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甘噛みは最上級の愛情表現


「――いくぞ、ジン」



突如開けた視界に見えたのは、まだ青年と呼べるだろう、年若い男。

黒髪に、金の瞳でこちらをまっすぐ見た彼は、手に持っていたひしゃげた鉄の棒のようなものを乱雑に投げ捨て、空いたその手を座り込む僕に向けて差し出していた。


僕は目の前に伸ばされた手の平を見て、

周囲に散らばる何か良くわからないものの残骸を見て、

石づくりの壁や床に囲まれた独房のような一室を見て、

そしてもう一度、彼の青年――の後方、臀部のあたりに視線を向ける。

そこには、ちぎれんばかりに左右に振られる黒いふさふさの尾が存在していた。

視線を上にあげた先、青年の頭上には、これまたふさふさの黒い体毛に覆われピンと尖った耳が見える。

後ろから絶えず風を送ってくる尾に反して、凛と引き締まった表情でこちらを見つめる彼には申し訳ないが、この状況の全てに理解が及ばず、つい脳を通さずに思ったことが掠れに掠れた第一声として発せられた。


「……、だ、誰ー…」


姿形は人間とほぼ同じに見えるが、その耳と尾などの身体的特徴から獣人に違いない、目の前の青年。

……全く見覚えが無い。

それどころか、この場所のことも、自分が何者か、今まで何をしていたのかすらも記憶に残ってはいなかった。


青年は僕の質問に少し眉をひそめて、しかし特にそれ以上表情を変えることなく、「ロイド」と名前であろうそれだけを端的に告げる。

未だ、周囲から得られる情報に混乱している僕が更に質問を重ねようと思っていたところで、獣人の青年――ロイドは急に距離を詰めてきた。

思わずギョッと体を強張らせていると、背と膝裏にするりと腕を滑り込ませられて、抵抗する暇もないうちに浮遊感が全身を襲う。


なんとまあ軽々と、僕はロイドに抱き抱えられていた。


「っっ!?」

「いくぞ、ジン」


いや行くってどこに!?その前にそもそも『ジン』って僕の名前ってことでいいの!?


気が動転する僕にロイドは最初と全く同じセリフを吐くと、この一室を閉ざすたった一つの出入り口へと歩みを進め出す。出入り口、といっても、勿論何も覚えていない僕はそこを誰かが出入りしているところなど見たことも無い。足を動かさずとも徐々に眼前に迫りくるそれは、決して薄くはなさそうな、冷たく、ずしりと重厚な金属で隙間なく閉じられた扉だった。


左端には、一応この扉の開閉を操作するための何かが埋め込まれているようだったが、ロイドは迷わず中央を目指し、

戯れに石ころを蹴る様な軽い動きで、しかしドゴン!!と全く可愛くない音を立てて一息に扉を蹴破ってしまう。


蹴破って、しまう???


「は、」


ズン、と、地に足がつかずとも全身で感じる大きな空気の振動と共に、僕の口から吐息ともつかぬ音が漏れ出る。

部屋の外側に倒れて転がる哀れな姿に変形した2つの分厚い金属扉を、僕は限界まで見開いた瞳で追った。

…魔術は、多分、使っていなかったのだろうと思う。

あまり詳しくはないが、魔術による魔力消費の有無は何となく感覚で分かるのだ。


存外近くにある感情の見えない青年の横顔と、続けて、頭上にピンと伸びる黒い体毛に覆われた獣の耳を見やる。

獣人は、通常の人間より素の身体能力が高いことは知識としてあるけど、ここまで規格外の能力差なのか…?


膝裏と背に添えられた、得体の知れない青年の腕が急に恐ろしいものに感じてしまって、僕は無意識に身体を竦ませた。




「―――っ!! ままま待っ、」

「舌を噛む」


背を支えていたロイドの手が、肩を抱くように巻き込んで口を塞ぎにやってくる。

僕はと言えば、数分前には薄っすらとあったロイドへの恐怖心を綺麗さっぱり取り払うどころか、今は彼の首元を締めんばかりにがっちりと両腕を回してしがみついてすらいた。

それもそのはず。

なぜなら、ロイドへの恐怖心を上回る恐怖がそこにあるからである。


記憶上一応初めて部屋の外に出られた僕は、しかし目に新しい外の様子をじっくり観察する暇もなく、ロイドの腕に持ち上げられたまま彼の破壊活動の一部始終を臨場感たっぷりに体感させられていた。


