【AI】孤独は、最も信用できる武器だった
信じない勇者の隣で
人を信じない、というより――信じきれなかった。
裏切られた回数を数えるのをやめたあたりから、俺は他人に期待することをやめた。
会社でも、友人でも、恋人でも同じだった。
約束は破られ、責任は押し付けられ、最後に残るのは「お前が悪い」という言葉だけ。
だから俺――**相馬 恒一**は、今日も一人で夜道を歩いていた。
あの日までは。
眩い光に包まれたのは、横断歩道の真ん中だった。
信号は青だったはずなのに、次の瞬間、視界が白に塗りつぶされる。
「……召喚、成功しました!」
聞き覚えのない声。
目を開けると、そこは石造りの広間で、ローブを着た人間たちが俺を囲んでいた。
そして俺の隣には――
「やっと来たか……!」
剣とマントを身につけた、いかにも“勇者”然とした青年が立っていた。
「こちらの方が、異世界償還のために召喚された勇者様です」
老いた神官がそう告げる。
勇者は希望に満ちた目で周囲を見渡し、拳を握りしめた。
「俺は……この世界を救う!」
その瞬間、俺は理解した。
――ああ、俺は巻き添えだ。
「で、俺は?」
問いかけると、神官は困ったように言った。
「……魔法陣の誤作動で、一般人の方まで一緒に」
やっぱりな。
「元の世界には戻れないんですか」
「今のところ、方法は……」
要するに、ない。
勇者はすぐに仲間を集め、王都を旅立った。
剣士、魔法使い、回復役。
信頼と友情で結ばれた、理想的なパーティ。
俺は――そこに加わらなかった。
「一緒に来ないのか?」
勇者が声をかけてきた。
「遠慮しとく」
「でも、一人じゃ危険だ」
「人と組む方が、俺には危険なんだ」
勇者は納得できない顔をしていたが、それ以上は言わなかった。
こうして俺は、一人の冒険者になった。
パーティは組まない。
依頼も単独行動限定。
信用するのは、剣の切れ味と、自分の判断だけ。
幸い、この世界で目覚めたスキルは地味だが優秀だった。
【孤立者の直感】
・罠、裏切り、敵意を察知しやすくなる
・単独行動時、能力上昇
……皮肉なスキルだ。
森で魔物を狩り、街で最低限の会話をし、宿では一人で酒を飲む。
誰も裏切らない。
誰にも期待しない。
それでいい――はずだった。
ある日、瀕死の冒険者を見つけるまでは。
「……助けて、くれ」
俺は立ち止まった。
関われば面倒だ。
助けても、感謝の裏に何があるかわからない。
それでも――体は動いていた。
治療を施し、朝まで見張り、何も奪わず立ち去る。
「……どうして、助けた?」
そう聞かれた時、俺は答えられなかった。
信じない。
でも、完全に切り捨てることもできない。
勇者が世界を救う物語の裏で、
俺は今日も一人で剣を振るう。
信頼も、絆も、約束もしない。
それでも――
誰にも頼らず生きることが、
本当に“正しさ”なのか。
その答えを探すために。
第二話 一人でしか辿り着けない場所
冒険者ギルドの掲示板は、今日も依頼で埋まっていた。
魔物討伐、護衛、素材採集――どれも表向きは健全だ。
だが、隅に貼られた一枚の紙だけが、妙に目を引いた。
依頼名:行方不明者の調査
場所:旧採掘都市グレイハルド跡
備考:単独行動推奨
単独行動、という文字に違和感を覚える冒険者は多い。
だからこそ、誰も受けない。
――俺には、よく分かる。
これは「見られたくない仕事」だ。
旧採掘都市は、かつて王国の繁栄を支えた鉱山都市だった。
今は廃墟。
理由は「魔物の増加」とされているが、俺は信じない。
街に入った瞬間、【孤立者の直感】が警鐘を鳴らした。
魔物の気配――ない。
代わりにあるのは、人の悪意だ。
崩れかけた建物の地下で、それを見つけた。
鉄格子。
檻の中には、痩せ細った人間たち。
「……冒険者、か?」
声をかけると、恐怖と諦めが混じった目がこちらを見た。
「助けに……?」
俺は、答えなかった。
答えられなかった。
その時、背後から拍手が聞こえた。
「いやあ、困るんだよ。そこ、見られると」
現れたのは、冒険者の装備をした男たち。
数は五。
全員、ギルドの認可証を下げている。
