お天道様は見ている
沢山のお話の中から見つけて下さってありがとうございます
前作と同じ世界観で数年後のお話となっております
単品でも読めますがご興味がありましたら前作も合わせてお楽しみください
誰かが呟いた
要領のいい人ばっかりいい目をみるのってズルくね
また誰かが呟いた
生活保護受けてる人が自家用車に乗ってタバコ吸ってるのを見た
俺は必死に節約して生活しているのにズルくね
また誰かが呟いた
遠くに住んでるからって近くに住んでいる自分だけ親の面倒見ないといけないとかズルくね
また誰かが呟いた
俺達は働いた分の税金納めているのに節税とかいいながらこっそり裏技使ってるのってズルくね
そしてまた誰かが呟いた
せめて真面目に頑張っている人達が報われる世界にならないかな
「誰も見ていないと思ってずるいことはするんじゃねいぞお天道様は見ているんだからな」
職人だった父の口癖だった
頑固者で仕事に厳しい人だったからか今の風潮に合わず跡継ぎもいないまま工房を畳むことになった
「畳屋だからな畳むのはお得意ってもんだ」
「そんな強がって他に方法はなかったの」
「今時事業継承とか言ってるけどな工場での大量生産の価格競争には勝てないし畳自体使ってるところも少なくなったから俺と一緒に消えるものなんだろうよ」
「そんなものかな」
「大体お前も跡継がなかったじゃねえか今更だろ
なんだよ身内に嫌がられる仕事ってよ」
「それはごめん他にやりたいことがあったんだよ」
「まあ仕方ねえか俺も仕事を言い訳にお前達とあまり話さなかったし好きじゃないとこんな仕事続かないからな」
「それでもやっぱり勿体ないよ
お父さんの培った技術やここにある道具類とか何かに活かせないかな」
「知らねそんな知恵があったら今でも仕事続けてるわ」
「商売ってのは真面目にやってたらいいってもんじゃないわな俺は世の中の流れについていけなかったんだよ」
そう言って工房を見つめる父の背中が小さく見えた
「真面目なだけだとダメなんだろうか
ずっと畳作りして趣味も何もない父が仕事やめたら一気に弱ってしまうんじゃないかな
どうにかならないかな」
自分のスマホのなかにいるAIに愚痴ってみる
(お父様はまだお仕事を続けたいのですね
続けられない理由を考えて続けられるように手助けしてはいかがでしょう)
「まずは体力がなくなって自分の生活自体不安になっているのと工房の維持にかかるお金を稼げないのが大きいかな
お母さんはもういないし」
(工房をおやめになってどうされるのでしょう)
「どこか田舎の家でも買ってゆっくり暮らすと言っていたなあ多分強がりだと思うけど」
(一人での生活にご不安があるのなら同居されてはいかがですか
工房畳むときに道具類は落ち着くまでレンタルコンテナに一時預けて家賃の安い別の場所が見つかってから再始動できるようにしてはいかがでしょう)
「それはないな
お父さんと同居はむりだよ家の家族はたまに会うくらいならいい顔できるけど一緒に暮らすとなると絶対ストレスからおかしくなる俺でも無理なんだから」
(それでは一度役所にある技術保存課に相談されるといいかもしれません)
「そんな課あったっけ聞いたことないんだけど」
(3年ほど前に設立された課で事業継承を主に担当している課ですお父様の技術は保存される価値があるかと思われますので相談してみましょう)
「そうだな相談だけでもしてみるよ」
(お悩みが軽くなることをお祈りいたします)
早速役所に相談しに行ってみた
「この度は技術保存課へご相談ということですが
どのようなことでしょうか」
「父の営んでいる畳屋ですが父の跡を継ぐものもいないため閉めることを考えておりますが他に何かいい方法がないかと思いまして」
「さようでございましたか
お父様は仕事を続ける意思はあるのでしょうか
例えば事業主ではなく被雇用者になっても構わないでしょうか
現在生産業は機械化が進んできたため個人事業として成り立たなくなってきております
