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ヒトクイー暴食種狩りー  作者: 太陽に灼かれて
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起章【転移編】 第四話「暴食種・白牙」

 ※シンバ視点



【腐乱人、腐乱獣は前述の通り人を摂取するほど身体は強靭になり、外見が元の姿に近づき、知能は進化する。人を喰えば喰う程、人に近づく。腐乱獣も同じく元の姿に近づく。(強化型)】

【こうして外見が元の姿に戻った強化型を暴食種(ランシュ)と呼ぶ。通常生活時の暴食種は極めて元の人間や動物と姿が酷似しており判別が難しいが、人間を見つけると肉体を強靭に活性化(暴食種化)させ、襲い掛かる】


「グルルルル・・・」


 俺達の視線の先で一匹の獣が口からぼたぼたとよだれを垂らしながらこちらを睨んでいた。四足の脚、大きな牙、身体から生えた毛、強靭な尾。

 大きな雌ライオンを思わせるような姿の、腐乱獣の暴食種。

 その口元から覗く巨大な二本の牙から奴はこう呼ばれる。


「し、(しろ)(きば)・・・!!」


 藤司が恐れたような表情を浮かべた。

 あぁ、そうだった。

 そういや藤司は前回の遠征で白牙に殺されかけたんだっけか。


「お前ら、もう一仕事だ」


 俺はグググッと刀を杖代わりにして前を向いた。

 その時。


 ダンッ。


 俺の目の前で、白牙は一気に地面を蹴ってこちらに向かってきた。

 眼の前に迫ってくるのが奴の動きがスロウモーションに見える。

 ―――が、身体が動かない。


 まずい!


 俺は刀を握る手に力を込めた。

 だが既に白牙の爪が頭上から振り下ろされている。


 間に合わない!


「キンッ!!」

「命の(メシア)・・・発動!!」

「仏子!!」


 目の前で仏子が逆手に持った刀で白牙の攻撃を防ぎ口元で笑った。


「やれやれ・・・皆さん動きが固いでござる」


 仏子の持つ刀の柄の部分は木製に変化し、ボゥッと白い火のような物を発した。


「フゥゥッ!!」


 仏子は受け止めた爪を力づくでグバァッと押し戻した。


 たじろぐ白牙に向かって仏子は肉薄しそして―――鞘に納刀した。


「グルル・・・」


 白牙は若干浮いた身体を落ち着かせるように着地した。

 そこに仏子が飛び掛かり空中でグググッと右肩が身体にのめり込むかと言う程上半身を捻り―――

 集中させた力を解放し抜刀、渾身の居合を放った!


居合一閃(いあいいっせん)!!」


 ズバァアアアアンッッッ!!



 仏子の居合が完璧に白牙を捉えた。


「ガァアアアッ!!」


 だが―――奴は倒れない。

 受けきった。

 そして白牙の反撃―――

 の暇を与えないと言わんばかりに白牙の3方向から影が飛び出した。

 美麗、藤司、早希による迫撃。


 ザンッ!!


 袈裟懸けの斬撃が白牙を捉える。

 しかし―――


「硬い・・・ッ!」

「斬れないわね・・・」


 それでも奴は倒れない。

 固い筋肉に覆われた奴の身体は通常の斬撃では致命傷を与えるに至らない。

 精々皮に傷をつける程度だ。


「ガァアアアアアアアッ!!」


 通常の斬撃(・・・・・)ならな。


「下がっていいぞ・・・お前ら」


 ビキビキ・・・。

 血管が膨張し、体に力が漲る、と同時に獅子の毛皮が舞い降りた。

 そして刀を横一線、連撃に戸惑う白牙の顔面を渾身の一撃が捉えた。


「獅子神輿ッッッ!!」





 ※ハレタ視点


「グルァアアアアアアアア!!」


 獅子神輿を発動したシンバが白牙を捉えると、奴は血をまき散らしながら一吠えしそのまま林の奥へと戻っていった。


「リーダー!さっきの声は!?」


 ドタドタドタ、と基地の中から白兵の皆が現れた時には既に白牙はその姿を木々の奥に消していた。


「いや・・・終わった」


 シンバはゆっくりと刀匠級の面々を見渡した。


 戦いは数秒、それぞれが放ったのは一撃。

 たったの一撃。


 だが疲労の色を浮かべる彼らの顔色が、その一撃を決める事がいかに困難であるかを物語っている。


「休もう」


 ふらふらな足取りのシンバに肩を貸す。


 ボロボロだった。


 壁に激突した時の怪我か、頭からは血が流れていたし、服には土や砂がまとわりついて汚れている。


「ちくしょう・・・ちくしょう」


 シンバは歩きながら数回、遺体の方を振り返りつぶやきを繰り返した。

 虚ろな独り言は俺にだけしか聞こえていない。


「師匠・・・」


 この人は正真正銘のリーダーだ。

 ボロボロのシンバと歩きながら俺は決意した。


 もっと強くなろう。

 せめて自分の命は自分で守れるくらい。

 そして確実に元の世界に戻るんだ。

 俺は強くならねば。





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