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 数日後に、家族から手紙が届きました。わたしの髪のことなど何一つ触れていない、当たり障りのない内容に、拍子抜けの心地がいたします。


「何も言わないのは、聞かなかったことにしたか、あるいは娘は遠くへ嫁にやったものとみて諦めているかのどちらかと思うわよ」


 世間話のついでにそのような話になりますと、簡単な事情を聞きました佐恵子さんがそんなことを言いました。


「じゃあ、どちらなのかしら」

「後者だといいわね」


 「思うわ」ではなく、願望で返されてしまいました。確かに、佐恵子さんが私の養父母のことを知るわけでもないのですから、正直な答えだと苦笑いするしかありません。


「心配なら、藪入りのときに帰ればいいじゃない。もっと働いてお金を稼ぐんだって踏んばらなくたって」


 私には何の臆面もなく帰る勇気は持ち合わせていませんでした。些細な噂や尖った視線と仕草にも振り回されてしまうのです。とっくに「き遅れ」と見なされているでしょうし、藪入りごとに帰りにくくなっているのでした。


「藪入りの時のお給金っていつもより高いのだもの。いつもと違って気軽に外出できるし、スミさんも助かると言ってくださっているのよ」


 今年の正月は、スミさんと金井さんとご一緒させてもらって、初詣に出かけてまいりました。旦那様たちは休養を取られるために別荘に行かれます。別荘には世話をする管理人を置いておりますので、旦那様の特別なお言いつけでもない限りスミさんや金井さんといった上位の方も旦那様にお供することもありません。

 夏にはてんてこ舞いで働きました。優さまは大学時代のご学友と遠出されておりましたが、広いお屋敷の管理と旦那様のお世話をお手伝いするだけでも大変なのです。スミさんの日々の多忙さを感じました。


「今年の正月もそうするつもり?」

「少し前までは帰ろうかなと思っていたけど。やっぱりやめると思うわ。髪も短くなったし、お父さんたちを驚かせるのは、ね」


 うぅん、と佐恵子さんは悩ましげに呻きました。


「ご家族と上手くいっていないの? 相談に乗るわよ」

「そんなわけないわ。父も母も私に甘いぐらいだもの」


 私の声の調子からみて、佐恵子さんはわかったわ、と訳知り顔で快活な声を上げます。


「家に帰ったら、縁談が待っているのでしょう。気が進まないのよね。わかるわ」


 本当に縁談が待っていたのなら。それに越したことはないと思います。誰かに望まれてお嫁にいくには、とうに嫌な外聞がついてしまいました。よほど力のある家であるか、それでも気にしないとおっしゃってくださる奇特な方をこの帝都で探すしかないのでしょう。

 これから先、私の田舎が変わるとは思えません。昔からの確固とした繋がりが尊ばれ、余所者とはみ出し者にはこの上もなく冷淡になれるのです。数十年前もそうだったのですから、これから数十年もそうなのでしょう。


「そんなところよ」


 私は佐恵子さんの顔からそっと目を逸らしました。


「今年は私も残ろうかしら。そろそろ親が結婚しなさい、ってうるさくなってきてしまって」

「嫌なの?」

「だって、親を楽させてあげるような縁談が来ないのだもの。あと一年だけ働いて、それでたぶん幼馴染とかと結婚することになると思うわ」


 佐恵子さんは私のことには気づきませんでした。私はきっと羨ましくて……とても浅ましい顔をしていたというのに。


「じゃあ、今を楽しみましょうよ。スミさんも喜ばれるでしょうね」


 本当はスミさんではなく、私が喜ぶのです。ただそれは言えませんでした。心のうちに溜め込み続けていた堰が壊れてしまう気がして。


「そうね。私もそうするわ。年末年始よろしくね」

「ええ、よろしく」


 私はきれいに笑えていたでしょうか。そればかりが気がかりです。



 それから少し経って。

 みやさん、とふいに遠くの方から私を呼ぶ声がして、振り向きますと。


「月子さま」


 私がお辞儀すると、月子さまはこちらにゆっくりと近寄ってこられました。そのときの私というのが、客室の掃除の後でありましたので、佐恵子さんと掃除用具を片手に歩いていたのです。ちらりと佐恵子さんを見ますと、心得たように頷かれます。


