07 それぞれの夢の中1
今回はフィランダーとシェリルが夢の中で同級生という設定の話になります。
簡易登場人物紹介
・シェリル・ヘインズ……『前溺』の主人公。元アストリー伯爵令嬢
・フィランダー・ヘインズ……シェリルの夫。25歳
・ステイシー・ロドニー……シェリルの親友。ロドニー伯爵令嬢。テナーキオ人だが魔力が低い
・トミー……フィランダーの侍従。童顔だけどフィランダーと同じ25歳
フィランダー視点
フィランダーは幸福感に包まれながらまぶたを開けた。
隣にはシェリルが寝ている。
それだけで天国へでも来たくらいだ。
しかも今日はそれだけではない。
シェリルと学園に通っているという夢を見たから尚更神に感謝していた。
本当は現実で起こればよかったのに。
二人の歳の差は七つ。
三年制の学園ではどう考えても一緒に通うのは難しい。
フィランダーはもう一度目を閉じ、夢を思い出していた。
「シェリル。おはよう!」
学生時代の自分が学生服を身につけたシェリルに声をかけた。
彼女は微笑んでこちらに答えてくれる。
「おはよう、フィランダー。いつもより嬉しそうだけど、何かあった?」
「登校中のシェリルに会えた」
「あっそ」
「今日はダンスの授業あるよね?」
「うん。それが?」
「一緒に踊って頂けませんか?」
「えー……」
「頼むよ。もう決まっていれば文句言う人はいないだろ?」
「貴方にはね」
「黙らせるから……お願い!」
「……分かりました」
「やった!」
「今日だけだからね」
彼女は手のかかる息子を見る母親の様な顔でこちらに目を向けた。
ダンスの授業は楽しかった。
シェリルと寄り添いながら踊ると、彼女の顔が少し赤くなる。
「フィランダー。……近い」
「これくらい普通でしょ?」
「わざとでしょ。踊りにくい」
「それはないんじゃない? こっちがリードしてるし」
すると彼女の顔が負けず嫌いの顔になった。
シェリルは主導権を握ろうと無理矢理ステップを変える。
しかしその前に強引に阻止した。
「きゃ」
バランスを崩し彼女はこちらに寄りかかる。
「やらせないよ、シェリル。君とは二曲しか踊れないんだから」
彼女は顔を真っ赤にさせながら俺に寄り添いながら二曲踊った。
ダンスが終わるとすぐに彼女を椅子に座らせた。
「疲れたでしょ。ごめんね、無理させて」
「あっあのくらい平気」
「無理しないで。体力、限界に近いんじゃない?」
シェリルは体力がないので二曲しか踊れない。
案の定肩で息をしていた。
授業が終わると彼女と一緒に教室に帰ろうとしたが、シェリルは動こうとしなかった。
「先に行ってて。私はもう少し休んでから行くから」
それを聞いてすぐにシェリルをお姫様抱っこした。
「な」
「ごめん。ここまで体力を消耗させてたなんて。すぐに保健室へ行こう」
「いっ。いいからおろして」
「ダメだよ。君を一人置いていくなんてできない」
「……キザ」
「シェリルにしか言わないよ」
保健室に来て先生を呼ぶが誰もいなかった。
「おかしいな。とりあえずベッドに寝かせてもらおう」
「もういい加減おろしてよ」
「ベッドにおろすよ」
シェリルをベットにおろして座らせると彼女は靴を脱いでベッドに横になった。
「フィランダー。次の授業に遅れるから戻って」
「先生が来てから戻るよ」
「これ以上は迷惑がかかるから」
「迷惑じゃないよ。それに授業をサボっても痛くもかゆくもないし」
「……フィランダーってわざと手を抜いてるもんね」
「だから先生が戻るまで側にいるよ。シェリルは寝てて」
「え……」
「襲わないから」
「……信用できない」
「君には紳士なつもりだけど?」
「そう?」
「はいはい。眠ろうね」
不本意ながらもシェリルは渋々目を閉じた。
すると何秒もしないうちに寝息が聞こえてきた。
寝るの早っ。
そんなに疲れてたのか。
ちょっと調子乗りすぎたかな。
ダンスの先生も、もう少しゆっくりな曲選んでくれたらいいのに。
……ちょっと抗議するか。
そんな事を思いながらシェリルの頭を撫でたところで目が覚めてしまった。
あ〜惜しかったな。
もう少しで寝ているシェリルにキスできたのに……。
まぁ。
現実でもできるからいいか。
そう思って目を開けるとシェリルがこちら側に寝返りをうった。
「ん〜……」
何やら眉を潜めている。
もう少しで目覚めるのかと思いながら少しの間シェリルを観察した。




