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まさか…あの男性は…

元のホームレスシンデレラをR指定を外して再投稿してるので既に読んで頂いた方が重複してましたらご了承下さい。

私は息を殺してじっとその気配を見守っていた…


ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


ゆっくり…そして穏やかに近づいて来る優しい足音…


歩き方でその人の性格が何となくわかる。


強くドシドシという音は威圧的な人。

スタッ、スタッ、スタッ、スタッという音は明るく元気な人。


今聞こえてくる音は…きっと性格の穏やかな優しい人?


その足音はすぐ近くで止まった…


またガサガサ、ゴソゴソという音がしてそのあと少しの間沈黙…


そしてまた来た方向にゆっくり立ち去って行く気配…


さっきの沈黙の中で、微かだが何か聞こえたような気がした…


気のせいかもしれない…そう思っただけかも知れない…


でも多分こう言ったんじゃ無いのかな…


『頑張って…』


気のせいだったんだろうか?


その気配が随分遠ざかったのを確認してからそーっと辺りを見回した。


やっぱりレジ袋のようなポリ袋が置いてある。


回りには誰も居るような気配は無い。


素早く立ち上がってその袋を取り急いで寝床に戻った。


やはり間違いない。


間違い無く私にこれを置いていったんだ。


あの人はやっぱり足長おじさんなんだ。


その袋の中身はこの前と同じパンとペットボトルのお茶が入ってた。


私は自然と涙が出てきた。


今度は警戒すること無くパンとお茶を味わった。


ありがたい、ありがたい、本当にありがたい。


何故こんな事をしてくれたか知らないけど、本当に美味しい。心の底から感謝の気持ちが沸き上がって来た。


心が温まったせいか不思議と身体まで温まったような気がする。


人の親切に触れるのは何年振りだろうか…


また会うことが出来るなら感謝の気持ちを伝えたい…でも、面と面を合わせてありがとうなんてとても言えない。


そんなことをいろいろ考えながら幸せな気持ちのまま眠りに落ちた。




………まだ薄暗い。


日はまだ登っていない。


ほとんど動いていないから身体中が痛い。


少し散歩してこよう…


そう思いゆっくり起き上がって寝床から出た。


満腹感でいつもより気分が軽い。


大きく伸びをしてから謎の足長おじさんが歩いて来た方向へゆっくりと歩き始めた。


もしここであの足長おじさんとバッタリ出くわしたらどうしよう…


痛い身体を引きずり右に左に身体を揺らしながらトボトボ歩いていた。


何だか緊張する。


もし偶然にも本当に出くわしてしまったらいったい自分は何て言うだろう…


自分の妄想に勝手に心臓が高鳴る。


しばらくフラフラと力無く歩いていたが結局誰ともすれ違うことはなかった。


勝手に妄想して無駄な期待をしてしまった自分が馬鹿らしい。


少し疲れたのでまた今歩いて来た通りにとぼとぼと戻って行く。


栄養が足りないせいか少し目が霞んで焦点が定まってないような気がする。


しばらくとぼとぼと身体を揺らしながら歩いていて、ふと前方に誰かが歩いているのが見える…


おおよそ50メートルくらい先だろうか…


何となく体格から見て男性のような…


ゆっくり、そしてしっかりとした足の運び方で歩いている。


徐々に近づくにつれその男性の容姿が確認できる。


身長はだいたい175センチくらい?


わりとスマートでカジュアルなスラックスのようなズボンと膝上くらいまでの丈のコートか…


髪型は前髪は眉毛くらいまで垂らし、全体的にそれほど長くも無く綺麗にまとめられていて、わりと清潔感を感じる爽やかな好青年といった印象だった。


本来なら人とすれ違うことは避けて進む方向を変えてやり過ごすところだが、その時だけはそうしなかった。


男性の歩き方があの遠ざかって行く足音のリズムそっくりだったからだ。


興奮が抑えきれない。ドキドキが止まらない。


まさか、まさか本当にあの足長おじさんが現れる!?


期待していたとはいえ、それが現実のものとなると急に足がガクガク震えだした。


自分が想像してた足長おじさんとは少し違う。


でも、間違い無いだろう…


こんな朝早くに何をしに来たのか…


ただの散歩コースなのだろうか…


そのついでに気まぐれにあれを置いていっただけなのだろうか…


まともにその男性の顔を見れない。


うつむきながらその男性をやり過ごそうと思ってすれ違う瞬間にその男性は足を止めた。


そして


男性『あのぉ…ちょっといいですか?』


私に向かって話しかけて来た!


私はビクッと一瞬身体が跳び跳ねてしまった。



自分でも顔がひきつっているのがわかる。

驚きのあまり声が出ない。


男性が続けて


男性『大変失礼ですが…この先に住まわれてる方でしょうか?』


あれほどこの展開を期待してたのにいざ現実となるとどうすれば良いのかわからず戸惑っている私…


その男性はそんな私の反応を見て察したのだろう…


男性『あなただったんですね!』


満面の笑みで私にそう言った。

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