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閉ざした心

それから数日、彼をどんなに待っても姿を見ることが出来なかった…






彼が訪れなくなって何日経ったのだろう


おそらく4~5日だろうか…


きっともう彼は来ないのだろう…


私が愚かなせいで彼を怒らせてしまったのだ。


こんな私にせっかく親切に手を差し伸べてくれたのに、なんて酷い言い方をしてしまったんだろう…


彼が怒ってしまうのも無理はない。


私の大切な淡い恋心を自分で壊してしまった。


そんなつもりじゃ無かったけど結果的に…


もう取り戻すことの出来ないあの幸せな時間を毎日毎日思い起こしてため息ばかりついていた。


外は雨が降っていてそのせいで余計に気分も憂鬱になってしまう。


私は寝床で横になったまま何もする気も起きずこうして腐る日々が続いた。





しかし、突然その時はやって来た。


雨の音が足音を遮っていて全く気付かなかったがすぐ側で声が聞こえる。



…さん…


…さん…


居ますか?和代さん…


私の心臓が破れたのかと思うほどの勢いで爆音を鳴らし激しく高鳴った。


もう完全に諦めていた彼の声が聞こえたのだから、あれほど恋い焦がれた彼の声が聞こえたのだから、表現のしようが無いほどの嬉しさで高揚している。


松橋『和代さん、居ますか?』


私は彼の顔を見る準備が出来ていなかったので身体を彼の方に向けて…


私『は…はい…ここに居ます…』


かすれた声で何とか答えることが出来た。


松橋『良かった。あの、この間は和代さんの気持ちも考えずに突然あんなこと言ってすみません。あれからいろいろ考えました。


和代さんには和代さんの生活スタイルがあり、和代さんには和代さんの考えもお持ちで、土足で入り込んではいけない領域があるのだと。


だからこれからも僕は和代さんの陰でお助けしようって…』




私は心の中で彼に必死に『違うの…違うんです松橋さん…ほんとは私…


あなたの側に居たい…


ずっとあなたの側に居たいの…』


彼には届かぬ声で叫んでいた。



松橋『和代さん?まだ怒っていますか?』


しばらくお互い沈黙が続く…


今ちゃんと私の想いを伝えないと、私の意思を伝えないと、また後悔してしまう。


また…いや、今度はもう無いかも知れない…


だから…ちゃんと言わなきゃ…



……


………


私『あのぉ…』


そうよ、その調子…


勇気を振り絞って気持ちを伝えるの…


私『あのぉ…あの…


私…



松橋さんに付いて行きたいです…


松橋さんの夢…の話しを…



もっと…聞きたいです…』



私は声を震わせながら言った。



私『こんな私だけど…



本当に付いて行って大丈夫でしょうか?』


よし、よく言った。


偉いぞ私…


よく頑張った。



私『松橋さんの夢…の…力に…どんな風にお役に立てるかわからないけど…私で良ければ…手伝わせて…下さい…』


松橋『和代さん、顔…見せてください。』


私は恐る恐る段ボールの寝床から彼を覗きこんだ。


彼はいつもと同じ優しい眼差しを私に向けていた。


ずっと会いたかった…会いたくて会いたくて堪らなかった。


涙か出そうなほどに堪えきれない感情が沸き上がってきて、また私は隠れてしまった。


松橋『和代さん、ありがとう…僕はてっきりあなたの気持ちも考えず無神経なことを言って怒らせたんだとばかり…


だからここに来るのはためらったんだけど…もう後悔するのはダメだと思って…あれから毎日あなたのことを考えてた…


謝ろうと思って…』


和代『松橋さん…実は私もあなたの親切を無神経にはねのけてしまって………あなたを怒らせてしまったんだとばかり…


だからもうあなたとは会えないんだと思ってて…


あなたの声を二度と聞くことは出来ないんだと思ってて…』


その時二人の声が重なった


松橋、私『ごめんなさい!』



私はそーっと顔を出して彼の顔を見た。


そして目が合った瞬間二人はクスッと笑いだしてしまった。


松橋『和代さん、来てくれますね?僕の家に』


もうここまで来たら迷うことは出来ない


彼が私を必要としてくれてるのだから何も遠慮することは無いんだ。


もう遠慮することは無いんだ。


こんな私を彼は受け入れてくれると言ってるのだから…


私『お願いします…お邪魔でなければ…』



二人は一つの傘の中に身体を寄り沿わせて河川敷の橋桁を後にした…


私の王子様の温もりが、優しい温もりが私の閉ざした心の氷を全て溶かして行く…


もう私は無防備だ…

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