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天使も悪魔

作者: 生際防衛隊

 何度も大気が弾け、軋み、轟く。

 何かが天空を縦横無尽に駆け巡る。

 どうやらそれは戦っているらしい。

 空に幾多もの魔法陣が浮かび上がり、閃光、吹雪、炎、雷といった強大な力が無数に飛び交う。

 彼等は明らかに人智を超えた領域での戦闘を繰り広げている。

 だが、その戦いもいよいよ終焉の時が来たらしい。

 それらが納まった時、一対の男女が向かい合っていた。

 片や、ボサボサの黒髪に目付きの悪い黒目の男。

 その背中にはカラスを連想させる翼を備えている。

 片や、サラサラとした長い金髪に碧眼の美女。

 こちらの背中にも翼はあるが、男とは対照的に純白の翼だ。

 

「ゼィ……ゼィ…… 何千年もしつこく追って来やがって。このストーカー天使が!」

「ストーカー呼ばわりとは酷い。出来ればフィーネリンデ、フィーネと呼んで欲しいのですが」


 忌々しそうに吐き捨てる男に、涼やかな声色で女が答える。

 彼らは人間ではない。

 黒髪黒目黒翼のブレイブと呼ばれた男は悪魔といわれる存在であり、金髪碧眼白翼のフィーネリンデと名乗った女は天使といわれる存在なのである。

 ブレイブはフィーネリンデの余裕綽々な態度が気に入らなかったらしい。

 更なる悪態を吐くべく口を開く。


「生真面目過ぎて可愛げがないから、何時まで経っても独身なんだよ!

 この生真面目暇人の行かず後家が!」

「誰が行かず後家ですか! というか、誰の所為だと思ってるんですか!

 貴方が毎度毎度チョコマカと逃げ回る所為でしょう!

 

 私だって、私だって、好きで独身でいるんじゃないんです!

 貴方の所為なんだから責任とってくださいよ!」


 流石の天使も行かず後家呼ばわりは堪えたらしい。

 先程までの態度とは一変。

 ブレイブに猛然と抗議し始めるフィーネリンデ。

 その目には若干涙が浮かんでいるようにも見えなくもない。

 

「ハッ! 化けの皮が剥がれて来やがったな! 誰がとるかばーか! ばーか!」

「な!? それを言うならバカって言う方がバカなんですー!」


 一気に痴話喧嘩、いや、子供喧嘩レベルにまで、次元が下がる。

 最早、天使やら悪魔やらの威厳は何処にもない。

 そう、彼らは実は幼馴染なのである。

 優等生なフィーネリンデと、悪ガキなブレイブ。

 種族は違えど、共に育った間柄の彼等にとっては何千年もの間、数えきれない程に繰り返した何時もの風景でもある。

 このまま行けば、頃合いを見計らって、ブレイブが逃げ出すというパターンがお決まりなのだが。

 今回は少しばかり様子が違うようだ。


「っと、下らない時間稼ぎはここまでです! こんな見え見えの時間稼ぎに引っかかってくれるとは、貴方が愚かで助かりましたよ」

「なんだと!?」 

 

 どうやらフィーネリンデがレベルの低い口喧嘩に乗った理由は時間稼ぎが目的であったらしい。

 フィーネリンデの嘲りに、ブレイブが怒気を滲ませた瞬間。

 幾つもの光源が飛来し、ブレイブとフィーネリンデをぐるりと取り囲む。

 そして光が納まった後に現れたのは、華美な装備を身に纏った無数の天使達。

 フィーネリンデは勝利を確信したらしく笑みを浮かべる。

 

「ご苦労さ――――」

「天使長フィーネリンデ様への暴言はそこまでだ!

 大逆の悪魔ブレイブよ! 心して聞くが良い!」


 労いの言葉を掛けようとしたフィーネリンデ。

 だがその言葉を遮り、指揮官らしき天使が威風堂々と高らかに叫び出す。


「フィーネリンデ様は行かず後家などではない、断じてない!

 フィーネリンデ様は…… フィーネリンデ様は……」

 

 指揮官の天使はそこで一旦目を閉じる。

 そして数拍の後、クワっと目を見開き口を開く。


「我らがアイドルなのだ!」

「え? 何を―――――」

「「「その通り!」」」

「ちょ!? 皆何を言っているの!?」


 突然の展開にフィーネリンデは慌てるが、そんな事、知ったこっちゃござらんとばかりに、一糸乱れぬ連携を見せ始める天使達。

 尚も指揮官と天使達の唱和は続いていく。


「フィーネリンデ様は嫁に~~」

「「「行きまっせん!」」」  

「え? え?」

「……」


 フィーネリンデの脳内は??? で、埋め尽くされ、ブレイブの口は完全に閉ざされる。

 そんな二人をぶっちぎりに置き去りにして、天使達の唱和は更に続く。 


「フィーネリンデ様はトイレに~~」

「「「行きまっせん!」」」

「トイレくらいは行くよ!?」


 思わずツッコミを入れるフィーネリンデであるが、奴等の暴走は止まらない。


「フィーネリンデ様の香りは~~」

「「「柑橘系!」」」

「ちっがうよーーー!?」

「フィーネリンデ様の汗は~~」

「「「エリクサー!」」」

「もうやめてぇぇぇ!」


 叫んでいる者達は良かれと思ってやっているのだろうが、叫ばれている本人にとってはゴリゴリと精神を削られていく厳しい状況である。

 と、いうか晒し者である。

 と、いうかメンタルレイプである。

 天使の癖に悪魔の所業である。

 その後も延々フィーネリンデ親衛隊の暴走は続き、連中が落ち着いた頃にはフィーネリンデの表情からは感情が消えさり事後の如く泣き崩れていた。

 その間にブレイブはちゃっかりと逃げ出しており、結局今回も捕まえる事は出来ないのであった。


 

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[一言] 始まらないらぶこめが始まるととても嬉しいです。 待ってます!
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