第7話:アメリカ合衆国第42代大統領、ダラス・フォートワース
「喜屋武さんの台詞ですか・・・。確か・・・、噂はお聞きしています。“ニューヨーク・セントラルパーク連続殺人事件”や“シカゴ・プロバスケットボール選手誘拐事件”。中でも見事だったのは、“大統領暗殺未遂事件”。報告書を読んで感動しました。今回はわざわざ日本まで来て頂き、感謝いたします。私は今回の事件を担当して、解決の手助けを依頼した大阪府警本部・捜査十一課の喜屋武と申します。じゃ、ありませんでしたっけ?」
間髪を入れず喜屋武が、
「惜しいな80点だ」
「え~、ほば合ってるんですよね」
「俺は“大統領暗殺未遂事件”の前に何か言ったはずだよ」
結城は腕組みして、
「“大統領暗殺未遂事件”の前にですか?う~ん・・・、ちょっと待って下さいよ。あっ、確かに言ってました。“ダラスの何とか・・・”」
喜屋武はため息を吐き、
「はぁ・・・、“ダラスの何とか”ね。まあいい、正確には“ダラスの悲劇”の再来さ。これで謎を解くヒントが揃った。まだ理解らないかい?」
ぼんやりとしたものが、結城の頭の中を駆け抜ける。
《もしかして・・・。でも、ちょっと自信ないな。一応、確認してみるか》
思い切って口にした。
「あのー、馬鹿にしないで下さいね。“ダラスの悲劇”のダラスって、街の名前ですよね?人の名前だったりしませんよね?」
「何言ってんだ、結城クン?人の名前に決まってるだろ」
喜屋武は真面目に答える。
「そ、そーですよね。人の名前ですよね。ははははは」
結城の額に冷や汗が浮かび、
《焦った~、ヤバいヤバい》
更に喜屋武は続ける。
「そうそう。アメリカ合衆国第42代大統領、ダラス・フォートワースに決まってるだろ」
「そうでした。アメリカの昔の大統領、ダラス大統領ですよね。当たり前で・・・」
結城がそこまで言った時、喜屋武がプッと吹き出し急に馬鹿笑いしだした。
《え?やっぱり、間違い?マジで?騙されたー》
結城の顔に暗い縦線が入ったのは言うまでも無い。
「くっくっく。結城クン、キミは最高だね。全くを持って、退屈しない。ダラスは都市の名前だよ。アメリカ合衆国南部にあるテキサス州の最大の都市だ」
「それは本当ですよね?」
結城が疑いの目を向けると、喜屋武は余程楽しかったのか軽く目頭を押さえ、
「ああ、本当さ。嘘だと思うなら帰ってから、ネットで調べてみるといい。そのダラスで1963年11月22日、かの有名なアメリカ第35大統領ジョン・F・ケネディがオズワルド容疑者により暗殺されたのが“ダラスの悲劇”さ。話が逸れてしまったね。そう、ダラスも都市の名前。これでキャサリン捜査官が、何故俺の話に頷いたか理解ったかな?結城クン」
結城ははっとして、
「つまり、日本語だろうが英語だろうが都市の名前は同じなので、ましてや、全部キャサリン捜査官達が解決した事件なので、日本語で話しても理解出来た。ですか?」