しかし皆様が今まで培ってきた経験や技術はきちんと残すべきものと我々は考えております
そこでお父様みたいな方を技術保存センターにて生活していただいて仕事として畳作りの技術をデータとして残す手伝いをしていただけないでしょうか」
「あの申し訳ないのですが父はただ真面目に仕事をしていただけでそこまでの技術はないと思うのですが大丈夫でしょうか」
「もちろんでございます
ただ言い方は悪くなりますが技術職の方を集めた施設への入所とお考え下さい
普通の施設と違うところは仕事をすることで収入を得ることができる点です
入所の際に今お住まいの場所は引き払っていただくことになりますがお使いになっていた道具類はそのままお持ち込みください
預貯金関係も入所の際にポイント化させていただきます
フリーポイントにされるかライフポイントにされるかは自由に決めていただいて構いません
また今後のこともありますので入所される場合アバター保険に入っていただくことになっておりますのでご了承下さい」
「アバター保険加入は義務なんですね」
「そうですね行政のサービスを受ける場合加入は義務としております何かあった時に問題にならないための手続きとご理解下さい」
「分かりました一度父と相談してみます」
「よくお話されてみてください」
「今日は話を聞いていただきありがとうございました父にとっても自分にとってもいい話だと思うので次回は父を連れて現地で詳しくお話を聞かせてもらえないでしょうか」
「かしこまりました資料をお渡しいたしますのでどうぞご検討下さい」
「お父さん技術保存センターというところに行ったら仕事を続けることができそうだよ
1回見に行ってみないか俺もついていくし」
「なんだそのセンターってやつは」
「国がやってるところでさ
お父さんみたいな技術職の人で仕事は続けたいけど 一人で生活するのが難しくなった人を援助する施設みたいだよ食事とか何かあった時に誰か側にいてくれると俺も安心だしお父さんも経営とか気にしなくてただ仕事だけしていればいいんだって」
「お前騙されてないか畳作っても売れねえんだよ
そんなんで暮らせるわけないだろうが」
「そのあたりは俺もよく分からないけど国がやってるんだから変なものじゃないと思うよ話だけでも聞きに行ってみようよ」
「まあ話くらいは聞いてみてもいいか」
こうして俺と父は技術保存センターへ見学に行くことになった
「こんにちは本日見学させていただきます山本です
個人で畳屋を営んでおりました」
「こんにちは技術保存センターの職員をしております黒田と申します
施設の案内をさせていただきますご質問がございましたらいつでもお尋ねください」
「よろしくお願い致します
この様な場所は初めてでしてまずは全体を見学させてもらっていいですか」
「そうですね
早速ですがこの建物の案内から始めさせていただきます
まずは技術保存するための専用ブースがございます
こちらの機械をセットして仕事をしていただくことで 筋肉の動き力加減を記録していきます
環境や体調でのぶれもあるので仕事の入りはこちらから始めていただきます
その後作業ブースにて仕事をしていただきます
申し訳ありませんが作って頂くものはこちらで指定させてもらいます
もし自分で作りたいものがございましたら就業時間以外の自由時間にお願い致します
お作りになったものは月に1回一般開放する時に販売することができて売り上げはポイントとして加算されます
仕事としての収入は正直高くはありませんが生活費がかかりませんのでそこまで不自由にはならないかと思います」
細かいコードのついた手袋とヘッドセットとモニターとよく分からない機械が置いてある部屋と
父の作業場のような見慣れた機械とかが置かれた部屋を案内され説明を受けた
その後生活する部屋や食堂を見学していく
部屋にはトイレとベッドとクローゼットとテレビ台と机とイスは置いてあり少し広めのホテルの部屋くらいはあったお風呂は大浴場まで行かないといけないが父が暮らすには十分と思われた