人間離れも甚だしい(そもそも人間ではないが)、超高速で。


「ん゛ーー! ん゛ん゛ーーー!!!」

「ジン、首が苦しい」


口を塞がれたため、悲鳴や抗議は総じて唸り声と、ロイドの首元に回した腕への力に変わる。

力を込めたら枯れ木のようにぽきんと折れてしまいそうな非力な腕ではあったが、この危機的状況で、振り落とされないよう全力で力を籠める以外出来ることは無かった。


多少の苦しさは許して。というか下ろして。




あの部屋を出た後、ロイドは突如何の予備動作も無く急加速した。

どうして。理由を考えようとする思考は文字通りその場に置き去られ、本能で察知した死への恐怖による反射で、気付けば僕は目の前の諸悪の根源たる青年に全力でしがみついていた。

速い。とにかく速い。

つむじ風と一体化しても違和感がなさそうなくらい早い。

そしてそのスピードを緩めることをしないので、身体中に感じる目も開けられないほどの風圧が止まない。


方向転換も振動もめちゃくちゃだ。

まっすぐ走っていたかと思えば、突き当りの清潔な白い壁を軽やかな後ろ蹴りで破壊し、新たな通路を自分で生み出してまっすぐ通り抜ける。

なんで。

既成の通路を進もうよ。

君、もしかしてイノシシの血入ってる?

金属の扉を蹴り飛ばした時とは異なり、後ろ蹴りで壁を破壊するのは飛び散る破片を避けるためなんだろうけど、遠心力に振り回されながらの急な高速回転は非常にきついものがあった。

天井を崩落させるために、これまた合図も無く急に跳躍し、破壊し、ぐるりと宙で一回転して地上に降りることもある。着地後は勿論、天井が崩れ落ちてくる前に全力ダッシュだ。

力の加わる方向が凄まじくめちゃくちゃなこれは、僕の三半規管の死を意味した。


乗り心地?聞いて分かる通り勿論最悪だよ。

というか、何でそんな通り過ぎる場所を軒並みボロボロに破壊していくの?

一体この建物に何の恨みがあるの?

それとも趣味か何か?物は大切にしよう?

そんなことを提言する余裕も無いわけだけど。

う゛、吐き゛そ゛う゛。


「いたぞ! こっちだ!!」


胃からせり上がってくる酸っぱい液体を青ざめた顔で一生懸命飲み込んでいると、遠くで多数の騒々しい靴音と自分達以外の人の声がして顔を向ける。

常に強風にさらされ限界まで細められている己の目をじわりと開けて、ロイドが駆けて行こうとする先を確認すると、分厚そうな白い防護服を纏った複数の人型を確認できた。

彼らは、恐らく武器なのだろう、細長い道具を僕達へ向けて一斉に構える。

しかし、僕達の進行方向に立ち塞がり攻撃の意思を示すその集団に対して、ロイドが駆ける速度を変えることは一切無かった。むしろ、顔面に感じる風圧の差から、先程までより加速していっているようにも思える。


まだ速くなんの?嘘だろ…。


白い集団との距離が、瞬く間に縮まっていく。

集団の中の1人が無表情で突進してくるロイドを見て息を呑み、近くなってやっとわかった細長い武器()の引き金を今にも引くのが見えた――、というところで、僕は堪えきれず瞼をギュウっと固く閉じる。

そんな時になって漸く僕の口を覆っていたロイドの手の平が外され、その代わりに、力強いその両腕で僕の身体を守ろうとするように、彼の胴体の方へグッと力を込めて引き寄せられるのを感じた。

悔しいけど、安心感があるなオイ!!


プシュッ!!プシュッッ!!という案外軽い音が大量に耳に届いたのと同時に、瞼の裏だけを写す黒い視界の中で、物理的に世界が揺れる程の強い衝撃とビリビリと肌を突き刺す轟音が全身を襲う。

腕に抱えられたまま数秒が経過して、あの部屋の外に出てから初めてロイドがその動きを止めたのが分かった。

そろりと目を開けると、大量の土埃を背後に、変わらず何の感情も示さない表情で僕を見つめていたらしいロイドと視線が合致する。


「怪我は?」

「な、何ともない」

「そうか」


短い言葉で僕の安否を確認したロイドに返事をすると、何となくではあったが、彼の雰囲気が和らいだ気がした。


これは、心配してくれていた…、と思ってもいいのだろうか。

彼のことは未だ名前しか教えてもらっていない状況だが、ひとまず今のところは彼が僕を害す様子はない。むしろ先程は全力で僕の事を守ろうとしてくれていたように思えた。

ロイドと、…または僕と?どうやら敵対しているらしい、銃を突き付けてきていたあの集団を悪者と断定するのはまだ早く感じるが、僕を腕に抱いたまま安心したように小さく吐息を漏らしたロイドに対して負の感情を抱こうとは思えなかった。


