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偽りの招待  作者: Than Nen
過去
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21/37

過去5

『なあ、神崎。考え直す事はないか??』


『ああ、僕は【NG】を抜けて、普通の学生に戻る…』


『そうか…残念だ…』



大須と、そんな会話を交わす。


演技なのか、本当なのか、判断はできないが大須は酷く落胆した様子だった。



その会話は僕と大須が交わした最後の会話だったんだ…。



そして、夜になり僕は奈津に呼び出された。


最近奈津は何をしていたのだろうか??


そんな疑問が頭を支配するぐらい僕は冷静になっていた。


僕が初めて【マリア】を飲んだあの日から奈津とは疎遠になっていた。


心のどこかで罪悪感から奈津を避けていたんだろう…。


しかし、何故奈津は半年も時間を空けて僕に連絡してきたのか??


よりによって【NG】を脱退宣言した日に…。


それは悪い予感以外何物でもなかった。


ざわつく体。


気が付いたときには走り出していた。


奈津のもとへ。


最悪の事態を考えながら、それでも止まらない体。


そうだ…僕は奈津が好きなんだ…。


そんな当たり前のことを忘れていた。


忘れようとしていた。


【NG】なんて馬鹿な組織を作ってしまったために、関わらないようにしていたんだ。


今日奈津に会えたら2人で普通の時間を過ごそう。


薬も何も無い平穏な日々へ戻るんだ…。



『伸君、早かったね』


『全速力で来たからね』


『けどね…遅かったんだよ…』


『…え!?』



奈津の言葉の意味が分からなかった。


しかし、続く言葉でようやく理解できた。



『伸君はね、今日いなくなっちゃうんだよ…』


『…ああ、そうか。やっぱり僕はいなくなるのか…』



理解していた。


今日僕の命がなくなることは。


けど、不思議と恐怖は無かった。


奈津の顔を見たらなんだか気持ちが楽になったんだ。


最後に奈津に会えた事で僕は決心できた。



『もうすぐ【NC】のメンバーが伸君を消しにくるわ』


『…分かった。それよりも奈津は大丈夫なのか??』


『私は大丈夫だと思うよ。心配しないで!!』



そう言った奈津は今にも泣きそうな顔をしていた。


昔から表情がすぐ顔に出るんだよな…。


トランプなんかやっても表情ですぐジョーカーがどこにあるか分かるし。


そのくせ誰に対しても平等に優しく接するし。


僕のような馬鹿をずっと面倒見てくれたし。


いつもニコニコしてる奈津を泣かした僕に対する罰ってことかな。



ああ…死にたくない…


そう思ってしまう。


決心した心が揺らぐ。


最愛の人を目の前にするとこうも弱くなるのか。



死にたくない…。



溜めていた感情があふれ出す。



『死にたくない…』


『伸君…』


『死にたくないよ…!!』



僕は奈津に抱きつき泣いた。


大声で、感情を全て爆発させた。



そして、後悔。


今までの人生を後悔する。


奈津と一緒に居たかった。


時間が許す限り2人で居たかった。


この時が永遠と続けば良いのに。


そんなことを願っていた。



無情にもそれはあっという間に終焉を迎えることになる。


まるでカーチェイスをする車のようなスピードで一台の車が僕達に向かって突っ込んできた。


何故…??2人居るのに…??


瞬時に理解した。


僕だけを消すんじゃない。


奈津と2人同時に消す気なんだ!!


何故そのことが考え付かなかったのか…。


奈津を生かすメリットなんてあるわけないじゃないか!!


さっきのは演技。


奈津は自分も死ぬことを知ってて、あえて嘘を言ったんだ。


僕に心配をかけないために。



そんなことを思った時にはもう遅かった。


車は目の前に迫っていた。



『伸君!!』


『!?』




【ダンッ!!!】








…気付いたら僕は病院にいた。


何故僕は助かったのか??



衝突する瞬間、奈津は僕のことをかばったんだ。


それで僕に対するダメージが軽減され、死に至ることはなかった…。


奈津は自分の命を犠牲にして、僕を守ったんだ。




僕は涙が止まらなかった…。


ずっと、ずっと泣き続けた…。

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