「そしてこちらが一般開放される建物になります
純粋な日本家屋は今では貴重なものとなりまして
メンテナンスも大変なことから月に1回のみ開放することになっております
日本庭園や瓦障子襖欄間等普段見ることのできないものを見ることができる貴重な機会として海外から視察に来られるかたもいらっしゃるんですよ」
「うわぁまだこんな建物残っていたんだ
ほらお父さん畳のいい匂いがするよ」
「本当だ足の裏が喜んでらぁ畳は気持ちいいなあ」
「いかがですか
これから世界に向けて日本文化を発信する拠点として
この様な建物を建てていくのですがご協力頂けないでしょうか」
「俺も若くないからそんなに沢山は作れねえけど
それでよかったらやってみたいな」
「じゃあお父さんここでやってみるかい」
「ああもう一花咲かせてみるか」
「ありがとうございます
それではこれからご入居されるための手続きのご説明を致します
今までお使いの機械や道具類はお持ち込みください
生活していく上必要なものはこちらの案内手続きの書類をお渡しいたしますので参考にしてご用意していただけるとスムーズに引っ越しできるかと思います
大きな荷物の搬入は施設スタッフがお手伝いいたしますのでご希望の日にちが決まりましたらご連絡下さい
こちらは入所申込書となります
まずはこちらにご記入お願いいたします
アバター保険加入手続きはいかがされますか
こちらで手配することも可能です」
「難しいのはよく分からないな
お前どうしたらいいか分かるか」
「お父さんのことだから好きにしたらいいけど荷物まとめるのは俺も手伝うよ保険は何日か通ったりするみたいだから施設の方で手配してもらったほうが簡単にすみそうだからお願いしたらいいよ」
「そんじゃお願いするか
保険に関してはそちらにお任せします
それでは家に帰って準備してまた連絡させていただきます
これからよろしくお願いします」
「この施設には山本さんのような職人さんが活動されてますので楽しく過ごせると思います
私達も一緒に過ごせる日を楽しみにお待ちしてますね」
こうして父は家と畳屋をたたんで技術保存センターへと引っ越していった
「どうだい父さんこっちの生活は慣れたかい」
「そうだなあ最初データを記録するっつー機械やら慣れないことが多くて大変だったけどよ
似たような人が多くて助け合ってなんとかやってるよ
最近は施設開放日に畳は売れないけど畳表を使ったマットとか小さい畳使った花台とか作ったら面白いんじゃないかとか思ってんだよ
売れるかは分かんないけど他の職人達と話す機会も増えて今は楽しく暮らしてるよ
食い物はあまり自由じゃないけどフリーポイント使えばビールくらい飲めるし作らなくていいのは楽だなあ」
「楽しそうでよかったよ
なんか困ったこととかないかな俺にできることならするから言ってよ」
「ないと言いたいところなんだけど
済まねえがアバター保険の内容を更新したいんだよ
そのまま維持だとそんなにポイント使わないんだけど内容を変更する時はちっとばかりお金がいるみたいでな出してくれると助かる」
「金額にもよるけど多分大丈夫だよ
じゃあ今度更新しに行こうか」
「すまないな最初は強がってここで暮らすと言ったけど内心はお前に捨てられたかとがっくりしてさ
アバター保険の入力もどうでもいいやって適当にしていたんだ
今は心持ちも違ってきたんで今残しておきたいものにかえておきたいんだよ」
「そう思っちゃうのは仕方ないよ
実際うちで一緒に暮らそうって誘えなかったし
俺もお父さんが楽しそうで救われたよ
近いうちに更新手続きの予約入れるからね」
施設の職員にアバター保険の情報更新の手続きもできるか確認したところ施設内で可能ということなのでお願いしておいた
「現在山本様のアバター保険は1番低価格のものとなっております
基本意思疎通ができなくなった場合の希望もお亡くなりになった後のアバターとしての情報提供機能もありません
あるのは全部施設の判断に委任するというものです