当初僕がロイドに感じていたような怯えも、いつの間にか取り払われてしまっていた。


自惚れでなければ、ロイドが歩みを止めたのは僕の無事を目視で確認するためだったのだろう。

その証拠を示すように、彼は僕と安否確認の言葉を数言交わした後、すぐさま足を動かそうと身体を傾けだす。


しかし彼が動き出すその前に、確認しなければならないことがあった。

僕達の会話以外に、うめき声や、布ずれの音一つしないこの空間についてのことだ。


「ちょ、っと待って! あの人たちはどうなった?」


ロイドの胸元の服を思い切り引っぱり、注意をこちらに向けさせる。

思惑通り足を止めた彼の返事を待たずに、僕は腕から無理矢理身を乗り出して、ロイドの肩越しに彼の背後を覗き見た。


そこは、まだギリギリ屋内の形を保ってはいたが、周囲にあった形ある物を全て崩して眼下に作られた瓦礫の山々は、まるで災害が通り過ぎた後のような惨状だった。

一体何がどうなってこんなことになったのか想像も出来なかったが、どう見ても生き物の気配を感じられないそこに呆然としてしまう。

息を呑んだまま身じろぎ1つしなくなった僕に、ロイドは落ち着いた低い声で「ジン」と呼びかけ、ある一方向に視線を誘導した。

そこは、今の僕からは死角になっている場所だ。

見やすい位置へと向きを調整してくれたロイドに促されるまま指定された方向を見ると、若干細かい砂が降り積もった件の人たちが、横たわったままその一か所に寄せ集められているのが分かった。


「ーー殺っ、」

「殺してない。 気絶させただけだ」

「……、ちょっと、降ろして」

「嘘はついてない」

「分かってる。 でも、頼む」

「……、」


僕の要求を呑んで、丁寧に地面に降ろしてくれたロイドに礼を言って、歩き慣れない足を一生懸命交互に動かした僕は気絶しているらしい人達のところへと近付く。

1人1人様子を確認したが、身体に細かな擦り傷があるくらいで皆無事そうである。

大きな怪我人が居ない様子に、僕はほっと息を吐いた。


それにしても、あの短時間で僕を抱えながら、どうやって彼らを気絶させることが出来たんだ…?純粋に凄いとしか言いようがない。

そして、何よりも、


「ロイドは、優しいんだな」

「ーーー、違う。 優しいのはジンだ。俺じゃない」


意図的に人を害さなかったロイドをそう判ずると、彼は淡々と否定を返した。

僕がその言葉の意味を聞き返す前に、「もういいな」と再びロイドに抱え上げられそうになって、慌ててその動きを制止する。

勘弁してくれ。本気で三半規管が死んでしまう。


「ま、待って!! 悪いんだけど、僕は自分が何者なのかも、何で此処に居るのかも全部わからなくて! …君は一体、僕の何なんだ?」


腕を突っぱねながら漸く言葉に出来たその問いに、ロイドは躊躇うことなく答えた。


「俺は、ジンの使い魔だ」

「…使い魔? 獣人が、使い魔になれるの?」


「なれた」


な、なれたんだね…。

口を付いて出た疑問は、結果以外何の情報も得られずに終わる。

というか、彼が使い魔と言うのなら、僕は魔術師ということに…?


「もうわかったな。 じゃあ行くぞ」

「待て待て待て!! まだ何も分かってないから!! 名前と使い魔ってことだけ!!」

「……、」


思考の途中で再び抱え上げられそうになり、僕は陸に上げられた魚のように激しく身体を揺らして抵抗した。ロイドはそんな僕に対してかすかに眉を寄せると、今度は実力行使でなく精神に働きかけるように、僕が纏っていた衣服の端を掴んで力なく引く。

対面当初はあれだけ元気に振られていた彼の尾も、いつの間にか、不安を示すように垂れ下がっていた。

何だその技!くっ、結構僕に効果あるぞ!?良心が痛む!


「な、何でそんなに急ぐの?」

「時間が無い」

「時間?」

「俺がここに居られる時間だ。 多分前より、短いから」


「前?」


「—―俺がジンに呼ばれるのは、これで4回目だ」

「4回…って、そんなに、」


それを僕は、全部忘れてるのか?


