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幻獣使いでも精霊使いでも無い令嬢は平穏に過ごしたいのです!  作者: 豪月 万紘
第二章 公爵令嬢とお仕事
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可能性と糾問

 兎も角にも私は一旦精霊とのコミュニケーションで精霊力を扱えるか自身で試してみることにした。


日中は人の目があるため実験は真夜中に。

怪しい行動は慎まないといけないが、やれる可能性があるのならばやってみたいというほぼ私の好奇心とワガママだ。


そこに巻き込まれるのはリリアンナとユリス。テレシア様はエミル殿下の近衛兵のため情報が漏れる懸念があるため彼女は除外。出来れば怒られたくないもの…!


深夜にユリスが私の部屋に居るのは不自然なので、ユリスには前もって私の部屋の下で待機してもらっている。

理由はロレイン様が窓から落し物をした、という体裁だ。


テレシア様はこの時間入浴中のはず。そもそも私の護衛二人は日勤で今は勤務時間外。まぁユリスには働いてもらうのだけれど。


私とエミル殿下の居る部屋の廊下には夜もフロリエンスの騎士が数人待機してくれているため夜の警備は万全だ。


だがその目を掻い潜って外へ抜け出すというミッションが今回課せられている。


どうするかとユリスやリリアンナが策を講じていたが私の中ではどうするかなど、はなから決まっていた。


 深夜。

私はゆっくりと窓を開け、ベッドのシーツを繋げたものを外へ放り投げた。そして下へ蔦い静かに地面へ身体を下ろす。だがあまりにもスムーズに動く私を見ていたリリアンナとユリスには呆れられた。普通の貴族令嬢がやれることではないと。