これがどのようなものに変更されるかによっては結構な金額がかかるかと思われますのである程度ご予算をきめておかれることをおすすめいたします」
「どのようなものがあるのでしょうか
一般的なものを参考に教えて下さい」
「そうですね一般的なものとして
このアバター保険は自分が亡くなったあと残された人が困らないように必要な情報を保存し質疑応答することで性格つけられたアバターが都度本人だったらこう対応するであろうことを代行するサービスとなります
その中には起きてはいけませんが突然の事故とかでお亡くなりになった場合の対応や認知症や意識が確認できない状態になったときにどうしたいかの希望を伝えることあとはこの様な施設に入所された後ポイントがなくなった時どうするか等決めておくことができます
この保険での意思表示がない場合は施設というか国の判断にそった対応となります
使用されるアバターを何にするかとか情報提供サービス機能の期間をどれだけ設けるかとかで支払う金額は変わってまいりますし他にも迎えたい最後の日をどうするかにも色々ございます
お父様がどこをかえていきたいのかよくお話されて下さい」
「そうですね希望を聞いておきます
あまり無茶なことは言わないと思いますがこの予算を超えるようでしたら父を止めていただくよう伝えていただけますか」
「かしこまりました
それでは今月末の木曜日はいかがでしょう
一般開放日ではございませんので落ち着いて手続きを行うことができるかと思います」
「その日は父が嫌がらなかったら私も付き添いますのでよろしくお願い致します」
「お父さん今日は保険の情報更新の日だけどちゃんと考えてきたかい」
「まぁなちゃんと紙に書いてきたよ
俺が死んだ後の最後の挨拶を残しておきたいんだ
ここに来る前は母ちゃんもいないしお前も別に所帯もっているしもう死んでないから生きてるみたいだったんだよ
こっちにきてから気が合う友人もできて色々あーでもないこーでもないと話しながら仕事するのが楽しいんだ
いつ死んでもいいと思ってたんだけど今は出来るだけ生きていたいと思うよ死にたくないなぁ」
「何弱気になってるんだよらしくないよ
これから一花も二花も咲かせて世界中にお父さんの畳を広めていってくれよ」
「まぁそんなわけでこれから保険の更新にいってくるわ恥ずかしいからついてこなくていいよ
適当に帰ってくれていいからな
今日は金出してくれてありがとうまた気が向いたら寄ってくれや」
「それじゃこの辺り散歩して帰るよ
お父さんも元気でねまた電話もするし会いに行くから」
「あぁじゃあな」
「お父様はこちらのブースにて保険の更新を行います分からないときはスタッフがついておりますのでご安心下さい」
「よろしくお願い致します
この辺りは結構色々な建物があるんですね
技術保存センターとか日本家屋の他にはどのような施設があるのですか」
「そうですね生活が困難な人を受け入れる建物が多いですね技術保存センターもいくつかございます
技術職にも色々ございますから
すぐにイメージしやすいのは高齢者の方のための施設になりますが他にも沢山の人が生活されてますよ」
「そうなんですね全く知りませんでした
父のことがなかったら気にもしていなかったかもしれませんね」
「当事者にならない限り意識されないかもしれませんね
私達は出来るだけ困っている方達が声をあげられそしてその声を拾っていくよう体制を整えていっているところですがまだ難しいですね」
「でも私達は救われました」
「助けを求めること相談することに抵抗があるかたもいらっしゃいますしそもそも何処に訴えたらいいのか分からない人達もいらっしゃいます
どうか山本様もお近くに困っていらっしゃるかたがおられましたらどうぞ近くの助け合いセンターや役所に相談されるよう声かけていただけますか」
「そうですね気がついたら話をしてみたいと思います
そして援助を受けるのにはアバター保険に加入しないといけないのですか」
「その通りです