聞かされた、自身の記憶と重ならない事実をとても信じられないでいると、


「そんなに、じゃない」


ロイドは、その金色に光る目でまっすぐに僕を射貫いた。

責めるような圧迫感を感じて、思わず息を呑む。


「もういいか」

「っ、そんなに急いで、ロイドは何をしたいんだ?」

「ここを壊す」

「壊してどうなるの?」

「全部壊して、ジンを連れ出す(助ける)


「は、破壊、しなくても、そのまま外に出て行けばいいだろ」

「駄目だ。 出来ない」

「何で?」

「わからない。 でも出来なかった。 だから壊す。 全部壊す。

俺が全部壊せば、出られるかもしれないから」


僕が忘れているだけで、ロイドは色々と経験済みらしかった。

しかし、まだ僕がここに居るということは、同時に彼の悲願の未達成を示す。

それでも彼は、諦めることを知らないみたいに、必死に前を向いて1つのことをやり遂げようとしていた。

やり方は物騒にも思えるが、ひたむきなその姿が僕のためのものだと聞いて心動かされないはずもない。

無性に獣耳頭を撫で繰り回したい欲求に駆られたが、いい加減停滞を焦れたように伸ばされるロイドの手については、別問題!とばかりにサッと避けた。


ついでに、先程敵の前でより加速したロイドを思い出して、1つ提案をしてみる。


「僕を一旦此処に置いていったらどうかな。 邪魔だろ? 壊し終えたら迎えに来るとか…、」

「駄目だ」

「駄目かー。 …もしかしてこれも経験済みだったり?」

「最初に言われて、置いて行った。 そしたら、途中で、ジンが……」

「僕が?」

「……とにかく駄目だ」

「駄目かー」


どうやらこれも既に経験済みだったようで、即却下された。


その後も、抱き上げてこようとするロイドに一生懸命反抗していると、「ジン」とあからさまに不機嫌そうな低い声で名を呼ばれる。


そんな聞き分けの無い奴を見るような目をしなくても…。

運ばれたら次こそ絶対に嘔吐する自信あるし。だからと言って徒歩で後ろを付いていったとしても、歩き慣れてないこの足じゃお荷物になるのは必至だしな…。


そんな考えの元、最終的に下された決断は――、


「壊すのは次にして、今日のところは休憩しようよ」

「次……、」


あっけらかんと告げた僕に、当然の如くロイドは不満そうな雰囲気を全身で醸し出す。

少し寄せられた眉は、「次なんてない」とでも言いたげだ。


「話し相手になって欲しいな」

「壊しながらじゃ駄目か」

「駄目です」

「駄目か…」


ロイドはしばらく無言で立ち尽くしていたが、その場に腰を据え出した全く動く気の無い僕を見て、結局渋々ながらもそれに倣ってくれた。


すぐ後に、いつ増援が来てもおかしくないとの理由で、場所の移動をせざるを得なかったけれど。




施設の一角。

静寂を保ったそこで、僕と向かい合って座ったロイドが、履いていたズボンのポケットから折りたたまれた紙を取り出す。

それは皺だらけでやや黄色く色褪せていて、決して新品には見えなかった。

ロイドは薄いそれを破かないようにして、ごくごく慎重に開き始める。


「何の紙?」

「ジンに説明することをティオに書いてもらった。 前もこれを読んで説明した。俺は喋るのが得意じゃないから」

「ティオ、って?」

「ティオは、ジンの使い魔だ」

「あ、え? もしかして僕、使い魔複数いるの? ロイドと、ティオ、さん? 人、なのかな?2人?」


「………うむ」


うむ!?何その返事!?

長い溜めの後の不自然すぎる返しに、僕はロイドを凝視すると、視界の端に映った彼の尾がへにゃり、と力なく地面に伏せられているのを発見した。


もしかして、嘘吐いてる…?

吐いてるんだ…。でも罪悪感があって完全には吐ききれないんだ…。

何それ、愛らしいな!?


「本当はもっといるな? だろ?」


ピッとしっぽが一度痺れたように反応して、すぐさまへにょりと垂れ下がる。

ニマリと上がってしまいそうになる口角を僕は必死に真横に保ち、黙秘を貫こうとするロイドをさらに問い詰めた。


「3人?」

ピッ! …へにょり


「4人? …5人?」

無反応


「3人?」

ピッ! …へにょり


「うん3人だな。 君可愛い奴だな…」

「今は魔法が使えないんじゃないのか? 心を読むなんて反則だ」

「いや読まなくても……って、魔法? 魔術じゃなくて?」


ロイドは、何故嘘がバレたのか本気で分からない様子で訝しむが、僕はその時告げられた彼の一言の方が気になり、つい聞き返してしまう。

すると彼から返ってきたのは、僕が予想もしていなかった台詞だった。


「ジンは『魔法人(マホウビト)』だから。 使うのは魔法だ」


「ーーえ? 僕、人間じゃなかったんだ!?」


魔法人(マホウビト)

