死神
こんばんは、お嬢さん。
あなたをあの世へと案内するべく、お迎えにあがりました。
それにしても、美人薄命とは言いますが…まだ若くて美しいのにもったいないですねぇ……。
死んで魂だけになってしまえば、容姿の美醜など関係ありませんけど。
あ、自己紹介がまだでしたね。
わたくし、死神のタナトスと申します。以後お見知りおきを…と言っても案内が済んでしまえば会うこともないのですが。
………なぜって…わたくしはあの世への案内係であり、アフターケアは別の担当がおりますので。
えっ?好きになったからあの世へ行ったあとも会いたい?…わたくし死神ですよ?しかもあったばかりの。
一目惚れ、ですか……。
まぁ、わたくしもお嬢さんのことは好ましく思いますよ。魂的に。
ええ、お嬢さんのような綺麗な魂は好きですねぇ。
綺麗な魂なので、できればあの世へ案内せず、手元に置いておきたいくらいです。
だったら手元に置いてほしいって…いいのですか?あの世へ行けば、生まれ変わることもできるんですよ?
そんなことよりわたくしと一緒に居たい?……もの好きなお嬢さんですねぇ。
はぁ……わかりました。あの世へ無理に連れて行って、綺麗な魂に傷がついてしまうのは、わたくしとしても避けたいですし、あなたは手元に置くことにします。
あの世の人口も増えたことですし、一人くらい居なくても大丈夫でしょう。
一応、上司に報告しておきますね。
………報告、終わりましたよ。お嬢さんを手元に置く許可も取れました。
これで、お嬢さんはわたくしの恋人です。
もう二度と生まれ変わることはできませんが、大切に可愛がって差し上げますよ。
………逃げようと思えないくらい…永遠に、ね……。
お読みいただきありがとうございました。