私は普段から森へ脱走する際に音を立てず見つからないように移動しているため、このような隠密行動は得意。


運動慣れしていないリリアンナは途中足元を滑らすが、何とか下へ到着した。

この作戦については後ほどリリアンナからお叱りがありそうだ。彼女の目が、そう言っている。


夜中に練習場に居るなんて不思議な気分だ。

ここは見張りも居ないらしく、極秘実験をするには持ってこいだわ。


妖精や精霊たちと話せる私がどこまでやれるか、その実験。


「さて、始める前にリリアンナ、ユリス。貴方たちには守秘義務があるわね?ここで見たものは誰にも言わない、そうよね?」


「勿論です、ロレイン様」


「言いたいことは沢山ありますし、お止めしなければならないのですがそれも無理そうなので口外はしないことだけお約束いたします」


リリアンナの言葉に苦笑いを浮かべ、私は彼らに少し物陰に隠れるよう指示をした。

誰も周囲に居ないことも確認して私は小さな声で話しかけた。


「風の妖精さんたちはいらっしゃるかしら」


すると淡い緑色の光を放った小さな翼を羽ばたかせた妖精が少しずつ集まりだした。


『なに?』


『最近見かける人だぁ』


『話せるんだねぇ』


「聞きたいことがあるんだけどいいかな?あとこれ好きかと思って持ってきたんだけど食べる?」


最近突然現れた人間に警戒を持ちつつ、妖精はクッキーの甘い香りに吸い寄せられ小さな口でもぐもぐと食べ始めた。


『それで聞きたいことって?』


「私が貴方たちの能力を借りて力を使おうとした時、力を集めすぎて暴走してしまったの。どうしたら正しく力を使えるのか知ってる?」


『精霊力のことかなぁ?』


『人間が使うのも変な話』


『ちゃんと扱い方を知らないと使えないよぉ』


一斉に話し始めたため聞き取れない箇所もあったが、どうやら力を使うには使い方があるそうだ。それはそうだ。馬を走らせるには馬に乗れるだけでは前へ進まない。


「皆はどうやって使っているの?」


『こうなれぇ〜って言うんだよ』


「口に出して言えばいいの?」


『そう!』


「なるほど…そもそもだけど、何で私たちに妖精も精霊も力を貸してくれるの?」


『それはその人間が好きだから!』


『気持ちが伝わってくるんだよねぇ』


私たちが力を使いたい時は大抵、力を貸して、と心の中で願っているはずだ。それが彼らに伝わって今の現象が起こっているのか。

しかも私たちはこの現象がどうして起きているのか、力が溜まりすぎて暴走してしまう原因は何なのかさえ分かっていなかった。


「それって例えば妖精や精霊が複数人の人を好きならもっと力を扱える人が居るんじゃないかな?」


『それはちがーう!妖精も精霊も気まぐれ』


『そもそも面倒。その気まぐれの中で選ばれる人間なんて』


『多いわけないよねぇ』


今まで妖精や精霊たちとは世間話しかして来なかったので今回で分かったことが多い。

まずは溜めた精霊力を扱う実践から始めよう。


「そうなのね、ありがとう。じゃあ話の序盤であった精霊力を扱ってみたいのだけれど、少し力を貸してくれるかしら」


『はーい』


私が心の中でも、力を貸して、と願うと妖精も精霊も集まってきた。


力が溢れない程度というのは分からないけれど…


「風よ、舞え」


そう口に出すと私は風と共に空へ舞った。

高く飛べたが、その維持時間も分からないため私はすぐに


「ゆっくりと下ろして」


と口にした。

風はゆっくりと私を地面へ下ろし、精霊力はふわりと消えて行った。


『成功だね、ロレイン』


『上手くはないけど』


『やったぁ』


「扱い方は分かったわ、ありがとう」


心臓がバクバクしているのが分かる。

正直普通に怖かった。

お昼の事がどうしても頭を過ってしまう。

取り敢えず目的は果たしたので、妖精たちにお礼をしてリリアンナとユリスの元へ戻ろうと踵を翻すと突然人影が視界に入ってくる。


「…何のおつもりでしょうか」


「…そちらが先に怪しい行動をなさっていたのでしょう」


私の目の前に飛び出してきたのは剣を手にしたテレシア様だった。

そして彼女と剣を交えているのはアグリジェントの騎士だ。


「やめろ」


暗闇から聞こえてきた一言でアグリジェントの騎士は剣を弾き、ゆっくりと鞘へ戻した。

テレシア様も鞘へ剣を収めると、リリアンナとユリスが私の元へ駆け寄った。


「ロレイン。君はここが他国である、ということを忘れているのではないか?」


「イザイア殿下…。申し訳ございません、所用で…」


「それが致命的になると、婚約者から注意をされなかったのか?怪しい点が君には多く、私に疑われていると本当に微塵も思わなかったのか?」


――後日話したいことがある


以前エミル殿下の部屋の前で話した時のイザイア殿下の言葉が頭を過ぎった。


「…私は何をお話すれば宜しいのでしょうか」


「全てだ。自身の潔白を示せ」


「潔白?私は罪も何も起こしてなどおりませんが」


ピリついた雰囲気が漂う。

イザイア殿下の威圧的な雰囲気に足がすくみそうだ。


「…ロレイン・フェタリナーツェ。報告によると貴様は夜に誰も居ない場所へ向かって話しかけていたり、夜中にコソコソと動き回っているそうだな」


「いえ、それは違います」


「何が違うんだ?まだあるぞ。一緒に連れてきた怪しい従者だ。彼はアグリジェントで負傷した友人を連れてフロリエンスまで連れ帰ったそうだな」


「それは…」


「言い訳は要らない。これだけ不審な行動をしておいて納得の行く話が聞けるとは思えない。今は現行犯だな。吐け。お前はスパイか?」


「そんな!私はただ…」


「ただ、なんだ」


私は服の裾をギュッと握った。

イザイア殿下のお話を客観的に聞くと、私の行動は大分…いや、とても怪しい。

クラレンスのことは突発的過ぎて、ジノのことはどう説明していいのかは分からない。

だがここで黙っていては、より一層怪しまれてしまう。


「…誰も居ないところに向かって話していたのは、恐らくその目撃者が妖精の姿を確認出来ていなかったから」


イザイア殿下は半笑いで呆れた顔を見せた。

それはそうだ。妖精が見えるのはここでも一部の人間に限られるのだから虚偽を疑うのは当たり前だ。それでも、嘘はついてない。

私はイザイア殿下から目を逸らさなかった。


「はぁ…続けろ」


「私が今こうして夜中に練習場に来たのは、精霊力の可能性を見出して、実証したかったから」


「…ロレイン。では仮に君の証言を信じるとして、その実証は上手くいったのか?」


「はい」


「では見せてみろ」


いザイア殿下の言葉にアグリジェントの騎士はまた剣を抜いた。だがテレシア様は剣を鞘にしまったまま私を見ている。


「…では少し離れます」


「変なことをすれば…分かっているな?」


「そのようなことは致しません」


私は少しだけ距離を取って心の中で、風の妖精、精霊たちよ力を貸して…と唱えた。


すぐに彼らは周囲に集まり、指示が出来る状態まできた。


「風よ、舞え」


私は先程と同じように空へ舞った。

怖いが少し浮いて、また地面にゆっくりと下りた。


「…お前は、本当に何者だ」


「まだ私をお疑いですか」


「ロレイン!」


私の周りの精霊力が消えた頃、エミル殿下が息を切らしながら私の元へ駆けてきた。

寝巻き姿で、薄ら額に汗を浮かべたエミル殿下はイザイア殿下をキツく睨み付ける。


「イザイア殿下、ロレインをお疑いでしたらまずは私と話をいたしましょう」


「…その必要は無い。フェタリナーツェ。今日の所は多めにみてやろう。しかし君の行動は軽率過ぎる。次はない」


「…申し訳ございませんでした、イザイア殿下。寛大なお心に感謝いたします」


イザイア殿下はフンッと鼻を鳴らすと、マントを翻し練習場を後にした。

張り詰めた空気が切れたことで、私は耐えていた足の力が抜けて地面に座り込んだ。


「ロレイン!君ってやつは!あれだけ僕が注意したのに!テレシアまで巻いて何をしてるんだ!」


そう言いつつエミル殿下は座り込んだ私の手を握り、立ち上がらせてくれる。

そんな人の顔を私は見ることが出来なかった。


「申し訳ございません…身勝手でした。猛省しております…」


「お転婆娘だとは聞いていたけれど、今回は見逃せないよ。このまま僕の部屋に来て」


「…え」


「もう全部話して。隠し事はいい。君のおかげで危うくこの案件自体流れる羽目になっていたかもしれないんだからね」


「はい…」


私はエミル殿下にしっかり手を握られ、殿下の部屋へ連行された。



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