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不穏な気配…足長おじさん

元のシンデレラストーリーをR指定を外して再投稿してるので既に読んで頂いた方がいましたら重複することをお詫び申し上げます。

寒い…すごく寒い…寒さと空腹で眠れない…橋桁の下に段ボールやゴミに出されていた毛布や新聞紙で寝床を作り雨風は何とかしのげても、2月の底冷えするこの寒さには何の効力も無い。


空腹も限界に来ている。ゴミに出されたパンを食べたのも2日も前…


苦しい…すごく苦しい…寒さと空腹ですごく苦しい…


路上生活を経験したことの無い人には好きでそういう生活を選んだと思われるのだろう。


誰だって好き好んで堕ちる所まで堕ちる訳じゃない。


誰にも頼れず誰にも相手にされず誰にもすがることも出来ない者を人は異様な目で蔑んで見る。どうすることも出来なかった状況も知らず他人は別世界の汚い物を見るように軽蔑の眼差しで見る。別に死んだって良い…でも何故か生きたい死にたくないという自分も居て、死んでいるのか生きているのかわからなくなるときがある。


朦朧とした意識の中ガサガサと物音に目が覚めた。


すぐ近くに誰かいる。私は身をすくめ何かの気配に備えた。


野良犬や野良猫ではない、明らかに人の気配…


路上生活をしてる者に悪意あるイタズラや暴力を奮う人がたまにいる。そういう人から見れば私達は人間としては見えないのだろう。過去に少年達に追い回された酷い思い出がある。執拗に追い回され石やゴミを投げつけられた。


忘れられない辛い記憶がフラッシュバックして恐怖のあまり身体が震えてる。


今は何時だろうか。暗い車の音もほとんど聞こえないところをみると深夜くらいだろうか…私はじっと息を殺して近くに備えてある鉄パイプにそっと手をかけた。


早く消えて!居なくなって!近寄らないで!私は何も悪くない、何もしてない、頼むから放っておいて!


心の中で懸命に叫んだ。


しばらくガサガサごそごそと物音がしてたかと思うと、人影は静かな足音とともに遠ざかって行った。


完全に気配が無くなったことを確認してから私はそっと辺りを見回した。何かある…白い大きなポリ袋…なんだろう…一体何を置いていった?恐る恐るその袋に手をかけてみた。



真っ暗闇の中微かに見える白いポリ袋の中身の感触はペットボトルと袋に入ったパンのようだ。


しかしハッキリと確認出来ない物に手を出す気にはなれずまた寝床に戻り横になることにした。


一体どういうつもりで置いていったのだろう。ほどこし?親切心?気まぐれな善意?


いろいろ考えてる内に意識が朦朧としてきていつの間にか眠ってしまった。




車の音…人の話し声…まだ頭がボーッとしてる中、河川敷の橋桁の下の寝床で目が覚めた。


確か…夜中に誰かが来たような…ろくに食べ物も食べてないので思考能力が低下していて記憶も断片的だがそれを思い出した。


ムクッと起き上がり横を振り返ってみるとやはり目の前に白いポリ袋が置いてある。


だいぶ明るくなっていたのでハッキリと中身が確認出来る。


ペットボトルのお茶とパンが袋にパンパンに入っている。


急いで立ち上がりその袋まで飛び付きそしてすぐに寝床に引きずり込んだ。


河川敷なので喉の渇きはしのげたが、飢えはどうにも出来ない。


パンが三つお茶が二本…


そのパンを獣がエサをむさぼり喰うような勢いで必死に食べた。


美味しい…ゴミの残飯のなかから漁って食べる物とは違い凄く美味しい…


あわてて食べたせいで喉がつまり今度は喉元まで垂れごぼしながらお茶を飲み流し込んだ。


こんなに満腹感を覚えたのは久しぶりだった。


それにしても一体どういう気なのか気にはなったがとりあえず飢えがしのげて気分が落ち着きまた横になった。


日中明るい内は行動しない。


誰かにこんなみすぼらしい姿を晒す気にはならないし、変に絡まれたく無いからだ。


余計な体力を使わないように横になりながら昨日の謎の気配を思い出していた。


例え気まぐれな善意でも今の自分には貴重な食料だったので有りがたかった。


それにしてもあんな夜中に何故こんなところまで来たのか不思議なものだ。


そんな思いにふけっていたとき急に腹痛に襲われた。




なんだこのお腹の痛みは!痛い!痛くて飛び起きうずくまった。


そうか、空腹の中、急に腹いっぱい食べて胃が驚いたのだろう。


毒物のようなものではないとすぐに思った。


しばらくうずくまって痛みに耐えていると次第に痛みは治まっていき30分ほどすると痛みはなくなっていた。


満腹感と痛みが落ち着いたせいでまたウトウトしてきた。


こんなに満腹で眠くなるのは久しぶりだ。なんて幸せな…


そしてまた眠りに堕ちた。




…また人の話し声?うるさいなぁ…今幸せなんだからもう少しそっとしといてよ…


寝ぼけながらそんなことを思って目が覚めた。


まだ少し明るい。多分夕方くらいの時間帯か…


もう少しじっとして暗くなったらまたゴミを漁りにでも行こうか。


日にちも曜日ももう忘れた。何となく寒さと暑さで季節を感じることくらいしか出来ないほど何年も路上生活をしている。


ゴミ漁りといっても夜にゴミを出す家庭は少ないから自転車でコンビニなどの物置などに捨ててあるゴミを漁るのだから人目にも付きやすいし、下手をすれば通報されて厄介なことになる。


よほどの用心が必要なのだが、仕事と言ってもライバルは多くてなかなかお金にありつくのは難しい。


男性は力もあるしペットボトル、空き缶集めで収入を得る手段があるが女ホームレスだといろいろ面倒な局面に出会うことが多いので人との接触を最小限に抑えたいのだ。


十分寝たのでそのまま深夜になるのを待った。


かなり底冷えする。せっかく蓄えた体力もこの寒さでどんどん失われて行く。


だいぶ夜もふけてきた。


もう少し待って動こうかと思ったその時…


少し離れた所から足音が…


あれは確か、ゆっくり穏やかな足音…そう、昨日訪れた謎の足長おじさん。


またやって来たのだろうか。


私は息を殺してじっとその気配を見守っていた…

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