健康診断
カフェでソイラテのホットを頼み、渋谷の外を覗ける空いていたカウンターに座り、窓際で三島由紀夫の金閣寺を読みながら(何故か近代文学に関心のある時期でした)、なんとなく窓の外を見てみると、この前健康診断でお世話になったクリニックの系列店の看板がありました。
私が実際に行ったクリニックは恵比寿駅付近に構えていました。というのも、本来は今窓から覗いている渋谷のクリニックに行くつもりだったのですが、住所の確認を怠り、間違えて恵比寿の方をネットで予約してしまったのでした。
その看板のせいで思い出すことになったのですが、私は健康診断というのが苦手でなりません。元々血が得意ではなく、採取されるとき、これほどまでに血を抜いてしまって大丈夫なのかと心配になります。一度予防接種の注射のあとで倒れてしまったことがあるので、その健康診断で血を採取する際は横になっていました。
その時に担当してくれた看護婦さんはとても優しかったのを覚えています。
「緊張してますか?」
アルコールで肘の内側を拭いてもらってる時に、そんなことを聞かれました。
「はい。何しろ苦手なんで、男なのに随分情けない話なんですが。」
「気にしなくていいですよ、男性でも結構いるものですよ。」
こんな感じで慰めのような言葉をもらいました。
針を腕に刺され、血を抜かれている間、目の前に大量の蝿が飛んでいるように見えました。脳に血が回ってなかったのでしょう。
回数をこなしていくと慣れていき、次第に座ったままでも平気になるのだそうです。果たして私はいつ頃から平気になることができるのだろうかと考えながら、目の前を飛んでいる蝿をただ見つめていました。
そんなことを思い出しながら看板を見ていると、雨が降ってきたようです。一瞬、雨粒が蝿のように私の目に写り、血を抜かれることには死ぬまで慣れないのだろうと、なんとなく感じるのでした。