それは人間と同じ姿をした、しかし明らかな別種族の呼称。

人間やその他の動物から遺伝関係なくポッと生まれ、大体が酷く長命で、生まれつき魔法の扱いに非常に長けていると言われている。

魔法は、一言で言えば『奇跡の力』。

魔力という同一のエネルギー物質を用いてはいるが、法則に基づいた魔術とは似て非なる、完全な神秘の能力なのである。


じゃあもしかして、僕って自分が思ってるよりお爺ちゃんだったりするのか…?と、ちらちら視界を掠めていた自身の白髪を盛大に意識しつつロイドに確認するが、聞いたことが無いから分からない、と首を振られてしまった。

……良いんだ。自分が若いと思えば若いんだよ。


「魔法か。 …使えるんなら使ってみたいけど、どうやるんだろう?」

「さあ」

「さあって…」

「俺には魔術を扱う適正もないから、そういうことを聞かれてもわからない」

「あれ、獣人ってそうだったっけ?」

「違う。 獣人が、じゃなくて。俺には色々混じってるから身体が魔力を弾く、とジンは言っていた。 ……それも多分これに書いてある」


ロイドは、色褪せたメモ紙をやっと開ききると、次の瞬間、ぴしりと石のようにその動きを止める。

しばらく無言で固まったままのロイドに、流石に様子がおかしいと思った僕は声をかけた。


「…どうした?」

「………クソ陰険ゾンビ」

「クソ陰険ゾンビ!?!?」


地を這うようなドスの利いた声で告げられたのは、何とも物騒な言葉である。


もしかしてそう書かれてるの!?もう説明始まってる!?

突然の罵倒じみた言葉に目を白黒させていると、ロイドは一変して力なく肩を落としながら言った。


「……、説明、出来なくなった」

「おぉ…、服と一緒に洗濯でもして読めなくなってた?」

「…違う。 文字が、変わっていた。 俺が読めない言語だ。 ……ゾンビの嫌がらせだ」


君、知り合いにゾンビ居るの??あ、もしかして3人の使い魔の内の1人だったり?

……え?ゾンビなの??しかも嫌がらせするの??怖いんだけど??

ただの渾名であることを祈ろう…。


「もしかしたら僕が読めるかも。 貸してもらっていい?」

「駄目だ。 きっとでたらめに書き換えられているに決まっている。 奴はそういうことをする。 多分ジンに呼ばれる俺が気に食わない。 クソ陰険ゾンビだから仕方ないんだ」

「あんまり仲良くないのね…」


無表情ながら、グルル、と喉の奥で鳴る低い唸り声を耳にして、案外感情表現豊かだよな、などと思い直す。

そのゾンビさんとは、喧嘩する程仲が良い関係だったらいいけど……、どうだろう。何だか並々ならぬ怨念を感じる…。


結局、渋るロイドを何とか宥めて、僕は彼のメモ紙を見せてもらうことが出来た。母語、異国語、などという認識は全くなかったが、書かれていた言葉は問題なく読めるようだったのでひとまず安心する。


記されていたのは、殆どがロイド自身に関することだった。

僕達の関係性や、いかにロイドが危険人物でないかということを示すような文面になっている。


あー…、これ、最初に聞きたかったことだわ。

このメモを書いた人(ティオさんか、書き換えられていた場合はゾンビさん?)は、僕のことも、ロイドがとるであろう行動も良く把握してくれているみたいだ。

…ロイドがこれをただの説明、もしくは自己紹介(ただし急いでいるときは省略可)だとしか思っていないところが難点だけど。


苦笑しつつ、一通り読み終えた後に、一応この情報が誤りでないかロイドに確認をとる。


「ロイドは狼の獣人なんだな。

でも生まれつき様々な血が混ざっていて、集落で酷い扱いを受けていたところを僕が引き取った。 僕に恩を感じているから、僕を守ることはあれど、危害を加えるつもりは一切ない。 要約するとこんな感じか。 あとはー……、力が強いけど驚かないでね、だな。

合ってるか?」

「…合ってる」


もっと早く言って欲しかった…。無駄に心をすり減らされた…。

過去の恐怖を思ってうなだれる僕をよそに、ロイドは「何も無い…?」と訝し気にメモ紙の匂いを嗅いでいた。

あ、鼻摘まんだ。

え?嘘、もしかして僕の体臭…??

