エピローグ
※エピローグは三人称となっております。
高山宗助と柳生彩芽の決闘が行われている現在。
スタジアムの外の裏側で複数の鉢巻を付けた男子生徒達がボロボロとなって地面に転がっていた。
「やれやれ、邪魔者の掃除は完了っと」
手に付いた汚れをパンパンと音を立てて払い、倒れている男達を見渡す。
この状況を作った男子生徒……高山の変装をしている服部雄太である。
「ううっ……てめぇ」
隊長と呼ばれていた上級生が震える腕で状態を起こし、ゆっくりと服部を睨み付ける。
それを見た服部は、ため息を吐いた。
「あー、加減間違っちゃったか?
もしかして、エロゲのやりすぎで体が訛ったか?」
「な、なにをふざけた事を言って―――ぐえっ!!?」
「お、今度は上手くいったな」
自身の腕力低下を考察しながら、隊長と言われていた男の腹部に蹴りを叩き込む。
後遺症が残らない絶妙な加減で気絶した男を見て満足げな表情を浮かべる服部。
彼は男達が動かない事を確認するとその場を去ろうとスタジアムの中へと歩み出す。
すると、一人の男が物陰から姿を現す。
「やぁ、雄太。久しぶりだね」
ニコニコと人の良さそうな胡散臭い笑みを浮かべて話しかけてくる細目の男。
男は天龍寺学園の学生服を着ている男子生徒だった。
武人として必要な筋肉が鍛えられていない体格で、その物腰は文化系の生徒達を彷彿とさせる。
そんな笑顔の絶えない彼とは対照的に嫌そうな顔を浮かべる服部。
二人が知り合いなのは明白だが、決して仲のよいわけではないようだ。
「いやはや、徳川家信様ではございませんか。
服部家の落ちこぼれである私に何の用でございましょう?」
「はははっ、そんな嫌そうな顔をしないでくれよ。
同じ学び舎で学ぶ、学生なんだ。
敬語もなしで、気軽に徳川先輩か家信先輩と呼んでくれていいんだよ?」
早く帰れと嫌そうな表情を浮かべつつ、敬語を話す服部。
そして、そんな服部に対して笑顔を崩さずに話す徳川。
「……じゃあ、徳川先輩。
俺に何の用ですか?
さっさと決闘を見に行きたいんですよ」
「あらら、本当に嫌われちゃっているみたいだね……」
「……何もないなら失礼します」
嫌な顔を見ちまったと、イライラしながら徳川の横を通り過ぎて、スタジアムへと再び歩み始めた服部。
「《妖刀村正》の担い手である、高山君の実力が知りたいんだ。
今度は邪魔をしないでね」
ゾクリッ!と背中に氷柱を突っ込まれたような寒気を感じた服部は素早い動きで後ろへと振り向く。
「知っていると思うけど、弱い僕には強い味方が居るからね。
お仕置きされないように気を付けなよ」
猛烈な殺気を徳川の背後から感じ取った服部は冷や汗を流していた。
「や、柳生との決闘だけでは満足できないんですか?」
「いやぁ、対人戦以外にいろんなパターンでの情報が欲しいんだよね」
第三者に殺気を浴びさせられながらも、震える声で徳川に問いかける服部。
徳川は嫌な汗をかいている服部を見ながら笑顔で答えた。
「目的は……なんですか?」
「……秘密だよ」
スタジアム裏の奥へと去って行く徳川の背を見送る服部。
徳川の姿が見えなくなる頃には服部に向けられていた殺気は霧散され、彼の震えはゆっくりと収まっていく。
「高山……どうやら決闘に勝ったとしても、お前の未来は暗いかもしれないぞ」
スタジアムで戦っているであろう悪友に向かって呟く、彼の声は誰にも届くことはなかった。
遅れてスタジアムの中へと入った服部が、観客席への入り口で聞いた九条教諭の勝利宣言は高山の更なる不幸へ導く合図の様に聞こえた。
村正村正(゜▽゜*)♪「新たな戦いの予感がプンプンするぜ!!服部もただのエロゲマニアじゃあなかっ たんだな!! でも……」
村正(´・ω・`)「エピローグに俺の出番がない件について……」
エピローグは次章の予告みたいなモノとなっておりますので短めです。
今後の執筆活動は活動報告にて確認してください。
さて、これにて第一章は完結。
次章は決闘後の宗助の慌ただしい日常と更なる不幸とトラブルを執筆して行こうと思っております。
ここまで読んでくださった読者様方。
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