そして生活はポイント制になります個人識別カードと連携して管理することになりますね
詳しい説明は都度しておりますが現在行政サービスは個人識別カードとアバター保険がないと成立しない状態です
よろしかったら山本様もアバター保険ご加入されませんか」
「考えておきます
今日は色々興味深いお話ありがとうございました
父のことよろしくお願い致します」
「もちろんでございます
本日はありがとうございました
またいらっしゃってくださいませ」
「そういえば個人識別カードっていつの間にか持ってるのが当たり前になっていたな
昔は全員加入させるために色々サービスしたりしていたらしいけどな」
「そうねえ今は生まれた時から発行しているものね
カードに入ってる情報とか盗まれたら大変なことになるからとセキュリティに凄く力入れているのよね
だってこのカードがあったら何でもできるんだもの
紛失しないように埋入したりする人もいるでしょ
銀行との連携もされていて国にお金の動きを把握されているみたいでいい気はしないけど真面目にしていたら問題ないし
使うときは本人確認にDNA情報との照らし合わせがあるから簡単に偽造されないから安心ではあるわね」
「埋入する時は本人以外の第三者の立ち会いのもと行われるから成りすましも出来ないらしいし
噂では監視カメラや個人のスマホのカメラとかの映像も国の統括AIが監視しているとか
見守られてるんだか監視されてるんだか分からないけど普通に生活しているのに不自由はないからどうでもいいか」
「そういえば俺この前アバター保険に加入してきたんだけど以前だったら入っている生命保険とか預貯金の管理とか俺が死んだ後の後始末の手配とか今は簡単にできるんだよ
このカードを役所に提出すると処理が終わるんだから助かるよな」
「あなたアバター保険に入ったの
私も興味あったから誘ってくれたらいいのに
何かあった時安心よね」
「ああお父さんも入ってるし施設の人から聞いた話だと情報を維持して更新しないときはそんなにお金もかからないからエンディングノートやリビングノートみたいな感じで準備しておくのがいいかと思ってな」
「結構入ってる人増えたよね
作家さんとか社長さんとか備忘録みたいな感じで利用してる人もいるみたいよ」
「昔活躍していた漫画家さんにアイデアは沢山あるのに描く時間が残っていないと言っていたという話を聞いたことがあるよ
推理小説家さんとか最後の謎解きを残して死んじゃったら悔いが残りそうだし
誰かが仕上げるのをアバターが確認するとかできるようになるのかもね」
「色々な利用の仕方がありそうだけど俺は普通のコースにしてるからあまり期待するなよ」
ある日施設から電話が入った
「先程お父様がお亡くなりになりました
作業中に倒れられまして病院に搬送されましたがそのまま意識が戻らずお引き取りになりました
本人のご希望のため延命処置は行いませんでした
あらためまして心よりお悔やみ申し上げます
つきましてはこの後のことですが本人の希望のまま進めても構わないでしょうか
お別れにいらっしゃいますならご遺体は付属病院横の斎場に安置されております」
「本当ですかすぐに向かいます本人の希望を私も確認したいので少し待っていて下さい」
「お父さんが亡くなったらしいこれから行ってくる
場所は ああ施設のある敷地内にある病院の横の建物か
お前はどうする」
「さすがに行くわよちょっと待って子供達にも連絡するから」
「あとは終わってからでも大丈夫だろう」
そして2人で斎場へと向かった
「黒田さんご連絡ありがとうございます」
「この度は突然のことでさぞかし驚かれたことでしょうまずはお父様のところへご案内致します」
斎場の前で施設の黒田さんが待っていたので父のもとへ連れて行ってもらった
いつもの作業着を着たまま寝ているみたいな様子に涙が溢れてきた
「もっと生きて仕事するんじゃなかったのかよ
悔しいなぁせめて俺が来るまで待っていてくれよ」
「申しわけありませんご本人様のご希望でしたので」