傷つくからそういうのは見えないところでこっそりやってくれ。こっそりやられても傷つくけど。


納得はしていない風だが、満足はしたらしいロイドが、僕の手元のメモ紙から顔を上げる。


「…ジンは、あの冷たい檻を壊して、俺の居場所になってくれた。

恩、だけど、恩じゃない。 俺がジンを守りたいと思うのは、多分もっとずっと、ーーぐわあっ、ってやつだ」


両手で心臓を掴もうとするように胸元の服の生地を握りしめたロイドが、本当にかすかに口角を上げて言った。


彼の過去に何があったのか、詳しくはわからないが何となく背景は読める。

獣人は、群れで行動する。

元々彼らは同種の意識が強くて、他種族や混血を受け入れ難いのだ。

ロイドが排斥されるのも、悲しいが過程は理解できる。


でも、


「ーーふは、ぐわあって何だよ」

「ふわっ、かもしれない」

「さっきと全然違う!」


目の前で、あまり変わらぬ表情をかすかに和らげる姿を見ると、その集落の人たちも惜しい事をしたなと思う。

多分、そこで普通に暮らせていれば、仲間想いの良い青年に成長していただろうに。

まあ、そうならなかったから今があるわけだろうけど。


「それにしても獣人か。 この(記憶のない)僕は初めて見たわけだけど、他にも知り合いに居たりするのかな?」

「居る。 ジンの友人の弟子が獣人だ」

「え!? 僕友達いるんだ!? ど、どんな人!? っていうか人!?」

「獣人に良くしてくれる魔法人の男だ」

「おお~! 獣人想いの良さげなお方!」

「ジンは良くそいつのことを『ペド獣人狂い』と愛称で呼んで親し気にしている」

「待って」


詳しく聞くまでも無く分かる最悪の友人だったーー!!

そもそもそれ愛称じゃないし!ていうか多分、いや絶対友人じゃない!断言できる!


「じゅ、獣人狂いって…だ、大丈夫? ロイドそいつに何かされてるんじゃない? 何かあげるって言われてもついていっちゃいけませんよ!?」

「……ジン、もしかして思い出したのか? 昔と全く同じことを言っている」

「欠片も思い出してはいないけど目に浮かぶよ!! …心配になってきた。最近会った?」

「つい先日会った」

「何もされなかった!?」

「ああ」

「そう……、よかっ――」

「薬品作りで必要だからと、体液の採取を求められただけだ」


「何かされてるって言うんだそれはーーー!! 馬鹿正直にあげちゃったの!? 体液あげちゃったの??」

「いや、ティオに止められた」


ティオ、さん!!!記憶には無いけど、君が正常な感性を持ったしっかり者だというのはひしひしと感じるよ!!

よくぞ!!よくぞ被害を未然に防いでくれた!!


話が脱線してしまったが、僕は(もっと早く見せてくれていれば)十分に役に立ったメモ紙をロイドへと返す。

結局、メモの内容に違いは無く、ただ文字を書き換えられていただけのようだった。

……ただし、文末を除いて、という注意書きが必要だが。


メモ紙の最下列には、『ロイドは頭の弱いバカ犬畜生』、『駄犬注意!』、『この間センセイのカップ壊した犯犬』、『甘やかし反対!』、などといった一言サイズの悪口が数個連ねてあった。

良く考えなくても、これがそのゾンビさんの嫌がらせなのだろう。

今一度メモを眺めて首を傾げた後、元の場所に仕舞い込んでいるロイドを、僕はチラリと見やってて、


……言わない方が、平和だな。


ロイドが読めない言葉で書かれた悪口を、僕はそっと胸の奥に仕舞い込んだ。




「…ジンと、久しぶりに話した」


いつの間にか、こちらを見つめていたらしいロイドがポツリと呟く。


「いつもは全く話さなかった?」

「早くジンを出してやりたいから、前も、その前も壊すだけだった。 ジンから話そうと言われたのも初めてだ」

「え、何でだろう。 ……今回は、誰かと会話がしたかったのかな?」

「……、」


ロイドは、僕の言葉を聞いてかすかに目を見開いたかと思うと、次の瞬間、口を噤んで押し黙ってしまった。同時に、彼の唯一の獣部分である黒毛の耳としっぽがペタンと力を無くす。


な、何か変なこと言った…!?僕のせい!?