「スミさんには言っておくから。お相手をしておきなさい」

「うん」


 佐恵子さんのささやきに頷きます。ひったくられるようにして、掃除道具が佐恵子さんの手に渡りました。


「では月子さま、このみやがお相手いたしますので、何かありましたら、お申し付けください」

「ええ。どうもありがとう。行っていいわ」


 佐恵子さんが行ってしまいますと、月子さまは私へにこりと微笑まれました。


「お出でになられていたとは、知りませんでした。優さまに会いにいらしたのですか」

「ええ、そうよ。伊豆のお爺様からお土産をいただいたものだから、こちらにもおすそ分けしようと思って。美味しいシベリアだから優さまにも食べていただきたくて」

「シベリア?」

「知らない? カステラの間に羊羹を挟んだものなのよ」

「はあ、そんなものがあるのですね」


 私が感心していますと、ふふ、と月子さまが控えめに微笑まれました。


「優さまは忙しいとおっしゃって、すぐ席を立ってしまわれて。きちんとお話しできなかったの。としごもりのこともご相談したかったのに。みやさんは優さまのご予定をご存じかしら」


 月子さまの問いにお答えしたい気持ちは山々だったのですが、いいえ、と首を横に振ります。


「スミさんは何もおっしゃっていませんでした。次にお出でになるまでに、お聞きしておきましょうか」

「お願いしてもいいかしら。助かるわ」


 月子さまのほっそりとした白い手が胸の前に当てられました。長い睫に覆われた瞳が奥で揺れ、ふと影が差しました。


「駄目ね、私ったら」


 少しの沈黙の後、ぽつりと零されました。零れたのは言葉ばかりではありませんでした。眼元から零れ落ちた真珠の粒がきらきらと光りました。


「優さまの妻になるというのに、私はあの方のお言葉が怖い。遠回しにお伺いするしかできないのよ」


 私は途方に暮れてしまいました。

 月子さまはとてもお辛そうで、きれいでした。けがれのない美しいものばかりでつくられたような月子さま。私のような使用人の前でも涙するほど、無防備でいらっしゃる。優さまは限られた清浄なところでしか育たないこの花のことをご存じなのでしょうか。月子さまは、私たちがそっと撫でるようにして触れなければ粉々に壊れてしまうような方なのです。


「優さまは月子さまのことを気にかけていらっしゃいます。ご自分の奥方になられる方ですもの、気に掛けないはずがありません。月子さまが望めば、優さまだって応えてくださいます。真摯な心はきっと届きますよ。信じましょう」


 私は無力なのです。このような気休めを申し上げることでしか、月子さまをお慰めすることはできません。しかも、定かではない、浅はかとも思える気休めなのです。


「そうよね、ありがとう」


 なのに、月子さまは袖で目尻を拭いながら、頷かれたのです。そのまま、私の手を躊躇いもなくきゅっと握ってしまったのです。季節のせいか荒れてしまってがさがさになって節くれだった私の手は、とても醜く見えました。


「月子さま、いけません」


 私の声は嘘のようにか細かいものでした。私は月子さまに対するとき、弱くなってしまうような気がするのです。


「いけないの。私たちはもうお友達みたいなものではなくて」


 月子さまにそう返されてしまっては、私の躊躇う気持ちなど、塵のように軽くなってしまったかのようです。「お友達」なんて恐れ多くて口にできませんが。


「いけないことはありません、月子さま」


 私は気づけばそのようなことを申し上げていました。


「月子さまのような方が触れるには少々不恰好ぶかっこうなので、恥ずかしいのです。どうかお気を悪くなさらないでください」


 そんなことはないわ。月子さまはゆっくりと首を横に振られました。


「働き者の手だもの。働き者の娘さんは、みなに好かれるのでしょう?」


 胸の底がくすぶります。そうだったのでしょうか。私の運命をある意味決定づけてしまったあの縁談の顛末(てんまつ)の前は。

 没落してしまった名主の一族は、はたして他の村の者からすれば、どう接していいのかわからないという思いが、胸の内にあるのではないでしょうか。かつては頭を下げていても、今は困り果ててしまう、扱いづらい一族です。養父母である叔父叔母は本家筋ではないので、そこまでには至ってはいないでしょうが、それでも家柄がものをいうのは、田舎でも都市でも変わりありません。


「実家の方では娘はみな、働き者です。働き者でないと、いい嫁入り先が見つかりませんから」

「そういうものなのね」


 殊更冗談めいたように軽く装いました。少し砕けた言い方にも、月子さまはまるで気にしておられないどころか、興味深そうなお顔をなさって、相槌を打たれます。

 世間話をするうちに月子さまがだんだんと晴れやかな面持ちに変わっていくにつれて、ほっと安堵する気持ちを覚えたのでした。



月子さまとのお約束を忘れないうちにと、仕事の合間にスミさんに優さまのご予定をお聞きすると、スミさんも頬に手をあてて、困ったように私を見返されました。


「わたくしのほうでも、以前お聞きしたのだけれど、そのときはまだ決めていないとおっしゃっていたのですよ。月子さまがお知りになりたいのももっともなのですが」

「金井さんもご存じないのですか」


 いや、私も残念ながら、優さまのご予定は知らなくてね、とその場におられた金井さんもおっしゃいます。


「そうですか」


 スミさんも金井さんもご存じないのならば、直接お伺いするしかありません。本来ならば、このお二人がなさるのが筋なのですが、お二人ともこれから旦那様のお世話をなさるのだとか。月子さまが次に来られるのがいつか分からない以上、早く知っておかねばと焦りも募ります。