「ああ文句言っているわけじゃないのですが父には言っておきたくて」
「それではこれからのことをアバターを交えて進めていただきたいと思います」
「はいよろしくお願い致します」
モニターに父のアバターが映し出される
「俺は死んじまったのか病気か」
「作業中に倒れてそのまま逝っちゃったんだって
ところでお父さんのアバターってドワーフなんだ」
「ドワーフかなにか分からないけどAIに任せたらこうなった最後まで仕事できたんなら上等だな
これからのことだけど俺の希望としては施設の仲間にお別れの挨拶はしたいけど葬式みたいなものは必要ないからしないでくれ
施設に移ったときに関係者には挨拶しているから後からハガキで知らせるくらいで十分だ
あとは骨と墓だけど今は納骨堂みたいなところで骨じゃなくて個人識別カードを納めるところがあるんだってポイント整理したらそれを納めてくれたらいいよ
本当なら墓じまいとかしておかなきゃいけなかったんだけどすまないなお前に任せるよできれば母ちゃんの個人識別カードをこっちに持ち込んでいるから一緒に納めてくれや」
「分かった何とかするよ
お別れの挨拶は俺たちも一緒に聞かせてもらうけどいいよな子供達も来ると思うよ」
「へー彼奴等来てくれるんだ折角だもんな
じゃあ次は挨拶の時に会おう」
「お父様のアバター保険はこの後の最後の挨拶で終了となりますアバターデータは個人的な要素は除外したものは今後バーチャル空間でのNPCのAIとして利用されますご了承下さい」
「最近私もアバター保険に加入したので存じております職人だった父に似合うアバターでしたね」
「この施設に入所されている方は割りとドワーフになる方が多いですね」
「そうなんですね職人だからでしょうか」
「そうかもしれませんね」
「では最後の挨拶の日は今週の日曜日でも大丈夫でしょうか子供達も来れると思いますので」
「かしこまりました
それでは今週の日曜日に施設の食堂で皆様集まって挨拶の場を設けましょう」
「よろしくお願い致します
それじゃお父さん本当にこれでいいんだよね
もう話は聞けないけどちゃんと希望通りにするからね
では父のことどうぞお願い致します」
週末子供達と妻と施設へと向かい父の最後の挨拶を聞きに行った
「じいちゃんあんま俺達と遊んでくれなかったから亡くなったって聞いても実感わかないんだよなぁ
ばぁちゃんは運動会とか応援に来てくれたり遊びに行ったら小遣いくれたりしてたから亡くなった時悲しかったんだけど
じいちゃんは怖かったイメージが強すぎる」
「お前達にはそうだったかもなぁ
作業場は子供が入れる場所じゃなかったしじいさんは仕事ばっかりで子供の面倒をみるような人じゃなかったからね」
「それでもここでの生活は楽しんでらっしゃったみたいじゃない今日はお父様の最後の挨拶でしょ
わざわざあなたにお願いしてまで追加した挨拶なのだからしっかり聞きましょうね」
「そうだねあのお父さんが何を言うのか気になるな」
「お待たせいたしました
只今より故山本誠司様から最後の挨拶をお届けいたします
皆様ご清聴のほとよろしくお願い致します」
「あー最後の挨拶って緊張するな
皆様こんにちは一緒に仕事をしていた山本です
この度はお世話になった挨拶をさせていただきます
この施設に入った時は慣れない機械を使ってのデータ入力作業に四苦八苦しておりました
手伝ってくれた佐藤さん川村さんありがとう
おかげで何とかできるようになって後から入ってきた加藤さんには俺が教えることができるまでになりました
皆俺と同じように人気のない物作りの職人で俺達は日陰者さと愚痴りながら仕事をしていましたね
でもあの日本家屋を見ると誇らしい気持ちになったものです
俺達の仕事は日本文化を支えているんだ
世界に認められる凄い仕事をしているんだと
俺は畳作りしかしてこなかったけど皆の仕事を見ているうちに色々やってみたいと思うようになりました
この歳になっても夢を見てもいいんじゃないか
ここの人達と力を合わせたら凄いものがてきるんじゃないかと
