豚カツ
「なあひろし、その豚カツくれよ。脂身でもいいからさ〜。」
「ああ、分かっー」
…待てよ。なんだこいつの眼は。まるで勝負師。豚カツだけではなく俺すら喰らおうとするが如き鋭い眼。人から揚げ物を貰おうとするだけで人はこうも必死になれるのか?!い、一体どういう意図でこんな…
「おいひろし、どうしたんだ?急に固まっちゃって。」
こいつ、もしかして…誘ってやがる!「脂身でもいい」という発言を間に受けた俺が脂身を渡すのを!ならば俺は奴に肉の部分を…
いや、それすらもブラフかもしれない…あいつは俺が裏を読んで肉を渡すのを望んでいるかもしれねえ…
確かに、友達が欲しい部分を渡すのが友達かもしれない。だが俺は性格が悪い!こいつの望んだ部位を何としてでもあげたくない!そもそもあげたくても、ここまで考えてしまった以上、どっちが正解か分かんねえ!
「ひろし?」
くっ…もう無いのか。50%に賭けるしか手は無いのか?
…いや、ある。たった一つ、この状況を打破する神の一手がある!
「ああ、やるよ。」
「まじ?!サンキュー!!!」
「…なあ、ひろし。」
「これ、衣だけなんだけど…」