「いいでしょう。わかりましたから、そわそわしないで、今のうちに聞いていらっしゃい」


 スミさんが、ほう、と溜息をつかれました。


「ありがとうございます。行ってまいります」


 私は一礼します。本館に向かう足は、いささか急いていたことでしょう。揺れる髪の隙間から冷たい風がさっと一撫でします。ああ、もうそろそろ冬になるのでした。

優さまはお部屋にいらっしゃいませんでした。お仕事で外出したというお話も聞いていませんでしたので、私はおそるおそるあの図書室に向かったのでした。

 おそるおそる、と申しますのも、もちろん以前起きたこともありますが、優さまを前にするから、ということもあります。私に傘を差しかける代わりに雨で濡れた優さまを思い返さないことはありませんでした。

最近、意味もなく不安になるのです。地についていたはずの足が、いつの間にか宙に放り出されてしまうことを私は恐れているのです。特に優さまの瞳が何気なくこちらに向けられましたときには。

目が合えば、その瞳がひたりと私を捉えるのです。他の誰といようとも、私だけ個人としてみていらっしゃるように思えてきます。よく目が合うのです。たったひとつの仕草が今までと違うのです。他人の視線をないものとすり抜けていたお方が、どうして。

 蝙蝠傘を私に差し出してくださった優さまは……いいえ、気のせいでしょう。私は穿ちすぎなのです。あの方の行動に疑問や詮索をしないのが、使用人として正しい姿なのです。スミさんのように、旦那様を心の底から信用して、求められることを先回りしてお仕えするにはまだほど遠い私でも、それぐらいのことはわかります。


「失礼いたします」


 扉を叩いて、中に入ります。まず見えたのは、真剣な面持ちで書物に目を通される優さまです。細い銀の鎖のついた眼鏡をおかけになって、本棚近くに立っておられます。本日は外出されていたからでしょうか、背広の上着を脱いだくらいのきちんとした洋装をなさっておいででした。


「優さま、少々よろしいですか」

「何だ」


 てっきり没頭していたものと思っていましたが、優さまは間髪入れずにおっしゃいます。ぱたりと本を閉じられて、眼鏡を外されます。優さまの冷たいお顔が私の前で露わとなります。ともすれば伏せたくなる目を無理にあげなければなりませんでした。


「今年の年籠りはどうなさるご予定なのか、お伺いしてもよろしいですか」


 金井さんとスミさんもとても気になっているご様子でしたので、と付け加えます。一介の平の使用人が尋ねるのも順序に反しているのですが、忙しい金井さんやスミさんに頼まれたのだと仄めかします。

 優さまは怪訝なお顔をされたあと、再び書物を広げました。今度は眼鏡をかけられませんでした。


荻野おぎのの令嬢から言われたか」


 私は幾度もせわしないまばたきを繰り返しました。


「なぜおわかりになられたのですか」


 思わず疑問を口にしてしまい、はっと手を当てます。不必要な質問は、主人の気分を害することになるのだと教わっていたというのに。


 優さまは私の不始末には気づかれなかったようで、ごく普通に返事をなさいます。


「荻野侯爵家から、年籠りの打診が来ていたからな」

「その返事をいまだ保留にしている。お嬢様は親にせっつかれているのだろう」


 お嬢様、だなんて、大層他人行儀な呼び方です。この方はやはり月子さまを。……月子さまはお幸せになれるのでしょうか。この方と添い遂げることで本当に。


「月子様は知りたがっておいででした。それに私たち使用人の方からいたしましても、そのつもりで支度をしなければなりませんので、早目にお返事をお聞かせください」

「ああ、スミに伝えておこう」


 優さまはそのまま、何事もなかったかのように一人きりの読書に戻られるはずでした。これまでしてきたように使用人の顔も確かめず、己を取り囲む空気から出てこようとなさらないのだろう、と私はいつものごとくそう思い込んでいたのです。なのに、優さまはそのようなことをなさらない。

 あの方は、私に向かって、読んでおられた書物を差し出されたのです。


「お前に貸してやろう」


 私の視線は、差し出された高級そうな赤い装丁の書物から、差し出している優さまのお顔へ移ります。優さまの神経質そうな厳しいお顔と向かい合いました。嬉しそうでも不機嫌そうでもありません。朝のお見送りの際に、居並ぶ使用人たちを横目に颯爽と通り過ぎていく表情とまるで同じように見えたのです。