皆のおかげで最後まで楽しく過ごすことがてきました
ありがとう
そして俺の後を継ぐものはいなかったけど俺の作業データは記録されてこれから職業訓練やゲームのときの生産アシストとして使われるらしいからいつか俺の技術を継いでくれる弟子が現れると信じています
洋介よかったらたまには俺と一緒に畳作ってくれや
それでは長くなりましたがこれで私の最後の挨拶とさせていただきます
今までありがとうございました
よい人生でした」
「これをもちまして故山本誠司様の最後の挨拶は終了といたします
ご清聴ありがとうございました」
「本日はお疲れ様でございました
最終確認となりますがよろしいでしょうか」
「はい大丈夫です」
「それではこちらが山本様の個人識別カードでございます役所に提出してポイント整理を行ってください」
「他の持ち込んだ荷物や道具類はどうなるのでしょうか」
「こちらは入所されるときに所有権は施設に移されておりますのでお部屋の荷物でお持ち帰りになりたいものは買い取りしていただくことになります
お母様の個人識別カードはそのままお持ち下さい」
「分かりました後で部屋を見させてもらってもよろしいでしょうか」
「1週間ほどそのままにしておきますので整理していただけたら助かります
そしてアバター保険ではなく山本様から頼まれていたことがあるのですがよろしいでしょうか」
「何でしょう大変なことでないといいのですが」
「一度でいいから息子に俺の仕事を体験してもらいたいというものでした
こちらに設置されているデータの入力と記録を行っている機械は勿論データの出力もできるものでして使用される方に実際保存されている技術を用いての作業を体験することができるのです
それでよかったらお父様のデータで畳作ってみませんか
少しの時間でも構いませんのでいかがでしょう」
「それくらいでしたら大丈夫です
父が倒れる途中までやっていた仕事の残りを引き継がせていただきたいと思います」
「操り人形というか二人羽織のような感じになるのですが針を通したり糸を引っ張ったりの力加減が体験することで身につきやすいようです
これからの学習コンテンツとして期待されております」
「そうなんですね今日は妻も子供も待っておりますのでまた時間を取ってまいります
よろしくお願い致します」
「かしこまりましたその際は準備をしなくてはなりませんのてご連絡下さい」
そうして部屋の整理をするため改めて訪れた父の部屋は小さな畳やドールハウスのような和室の作りかけとか置いてあった他の職人達から障子とかのパーツを組み合わせていく予定だったのかもしれないので
小さな畳だけ引き取ってあとは施設に任せることにした
「すみません今日はよろしくお願い致します
私は本当に父の仕事を手伝ったこともないのてすが大丈夫でしょうか」
「大丈夫です経験者の方がより良く理解されて上達も早いのですが今回職人になるわけではございませんのでどうぞ機械に任せてやっていきましょう」
ヘッドセットとコードのついた手袋を身に着け作業途中になっていた畳の前に立つ
「本来畳作りは寸法通りに細断したり沢山の過程がございますが力仕事は難しいため畳縁の縫い付けの手作業のところを担ってもらってました」
「それでは始めます緊張するかと思いますが出来るだけリラックスして機械に委ねてください」
小さなモーター音とともに手袋の操られた手が針を掴む
迷いなく針を畳に通して返していく縁の端を叩いて形を整える繰り返される運針を見ていた
「子供は親の背中を見て育つというけど私は本当に父の背中しか見れませんでした
背中の向こうにはこの様な景色があったのですね」
ヘッドセットを外し手袋を脱ぎながら一緒に片付けていく
きっと一緒にやっていきたかっただろうに自由にさせてくれてありがとう
この畳だけは俺が仕上げるから一緒に頼むな
外した機械を撫でながらそう呟いた
知らない職業のためツッコミどころが多々あると思いますがファンタジーということでお許し下さい




