結章【決戦編】 第十六話「指揮者として」
※ハレ太視点
早希から現在の状況を聞いた。
俺はいつのまにか「リーダーになる」と言っていた。
なんでだ。
そうか。
シンバの口が最後に「まかせたぞ」と動いたからか。
リーダーの最も重要な仕事は何か。
それは仲間を励ますことだ。
士気の向上。
意識改革だ。
俺はまず景気の悪い表情を浮かべている早希の胸を後ろからそっと揉んだ。
悲しい顔をされた。
ツッコミもなくただ悲しい顔をされたので俺も若干悲しくなった。
もうこの基地は終わりかもしれないなと思った。
すぐに俺は起き上がり、皆にリーダーになる、と宣言して回った。
その間、俺と一緒にふっさに担がれていたという転移者の小恵比寿は、まるで俺専門の介護士のように世話を焼いた。
「ハレ太君はリーダーなんだから頑張ってもらわないとね!」
俺が一人で歩けなかったせいもあるが、おそらく心細いのだろう。
彼女はふっさと俺と常に一緒にすごした。
そんな中、小恵比寿の肩を借りながらリーダーになると仲間に言うと皆は驚きの反応を返した。
どうやら俺が塞ぎ込むなり落ち込むなりすると思っていたらしい。
確かに以前の俺だったらそうだったかもしれないがなぜか落ち込む気にはならなかった。それはシンバの「任せたぞ」という言葉に依るものかもしれないが、今はそんな事より考えないといけない事がある。
シンバと、内田。
この最高戦力であり、精神的支柱でもあった二人がいなくなった事だ。
これが最も大きな問題だ。
士気の低下は免れない。
俺と同じく、小恵比寿がなんとか明るくしようと奔走しているが、それだけで前を向けるほどのショックではないだろう。
そう、思ったが―――。
「修行するわよ」
刀匠級のみが集まった訓練室でいの一番に早希が口を開いた。
「私たちは強くならなきゃ」
力強い瞳からその決意が見て取れる。
「早希ちゃん・・・」
「ハレ太、仇を討ちたいと思ってるのはアンタだけじゃないわ。私も、いや皆がそうおもってる。へこたれるような軟弱者はいないわよ、ねぇ皆!」
「うん、あんちゃん一人にはかっこつけさせないよ!」
「皆で頑張るでござるよ」
仏子が細い目で笑いながら、俺の肩をたたいた。
良い根性してるぜ、皆。
「ハレ太君・・・皆で受け継ぐでござる。リーダーの意思を」
「仏子さん・・・皆・・・」
「でも・・・湧きませんね。私たちがこれ以上強くなるイメージが」
ピシ・・・と美麗の言葉に仏子の表情が固まった。他の皆も同様だった。
「私たちは元の世界で各々の技を極めた専門家・・・!伸び代がある所にはとっくに手を入れて、ます・・・よね?」
「ぐ・・・」
確かに・・・。
美麗の実直な意見に、俺も含めて皆歯痒そうに唇を噛んだ。
彼女の意見は的を射ている。刀匠級の皆は生き残るため、生存率を少しでも上げる為に日頃からやれるだけの事はやっているのだ。
それを怠るような者ははなから生き残りなどしない。
「・・・」
皆が口を閉じ、結論が出ないままその日はお開きとなろうとした。
まずい空気だ・・・。
これではギリギリのところで持ち堪えている皆の士気が・・・。
師匠ならこんな時どうしてたっけ。
「・・・皆聞いてくれ!」
「「「「・・・え?」」」」
その日俺達は、皆で同じ部屋で寝ることにした。
「ハレタ君・・・僕を取り合わないでよむにゃむにゃ。・・・」
「あっ・・・だめだよ。ハレタ君。皆が見てむにゃ・・・」
東吾と早希は俺の心配など気にも留めずすやすやと眠っている。
正直いまさら親睦もクソもないが遠征隊皆のチームワークを深めるために寝ると宣言したら二人も一緒に寝ると言い出してきた。
多分彼らなりの俺に対する配慮だろう。
にしてもこいつらは何の夢を見ているんだ。
「ハレ太君・・・一人で背負わないでね」
隣の布団で横になっていた小恵比寿が俺の方を向いていた。
ぱっちりおめめが可愛い。
「あぁ・・・わかってる。ありがとな小恵比寿」
「別にこんなの普通だよ・・・」
「・・・」
なんだこれ。
少し照れながらぼそぼそと口を開く彼女が急に可愛く思えた。
彼女の目を見つめたまま手を握ると、何もいわず握り返された。
俺は目から何かがあふれ出ようとして、何とか堪えた。
殴られないのだ。
感動の一言に尽きる。
「あんちゃん達・・・やっぱりそういう関係だったんだ」
「要君、これぐらいは可愛いものですよ、シンバだったらもっと大胆に・・・」
「そうでござるよ、あれはまだましでござる」
「おおおっ!!」
ガバッと起き上がった。
藤司と美麗と仏子がニヤニヤとこちらを見ていた。
「ふんだ!」と聞こえるのは多分早希の声だ。
「何見てるんですか!!」
「あんちゃん達が見せつけてたんじゃないか」
小恵比寿は真っ赤な顔で寝たふりをしている。
「こえびちゃんも乙女ですねぇ」
寝たふりをする小恵比寿の頭がボンッと音を立ててさらに真っ赤になった。
「まぁまぁ、ここは若いお二人をそっとしておいてあげるのが先輩の役目でござるよ」
2人はあぁそうだねと笑いながら再び横になった。
「こ、小恵比寿ごめん・・・」
尚も寝たふりをする彼女に小声で言う。
「べ、別にいいよ。はい、手」
真っ赤な顔をしながら差し出す小恵比寿の手を握る。
なんとも言えない気持ちで胸が満たされた。
こんな気持ちは元の世界でも経験がない。
一人じゃないという充実感。
前の世界で一応成功を手にした俺に、友達だ味方だと口を開く者は周りに少なからずいた。俺はそれに一時的に高揚したりもした。
だがそれはちがう。
一緒になって同じ目標の為、力を合わせる。
互いが互いを自分と同じくらい、大切にする。
これが、本当の仲間ではないだろうか。




