屋上2
翌日。
僕はまた昨日と同じ時間に、授業をサボリ屋上に来た。
何故??
決まっている。
彼女と会話することだ。
昨日は途中で彼女が退場したから言えなかったが、彼女の会話には矛盾している点が何点かある。
『どうしてサボっているの??』
この発言をした後、一度僕に釘を刺し、質問にはこう答えた。
『サボリですか??はい、サボリです!!』
これがおかしい。
何故サボっているのか??という問いに対して、サボリですか??はい、サボリですなんて答えるだろうか??
一般の学生なら会話の意図を勘違いして、こう答えてしまうことがあるだろう。
しかし、彼女は優秀。
こんな単純な間違いをするだろうか??
それはない。
昨日の一件で彼女の人を疑う能力は身を持って経験している。
となれば、意図的に間違えた答えを出した。
或いは何か他の意図があった。
これだけでは推測しても答えははっきりとでない。
しかし、終盤の会話で彼女はミスを犯した。
今まで一つだけ小さなミスを犯しただけだったのに。
もしもこの終盤の会話が無ければ最初のミスもここまで強く印象に残ることは無かったであろう。
『そんなにサボらないかな』
『今日はなんとなくね』
『僕もそうなんだ。屋上は閉まってたはずだけどどうやって入ったの??』
『それはね…』
そう言うと彼女はポケットから鍵を取り出して、僕のほうに見せてきた。
『合鍵??』
『そう合鍵。屋上の鍵をこっそり盗んで複製したの』
そんなにサボらない彼女が何故屋上の鍵を複製したのか??
そもそも学園の鍵を無断で持ち去ったことがバレたら大問題である。
良くて停学・悪くて退学。
そんなリスクを犯してまで屋上の鍵を複製した理由とは??
そして最初のミス。
サボっている理由を間違えたフリをして、答えなかった。
この二つが導き出すものとは…。
答え合わせの時間が来たようだ。
【ガチャ】
屋上の扉が開く。
風が少し強くなる。
黒い髪をなびかせた女性
2年D組の椎名さんが昨日と同じように僕にに喋りかけてきた。
『ねえ、こんな屋上で何しているの??』
しかし決定的に違うことがある。
それは…
不気味な笑みを浮かべていることだ。
さあ、矛盾には気付いたかしら??とでも言わんばかりに。