僕は心中で焦りを浮かべながら、何らかのきっかけ(自分が原因の可能性大)で落ち込んでいるらしいロイドに下手な声かけも出来ず、同じように黙りこんだ。

…そうして話し相手がいなくなると、途端に何もすることが無くなってしまう。

手持ち無沙汰に視線をあちこち動かしていた僕だったが、代わり映えのない壁を眺めるのにも早々に飽きて、結局、前に座すロイドへと目を向け戻した。ただいま。


自然、視界に入ってくるのは、自分にはない特徴を持つそれで―――。


「……耳、触ってもいい?」


静寂を切り裂く唐突な僕の言葉に、ロイドは一瞬キョトンと目を丸くする。

しかしすぐに我を取り戻したようにすると、忙しなく動き始めた尾をそのままに、その黒い頭ごと耳を突き出して言った。


「ジンにされて嫌なことは無い。 いくらでも触ればいい」


ほぼ脳を通さずに出た言葉だったため、無礼だったかと一瞬冷汗をかいたが杞憂だったようだ。

共に頭を撫でられるのを期待してか、突き出されたロイドの耳が平たく寝かせられているのに気付いて、胸の奥がむず痒く疼いた。


ずっと気になってはいたんだよな、あのふわふわ。

見た目から触り心地は想像できたけど、経験が抜け落ちているせいで妙に現実味に欠ける気がするから確かめてみたくて。

ほら、アニマルセラピーって、絶対に健康に良いし…。


僕はふつふつ滾る欲望のまま、そろり、と指先でロイドの耳の表面をなぞる。

艶のある黒い体毛が、髪とはまた異なった質感を伴って優しく僕の手を押し返した。

お、おおお、想像通りのふわふわ滑らかさ!…凄く柔らかい。


「っん…、」


やわやわと獣耳を触り続けていると、突然、ロイドが控えめな声を出してピクリと身体を揺らした。

僕は驚き、反射的にロイドの耳から手を離そうとしたが、彼は遠ざかるそれを素早く掴んで引きとめる。その行動に重ねて驚かされながら、僕は恐る恐る声をかけた。


「ご、ごめん。変なとこ触ったか? 痛かった?」


「違う。


ーー凄く気持ちがいい、から、やめないでくれ」


ロイドは、掴んだままの僕の手を自身に引き寄せて、おかわりをねだるような仕草で頬擦りする。

常に泰然としていた美青年の甘え顔は、微かに血色の良くなった肌と相まって凄まじい色気を醸し出しており、知らず知らずの内に僕はゴクリと生唾を嚥下した。




それからの数分間、僕は動揺をかき消すように、ロイドの頭をひたすらわしゃわしゃとかき混ぜていた。気持ちよさそうにするロイドの様子を見ながら、よしよしここか?ここが気持ち良いんだろ?ええ?と、両手で顔を挟んだり、顎の下を擽ったり、頭以外も好き放題に触らせてもらう。

尻尾も触りたかったが、目で追うのがやっとなほどの高速で振り回されていたので、流石に諦めた。

ちぎれんばかり、とはこのことだ。ただしその場合、千切れるのは彼の尾ではなく、触れた僕の指の方。掠っただけで吹っ飛んでいきそう……。


最後にもう一度、髪の毛を撫でつけるのと一緒に耳も撫でつけてから、触れさせてくれた感謝の気持ちを込めて、軽くポンポンと頭を叩く。

ロイドは、終わりを示すその僕の手をぼんやりと放心した目で追っていた。


撫で始める前とは180°異なる、トロンと蕩けた目をするロイドがおかしくて、僕は堪らず笑みをこぼす。


「流石、ジンだ…。 俺のツボを、誰よりも、心得ている…。 やるな」

「ありがとうございますっ!」


「……危なかった。 寝転ぶところだった」

「? 寝転べばよかったのに」

「みっともないと言われるから外では出来ない。 ジンとティオにも叱られるし、クソゾンビにも笑われる」


ああ、もしかして、寝転ぶ=服従のポーズ的な感じのやつか。

……え、僕に服従してるの??


「だから、ーー次は家の中でやってくれ」


ロイドの期待に満ちた声に否が言える筈もなく。

明確な約束が出来ない立場なのにも拘らず、気付けば僕は了承の頷きを返していた。


君、こんな犬…、いや、狼そのものみたいな扱いで大丈夫なの???


そんな不安が少し過ったが、そもそもその狼扱いをしたのは僕自身なので、ロイドに何も言うことが出来ないのであった。


耳、触り心地良かったなぁ。


程よい現実逃避も大切である。





「時間だ」


短くそう言ったロイドの身体は、足元あたりから段々と透明度を増していっていた。

向こう側が薄ぼんやり透けて見えかけるなどという通常の人体ではありえない光景に、僕が思わず声を上げてしまったのも仕方がない事だろう。

興味本位で少しつついてみたが、まだまだ実体はあるようで、普通に温かい皮膚の感触が返ってきた。


「何も出来なかった…。 ……でも、今回はジンが邪魔したから」

「ご、ごめん。 許して」


子供みたいなことを言って口を尖らせるロイドに、僕は一瞬脳裏に過った(邪魔しなくてもどっちみち僕は解放されないままだったのでは?)なんていう、人の努力を踏みにじる様な最低思考を念入りに砕いて吹き飛ばしてから、やや強引に彼の頭を撫でる。

