現在
『私の話はあなた程深刻な問題ではないけど、良いかしら??』
『構わないよ。君の話だから聞きたいんだ』
『それじゃあ話すわね…』
そう切り出すと、彼女はゆっくりとした口調で話し出した。
『私には、恭子という名前の双子の妹がいるわ』
『恭子はそれまで優しく、常に自分より他の人間を考える人間だったの』
『けど、約3年目ぐらいから様子がおかしくなったわ』
『他人を騙し、自分の理の為なら他人を蹴落とすことも多々…』
『…3年前』
『そう…3年前。丁度あなたが事故にあったころじゃないかしら…』
『偶然か…それとも…』
『さっきの神崎君の話を聞いて、もしかしたらと思ったけど…』
『神崎君が【NG】を抜けてから恭子が【NG】に入ったとしたら…』
『事故の実行犯ってまさか…』
『それは考えすぎかもしれないわね…』
『けど、可能性がないわけではないわ…』
『確証が無いうちに疑うのはよくないよ』
『今後調べれば分かることさ』
『ええ…そうね…。それで神崎君に協力して欲しいことがあるの』
『恭子から事情を聞きだして、妹を【NG】から脱退させたいの!!』
『それは大仕事だね…』
僕は苦笑しながらそう言った。
【NC】メンバーならいざ知れず、【NG】メンバーとなると話が変わる。
暴力団や裏企業、【NC】メンバーを敵に回して更に【NG】メンバーを敵に回す。
これは個人がどうこうできる次元のレベルではない。
警察も迂闊に近づくことができない絶対防壁を築いている【NG】までたどり着くことは不可能に近いだろう…。
けど、それは一般人の思考。
『確認するが、これ以上踏み込めば、命が無くなるかもしれないよ??』
『あなたがいれば大丈夫だと思うの。こうして危険を冒してまであなたに接触したのは、仲間が欲しかったからなの』
『あまり僕に期待しなほうが良いよ。一度は落ちるところまで落ちた人間だからね』
『あら??落ちた人間の出来ることは這い上がるだけよ』
『厳しいね』
『そうかしら??私は優しいと思うけどね』
『一度死を見た人間は、命を大切に扱うことができるわ』
『あなたならきっと、自分も私も死なすことなく妹を助けることが出来そうだわ』
『買いかぶり過ぎだよ…。君の熱意は僕が持ってた偽の【マリア】を飲んだ時から、知っているさ。それ程までに妹さんを大切に思っているのだろう??』
『…そうね。あなたの言うとおりだわ』