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偽りの招待  作者: Than Nen
出会い
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8/37

屋上8

『まず、鍵のことにについて』

『これはある先入観の問題だったんだ』


『ある先入観とは??』


『それは、サボリが君だけだと言うことさ』

『昨日君は一人で屋上に来て、僕にわざとらしく鍵を見せた』

『それで君は、自分は単独行動だと無意識的にアピールをしたんだ』


『それは何故かしら??』


『共犯者が居れば、鍵を消すことなんて簡単だろ??』

『君は内扉に鍵を挿しっぱなしにしておけば良い』

『その後時間を稼ぎ、共犯者が内扉に挿さっている鍵を回収する』

『時間稼ぎとは、キスのことかな』

『そうすれば鍵が消えるってわけさ』


『証拠はあるのかしら??』


『証拠はない』

『ただ、その仮定で話を進めれば全てが繋がるんだ』


『では、聞かせて貰おうかしら』



そう、これは仮定の話。


僕の推理が間違っていれば全てが無意味になる。


しかし、物的証拠がない以上、理で押すしかない。


この時を逃せば、彼女と関わることは無くなるだろう。


今は多少強引でも、話を進めるしかない。



『一つ目は僕を知っていること』

『それはその共犯者から聞いたことなんだろう』

『二つ目は今の話』

『三つ目は…僕が屋上に居るというのを知っていること』

『僕は用心深いって言ったよね??サボる時も細心の注意を払う』

『もちろん、尾行なんて真似はさせないさ』


『三つ目が矛盾してるんじゃないかな??』


『そう…尾行なんてさせない』

『しかし、屋上に居ると言う事を他人に教えておけば??』


『その教えた人が分からないじゃない??』


『普通なら僕が誰に言ったかなんて盗聴器を仕掛けない限り不可能さ』

『ただ、一つだけその人物が分かる方法があるんだよ』


『その方法とは??』


『僕が屋上にいると伝えた人物と、君の共犯者が同じだとしたら??』



そう、彼女の共犯者が僕の知人だとすれば全て繋がる。


簡単な話だったんだ。


僕を知っていたことも


鍵を消したことも


屋上にいることも


全て共犯者の存在があれば可能。



『全て仮定の話でしょう??』


『ああ、仮定の話さ』

『けど、それが答えだ』


『なら話にならないわ』



彼女は僕の横を通り過ぎ、屋上から出ようとした。


しかしその時、携帯の着信音が鳴る。


その鳴った携帯の主は…。



『待った椎名さん!!今、物的証拠が出来上がった!!』



僕は少し大きめの声を出して、彼女を呼び止めた。


今までとは違う声のボリュームに彼女は少し驚き、こちらを振り向いた。



『これを見てもらおうか!!』



そのメールとは



【椎名さんと協力して神崎君を騙してごめんね】



と、言う内容だった。



『いつの間に!?』


『今さっき、君と会話してる時さ』


『メールを送っている動作なんてなかったわ!!』


『ミスディレクション』

『手品とかで使われるテクニックさ』

『君と会話するときに、あえて君の目の前に立ち目線を僕の目に合わせた』

『身長は僕の方が約15cm程高いから、必然と君の視線は上に上がる』

『その間に左ポケットに入れた手でメールを打てば良い』


『画面が見えないのにどうやって打ったの??』


『簡単な話さ。頭の中で携帯電話の配列を確認しながら打てば良い』

『一文字、一文字、指でボタンを確認しながら打てば誰にだって打てるだろう??』


『ええ、理屈はそうだわ。けど、私の注意を引きながら携帯の配列を頭で確認し』

『一文字ずつ確認しながら打つことなんて一般人じゃ無理だわ』


『言っただろう??僕は紳士じゃないんだ』

『こんな無駄なことを習得する為に時間を割いてるんでね』


『その無駄な事が、今回生きたわけか』

『そんなあなたには敵わないと言う事ね…』


『そうでもないさ…』


『どういうこと??』


『メールをよく見てごらん』


『…なるほど。私はまんまと引っ掛かったわけね』



見せたメールにはfromの部分が空白だった。


通常、相手からメールが来た場合誰から来たのか分かる仕様になっている。


登録されてない相手でも、メールアドレスは必ず表示される。


そう、このfromの部分が消えてると言うことは、メールの新規作成画面。



『相手からの返信を待つのは色々とリスクが高いからね』

『ならば自分で文章を作って、本文だけを見せれば良い』

『着信音は君が屋上から出る直前に手動で鳴らせば良いだけさ』

『君は振り向かない限り、僕の姿が見えないからね』

『堂々と操作させてもらったよ』


『…紳士的ではないわね』


『ああ、僕は紳士じゃないさ』



そう会話を交わすと、いよいよ本題に入る。



『なんで君は僕を試した??』


『それは…』



今までとは明らかに違う空気。


それは、重く、重く、感じ取れた。

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