揚したのか、つい添い寝なら一緒に寝てもいいとフィランダーに言ってしまった。

 すると彼はすごい勢いでうなずき、だらしない顔を見せたのだった。






 ……今、私は添い寝しても良いと言った事を後悔していた。

 少し前、フィランダーは夫婦部屋に来るとベッドに座っていた私の隣に座る。

 そして私の髪を手にとりキスをしてきた。


「は?」

「良い香りだね」

「……そう?」

「まるで君に吸い込まれてしまうくらい魅力的な香りだ。それに……肌も子猫の様に可愛いね。今すぐ君を食べたいよ」

「……今までそう愛人に言ってたのかしら。それに今日はしない約束よね?」


 私が据わった目を向けると、フィランダーは官能的な雰囲気を吹っ飛ばし、慌てた様子で謝ってきた。


「ごめんなさい! 実はシェリルがこういうのが好きなんだと思って」

「いつ私がそう言ったの?」

「……てっきりそういう本を読むなら好きだと思って」

「そういう本?」

「だって。ネルに頼んだんでしょ? 官能小説」

「は!?」


 私は思わず目を見開いた。


「私が希望したのは『大陸の武器一覧』だけだから。あとはネルのおすすめを……」


 そういえばネルは言っていた。


『あ! 次はとっておきですよ』


 とっておきって……官能小説の事!?

 だからさっき本を渡した時緊張してたの?


「とにかく。私は頼んでないし好きでもないから。おやすみ!」


 フィランダーに背を向けて私はさっさと寝る事にした。






 次の日。


「ネル。次はこれなんかどうかしら?」

「これもいいと思いますよ」


 私とルースは嬉々としてネルに好きな本をおすすめしていた。

 ルースが手に持っているのは荒々しい男どもが海に出る『冒険小説』

 私が持っているのは『剣の歴史』


「ごめんなさい。そういう知識も必要だと思って」

「だったら事前に言ってね」


 ネルは良かれと思って初心者向けの官能小説をおすすめした様だった。


「私もネルのおすすめは読むから、ネルにはルースのおすすめを読んでもらおうかな」

「え」

「だったら『拷問器具の物語』なんてどうです?」

「それは私もダメだわ」

「……ルースはそっち方面もいけるの?」


 セリーナの問いにルースはにっこりと笑うだけだった。











 添い寝してご機嫌かと思いきや、若は朝から青い顔をしていた。


「……失敗しましたか」

「うん。あの官能小説はシェリルが望んだものじゃなくて、ネルのおすすめだったみたい」

「なるほど」


 今頃ネルも怒られてるだろうなと想像した。


「どうしたら許してくれると思う?」

「さぁ。……シェリル様が望んでいる本はないのですか?」

「それだ!」


 後日、図書室に武器関連の本と冒険小説が大量入荷された。

 図書室には嬉しそうな顔してそれらの本を持っていくルースが度々現れたという。






ちなみに作中に出てくる本の題名は適当につけました。

センスがなくてごめんなさい。

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