 気づけば手に重みがありました。私の手はあずかり知らぬうちに別の意志を宿してしまったらしく、書物に向かって伸びてしまったらしいのです。

 私が書物をしっかと胸に抱え込みますと、優さまはかすかに唇を開かれました。そのお顔を眺めながら、私はお聞きします。


「私に、質問を許可していただけますか」

「聞こう」


 優さまは頷かれました。


「なぜ、私にお貸しくださるのですか」

「気が向いたからだ」

「なぜです」


 優さまはたまらなく嫌そうに息をつかれました。


「その知りたがりは、スミに戒められなかったのか」

「いいえ。今までは自分で抑えておりましたので」


 知りたいものを知りたい、と思うのはいけないことでしょうか。確かにこれまでは旦那様方のことなど知る必要がないと思う限り、踏み込みませんでした。それが使用人として越えてはならない分であると心得ていたからです。しかしそれが己に関わるものとなれば、ふみこみたくもなってしまうのです。


「貸してくださるのはとても嬉しいです。こちらの蔵書をずいぶん前から読んでみたいと思っていました。ありがとうございます」


 本を読むのは好きでした。仕送りして残ったわずかなお金は時折の外出の際に本を買うのに費やします。弟もそれを知っていますので、自分が読み終わった本などはこちらにも送ってくれるのです。


「優さま、ありがとうございます」


 私はこのときすっかり忘れ去ってしまったのです。目の前におられる優さまは、いつも使用人には目もくれない方でもなく、以前においては私にもとても厳しく冷たく当たられた方ではないと。

 まるで古くから知る大層親密な人を目の前にしているように、私は笑み崩れたのです。


「そこまで嬉しいことか」


 優さまはさっと顔を背けながら、そうおっしゃいます。右手はさかんに胸ポケットに入れられた眼鏡をいじっておいででした。


「お前には到底その本は読めないだろうに。英語なのだぞ」


 よく見ろ、とさらにおっしゃるので、私はぎゅっと力いっぱい抱え込んでいた本を改めてまじまじとみやります。書名は、私のよく知らない文字で綴られておりました。


「まあ、そうでしたか」


 私は間抜けにもぽかっと口を開けて、どうしましょう、と呟きました。


「私、英吉利の言葉を存じ上げないのです」

「そうだろうな」


 優さまは呆れておりました。代わって私は体を縮こませてしまいます。


「誰もお前をそんな才女だとは思っていない」

「では、どうして」


 意地の悪い所業としか思えませんでした。


「開けばわかる」


 ためらいつつも、私の手はぺーじを繰ります。文の合間に次々と現れる不思議な絵たち。その絵に覚えがありました。自分の声が別のところから聞こえる心地がいたします。


「あの時と、同じ本なのですか」

「そうだとも。父から譲り受けた私の蔵書だ」


 優さまがあの時私が眺めふけっていた本をご存知であったことが不思議でした。今更ながら、手が震えてまいりました。私はもしかして、とんでもないことをしていただこうとしているのではないでしょうか。

 けれど、この本を手放そうとはどうしても思えなかったのです。本に釣られてしまっています。何と浅ましい心でしょう。私はすでにこの本に何が書かれていることに魅せられておりました。


「私、金井さんのところに行ってまいります」


 口をついて、そんなことを申しておりました。


「は」


 優さまは目を剥かれました。


「金井さんは英吉利イギリスの言葉の辞書をお持ちでしたから。お借りしないと!」

「あ、ああ。そうだな」


 優さまは戸惑ったように二度三度と頷かれました。ふと後ろの本棚を振り向かれ、大層分厚くて黒い本を二冊抜き出されました。


「これも持っていけ」


 有無を言わさずに開かされた手にはさらにその二冊の重みが加わりました。一瞬両足で踏ん張らならなければならないほどです。


「和英の辞書と文法書だ。左馬助さまのすけに借りるまでもない。高価だから、早く読んで早く返すように」

「は、はい。わかりました。お借り致します」


 お腹に力が入るために声も低くなります。流石の重さに私の足は、若干よたよたと頼りなくなってしまいます。厚さの割に、重いのです。特に文法書と思われる本がとびきり分厚いのです。英吉利の言葉を知るにはこれほどの本を読まなければならないのでしょうか。少しだけ気が遠くなりかけてしまいました。

「では、もう早くいけ。扉は開けたままでいい。私もすぐに出て行く」

 優さまはそっと目線を本棚に戻されます。これで用件は済んだということなのでしょう。

 はい、と私はどうにかこうにか返事を致します。


「あ、あの、優さま。もう一つだけ質問が」

「なんだ」

「スミさんは御存じなのですか」

「あれは承知している」


 きっぱり言われてしまっては、私はもう何も申し上げられませんでした。


「失礼しました」


 本を抱え直して、軽く一礼します。深々とするべきなのでしょうが、本を取り落としてしまいそうでしたので、できませんでした。


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