現在5
『そうね…とりあえず、【NG】について聞きたいわ』
『…そうだね。とりあえず僕の知っている情報を教えようか』
そう一言言うと、ポケットから電子タバコを取り出す。
フィルターを口に当て、スッと息を吸う。
すと突然彼女が言葉を発する。
『…ねえ神崎君、今口にくわえているのは何味なのかしら??』
『ああ、これは…』
フィルターに書かれている文字を確認して、彼女に伝える。
『これはフルーツ味だね。それがどうかしたかい??』
『いえ…、深い意味はないわ。ただ気になっただけよ…』
『そう??なら話を始めようか』
その瞬間彼女の目が一瞬細くなったのを見逃さなかった。
(ああ、なるほどね…)
そう自分で納得すると、僕は話を始めた。
『まずは【NG】の幹部について話そうか』
『ええ、お願いするわ』
『幹部は僕の知っている限り、4人いる』
『1人目は大須蓮冶』
『こいつが【NG】を表で実質的に動かしている。まあ創設者だしね』
『そして2人目がヤマト。こいつが裏で【NG】を動かしていると…言われている』
『言われている??』
『そう、ヤマトは表舞台に立たない。こいつの情報は殆ど表世界には出回らないのさ』
『なるほどね…』
『それがかなり厄介でね…。今ヤマトはどんな事をしているのか、どんな人相なのか、さっぱり分からないんだ』
『それよりも厄介なのが3人目のキリヤと言われている人物』
『まず、男なのか女なのかもさえ分からない。ただ、【NG】の幹部ということしか分かってない』
『何故、神崎君はそのキリヤという人物が幹部だと言うことを知り得たの??』
そう、何故情報が何もない人物が居ることを知り得たのか…。
この疑問はどんな人間でも抱くであろう。
しかし、この質問に答えるのは少し慎重にならなければいけない。
まずは彼女、椎名と言う人物が未だに不審な点があること。
もう一つはこれを知った経緯を言いたくないからだ。
『それは企業秘密さ…』
『なるほどね…。お互いまだ信用に足りる関係ではないと言うことね…』
彼女は不敵に微笑んだ。
そしてお互いに信用に足りる関係ではないという言葉。
これは私もまだ信用していないと言う意味であろう。
『まあそんな所さ。3人目の話は以上と言う事で問題ないかい??』
『ええ、問題ないわ』
『最後に4人目、この人物が【NG】のリーダーだと言われている…』
『リーダー??と言うことは、他の3人はあくまでも幹部だと言うこと??』
『ああ、たぶんね。僕が抜けてから色々あったのだろう。憶測だけど、大須やヤマト、キリヤはこの4人目の人物の片腕ということになるんじゃないかな??』
『…イマイチ【NG】の内部事情が掴めないわね…』
『まあ、ここまで調べるにも相当なエネルギーを使ったんだけどね』
苦笑しながらそう話す。
今言ったことは全て本当のことだ。
勿論、他に隠していることはある。
しかしそれは現時点でいう事ではないだろう…。
『ちなみにその4人目の名前は分かっているの??』
彼女のその問いに、少し間を空けてから答えた。
『…名前は、マリア』
『!?』
僕の発した言葉に、場は緊張に包まれた。