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幻獣使いでも精霊使いでも無い令嬢は平穏に過ごしたいのです!  作者: 豪月 万紘
第一章 公爵令嬢の平穏
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私の日常 -2-

 カティとお茶をしながら話を聞くと魔族の有力な情報を耳にした。風の精霊曰く、数日前に前魔王が死去したそう。


次期魔王として王子たち三人の中から最も魔力が強い第二王子が即位する事となったらしが、第一王子は弟が王座に着く事が許せず、暗殺を目論み、第二王子は第一王子の従者によって暗殺された。


第一王子が即位すると、第二王子を支持していた者たちによる反乱軍が第一王子を殺害。第三王子は反乱軍による襲撃で消息不明となったらしい。


「…これは、内部情報漏洩すぎない…?私殺されない?」


『そうね、殺されちゃうかも。気をつけてね、ロレイン』


「そんな無慈悲な」


 妖精も精霊も皆自由だ。話したくなれば話すし、そうでなければ話さないし、どうでもいいのならば放置する。


感心があっちこっちに散漫してしまうから話していても次の瞬間には花を積み出しり、水遊びを始めたりする。


それが清々しい時もあるけれど、大体は不快…というよりもどうしてそうなったのか疑問が生じる。

だがそれが神聖な者達と関わるという事だと割り切るしかないのだ。


『まぁ、私は風の精霊達がお喋りで、勝手に話していくから知っているだけだけれど、まさか魔族も人間がここまで詳細な内部情報を知っているとは思わないわよ』


お茶を飲み干すとカティはごちそうさま、と言い残し姿を消した。すると途端に周りにいた動物や幻獣たちは一斉に逃げ去る。

あぁ、もうそんな時間か…。

カサッと草を踏む足音が徐々に私へ近付いて来くる。


「ロレイン様!!まったく、またこんな所で!!」


 私の侍女であるリリアンナの可愛い声が静かな森に大きく響いた。茶色の髪を三つ編みでまとめ横へ垂らし、果実のオレンジを思わせる瞳は、今は怒りに満ちている。


今年で二十歳となる彼女はもうすぐ結婚適齢期に入るのだが、私がこんな感じなので暫く結婚は考えられないと話していた。


 リリアンナがメイドとして我が家で働き始めたのは十二で、私がまだ六つの時。子爵令嬢である彼女は私と同じく田舎生まれの田舎育ち。


上に姉が二人、下に弟が一人の四人姉弟。

生活は貴族の中でもそれほど裕福ではなかったそうだ。

それに加え上の姉二人が侯爵、伯爵へ嫁いだ為持参金を多く持たせなければならなくなり、家計は一層苦しいものもなった。(姉達は裕福に過ごせているのでリリアンナ的には嬉しいらしい。)


 またリリアンナは自立して働きたいと考えていた。

まるで鳥籠の鳥の様に、家で刺繍や読書しかする事が出来ない姉達をとても幸せそうには見えなかったからだ。


リリアンナは働き口として安定させるなら…と考えた結果、同じ領地内の公爵家へ直談判しに来たのが我が家、フェタリナーツェ家だった。


 私の両親は驚いたらしいが快く快諾し、歳も私と近いという事でメイドからあっという間に私の侍女にまで出世した。


子爵令嬢として教養を受け、持参金を少し頂いていたからと言うのもあるとは思うが、それを除いてもこの短期間で大幅に出世したのだから彼女は言わずとも優秀だ。


 リリアンナの家であるカータス家では弟が家を継ぐので問題は無かったのだが、リリアンナに少しのお金しか持たす事が出来ないとカータス夫婦は両親に頭を下げていたらしい。


けれど、うちの両親はリリアンナの度胸と働きっぷりに感心していたので問題なく彼女をそのまま預かった。


社交界デビューもきちんとしているので、幾つか婚約の打診はあったのだが断っているのが現状だ。


「リリアンナ、声が大きすぎて耳が痛いわ。そんなに大きな声を出さなくても聞こえているわよ」


口を少し尖らせ私はリリアンナへ対抗した。プリプリと怒っているが、それがまた可愛いよ?なんて言ったら更に怒られそうなので口を閉じる。


「いいですか!ここは確かにド田舎です!御屋敷の近くだとしても、もしもの事があったらどうするんですか!」


「一応近くに護衛は居るもん…」


「精霊や幻獣は護衛には入りません!!」


人が居る時は彼らは姿をあまり表さないから私は一人でここへ足を運ぶんです…。


それに私が助けてと言ったら彼らは助けてくれるだろう。

お菓子の義理があるから、義理堅い彼らは何かを差し出せば何かを返してくれる。


暇潰し程度にしか思わないだろうが、助けてくれるなら構わない。


私の場合は皆とお茶をするのが好きなだけだで見返りは求めていないけれどね。



***



 リリアンナにそそくさ片付けをされ、帰宅するとお母様が入口で淑女らしく綺麗な立ち姿で私を待ち受けていた。

口元には開いた赤い扇子を当てていて表情は見えないが、目が笑っていない。


「奥様、ただいま戻りました」

「ありがとう、リリアンナ」


リリアンナは帰宅の挨拶をお母様へ済ませると、私を置いて今日私がお茶会で使った道具を片付けに行ってしまった。

お母様の…無言の圧が怖い…。


「…ロレイン、貴方は何度同じ事を繰り返すのかしら?」


「お、お母様。これはもう直らない習慣といいますか…」


目を合わせないように視線を泳がせる私に、お母様は扇子を閉じ、グイッと私の顎に当てて自分の方へと向かせた。


「いい事?田舎育ちだとしても貴方は公爵令嬢なのよ?殿方に獣臭い田舎娘が好まれるとでも?」


「す、すみません…」


「まぁまぁ、落ち着きなさいソフィア。ロリィ、あんまりお母様を困らせたらダメだよ?」



優しいお父様がお母様を宥め、私を救ってくれた!

この光景はほぼ日常茶飯事なので執事やメイドも護衛騎士も何ともない顔をしているのですが、それもそれで腹が立ちますわ!


 因みにロリィというのは私の愛称。

ロレインと呼ぶ時は大体真面目な話をする時かお説教の時だ。

なのでお母様はロレインと呼んだのは…そういう事だ。


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