誤魔化されてくれないだろうかと期待した思惑通り、秒でふわわーっと気が抜けたように陥落したロイドにほくそ笑むと同時、あまりのチョロさに不安になる僕だった。

この子、詐欺とかに引っかかりそう…。無性に庇護欲を擽られてしまう。


ロイドはしばらく微睡むように僕の手に身を任せていたが、あっ、と途中で何かを思い出したように覚醒する。

次いで、僕の方をまっすぐ見つめたかと思うと、


「俺もジンとキスしたい」


「…はい??」

「エルマとはしたって聞いた」

「エル…? だ、誰?」

「クソ陰険ゾンビ」


あ、ああ、ゾンビさんはエルマさんっていうんだ。今更だけど、渾名でよかった…。


そうだったそうだった、と頷きながら服の袖で僕の唇をゴシゴシと強めに拭ったロイドは、一息つくことも無く、そのまま流れ作業のように僕に顔を近づける。

突然のそれに、当然こちらは流されてやるはずもなく、僕は咄嗟に腕を伸ばしてロイドと物理的な距離をとった。


「待って待って待って!! 突然すぎる!! いや何で!? 何でキスすんの!? そういう関係だった!?」

「…、まりょくきょーきゅー? だ」


良く分かってなさげにそう言ったロイドによって、突っ撥ねていた腕をいとも簡単に絡めとられ、一気に距離が縮まる。

至近距離に迫った金色の瞳に僕が息を呑んだと同時、彼は顔を少しだけ傾けて、その近すぎる吐息で僕の前髪を小さく動かした。

僕の白と、ロイドの黒、重なり合った反対色から覗く煌めく瞳には、一体どんな感情が閉じ込められていたのだろうか。


「ジン、したい」


中身の無い拒絶の言葉が音にならない内に、元より返事など求めていなかったらしいロイドはその顔を更に近づけて、


―――ぐわあっと、何かに噛みつくみたいに大きく口を開く。


流石狼の獣人というだけあって、鋭利で立派な犬歯がはっきりと目視出来た。

あれ、これキスっていうか食い殺されるんじゃ――???


背筋に走り抜けた危険信号に、僕は強く瞼を閉じ―――、


カプリ。


唇、というか唇周辺に生暖かい濡れた感触と、硬質なものがただ()()()()()気配がして、張り詰めていた緊張がわずかに解ける。それは、痛みなど一切感じない、甘噛みというものであった。

ロイドは一時唇同士をくっつけたかと思えば、次の瞬間にはまた、その唇周辺ごと大きく開いた口でアグアグと甘く歯を立ててくる。その途中、中から出てきた舌で何度も口周りを舐められた。

僕は唇を閉じていたままだったので、あくまでも表面だけの話だ。

あ、鼻にも飛び火した。…頬も噛んだ。

ぺろぺろ、ちゅっちゅ、アグアグと、顔中をロイドの口で好きなようにされて………、これ、完全に犬…、もとい狼がじゃれついてるやつだーーー!!

男に口周りを舐められている絵面は普通にヤバいと思うけど、大型犬に置き換えればまあ…なくも無い…、か?

認識を改めると同時、一気に心に到来した余裕から、ギュウっと固く閉じていた目をゆっくり開く。


だがしかし、

―――飛び込んできたものは、可愛らしい大型犬の姿(概念)などといった生易しいものでは決してなく。


今にも獲物の喉元を掻き切り血を啜らんとする、酷く腹を空かせた獣の瞳がそこにはあった。

焼け付く程に滾る金のそれが、自身の瞳を写していることを認識したその瞬間、

畏怖とも憐憫ともつかぬ感情に、ヒュッと、肺が空気を求めた音がした。


前言撤回。

やっぱりヤバい。



――数分後には、フンスと満足そうに鼻を鳴らすロイドと、唾液でベタついた顔に死んだ目を張り付ける僕の、対照的な二人が残っていた。


身体の透け具合から、ロイドに残された時間がもうあとわずかだろうことがわかる。

ロイドも自身でそれを察したのか、改まるように元々しっかり伸びている姿勢をさらに正すと、僕をまっすぐに見て言う。


「またオレを呼べ。

次こそ、絶対にジンをここから助け出す」


帰る直前ギリギリまで顔中を舐めていた奴とは思えない、いかにも凛々しそうな態度のギャップに、

僕はさっきまで凄まじい疲労感を感じていたことも忘れ、思わず喉の奥で込み上げる笑いを堪えた。

おかしさに、苦言を呈す気力も失せてしまう。


僕は、ロイドを見つめ返して頷いた。


「分かったよ。 じゃあその時は邪魔しないように――、」




ガンッ、と、身体を芯から揺らす強い衝撃を感じる。


意図せず傾く視界と、朦朧と霞んでいく意識の中、

姿を消す直前のロイドが今にも泣きだしそうに顔を歪めたのが見えて、


少しだけ申し訳なさを覚えた。





きっとイノシシの血も入っている。

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