「行方不明者ってのはな、借金のカタなんだ」
男は笑う。
「鉱山跡で働かせて、死んだら魔物のせい。
生きてりゃ、また金になる」
王国の外れ。
監視の届かない場所。
勇者が救う“世界”の裏側だ。
俺は、剣を抜いた。
「全員、ここで終わりだ」
「一人で? 正義感ってやつか?」
「違う」
正義じゃない。
怒りでもない。
――信じないからこそ、見逃せない。
戦いは短かった。
連携の取れたパーティほど、裏切りに弱い。
俺の【孤立者の直感】は、彼らの呼吸、視線、間合いのズレをすべて捉えていた。
最後の一人が倒れた時、俺は息を吐いた。
檻を壊し、人々を外へ連れ出す。
「どうして……?」
また、その質問だ。
「誰かがやらないと、世界は綺麗なまま嘘をつく」
それだけ言って、俺は背を向けた。
街へ戻り、ギルドに報告すると、受付嬢の表情が一瞬だけ曇った。
「……その件は、処理します」
処理、か。
闇は消えない。
ただ、見えない場所へ移るだけだ。
宿の部屋で、俺は一人、天井を見つめる。
パーティを組んでいれば、
仲間を守ることに必死で、檻の奥までは見なかっただろう。
信頼があるからこそ、
疑わない。
疑わないからこそ、
踏み込めない闇がある。
勇者が光を掲げるなら、
俺は影を歩く。
一人だから見えるものがある限り、
俺は今日も――一人で剣を振るう。
第三話 王冠の下の腐臭
王都は、相変わらず輝いていた。
白い石畳、整えられた街路樹、笑顔の市民。
広場では勇者一行の武勇伝が吟遊詩人によって語られ、人々は拍手を送る。
――完璧な国だ。
だからこそ、俺の【孤立者の直感】は、城門をくぐった瞬間から鳴り止まなかった。
嘘が多すぎる。
王都で受けた依頼は、簡単なものだった。
王都近郊の盗賊団討伐
報酬:高額
備考:生死不問
盗賊にしては、条件が緩すぎる。
そして、報酬が高すぎる。
嫌な予感しかしない。
指定された森で、俺は盗賊団を見つけた。
だが――様子がおかしい。
彼らは粗末な装備で、襲ってくるどころか、こちらを見て固まった。
「……冒険者?」
「待て! 話を――」
剣を下ろした俺に、男は震える声で言った。
「俺たちは盗賊なんかじゃない。
元は、王国軍の補給部隊だ」
補給部隊?
聞き出した話は、胸糞の悪いものだった。
王国は戦争を終えていた。
だが、軍の予算は減らなかった。
理由は簡単だ。
上が抜いている。
帳簿上だけ存在する部隊、架空の補給、消える金。
辻褄合わせに切り捨てられた兵士たちは、「盗賊」に仕立て上げられた。
「俺たちは、食うために……」
その先は聞かなかった。
俺は依頼を“完了”させた。
盗賊団は壊滅。
そう報告される。
実際には、彼らを逃がしただけだ。
王都に戻ると、ギルド上層部の視線が、露骨に冷たくなった。
「相馬さん……少し、お話が」
通されたのは、裏口。
豪奢な部屋で待っていたのは、貴族服の男だった。
「余計なことを嗅ぎ回らないでもらいたい」
男は、微笑んでいた。
「この国は、平和だ。
多少の歪みは、必要悪というものだろう?」
「その歪みに、何人埋めた?」
男の笑みが消える。
「一人の冒険者に、何ができる」
「さあな」
俺は立ち上がる。
「でも、見たことを無かったことにはできない」
その夜、俺は王都を離れた。
翌日から、王都では噂が流れ始める。
・単独行動の冒険者がいる
・王国を誹謗している
・盗賊と通じているらしい
……来たか。
腐敗は、自分を守るためなら早い。
勇者は、まだ知らない。
王から授かった剣も、
称賛の言葉も、
すべてこの腐った土台の上に立っていることを。
そして――
いつか、勇者が真実に気づいた時、
この国は敵になる。
その時、俺はどちらに立つのか。
王国か。
勇者か。
それとも――
どこにも属さない、孤独な剣か。
第四話 玉座の裏に座る者
王国の地図を広げると、不自然な点がいくつもあった。
盗賊討伐依頼が集中する地域。
行方不明者が増える街道。
税が重いのに、治安が悪化しない王都。
共通点は一つ――すべて、ある組織の影がある。
王国公認商会《金鴉商会》。
金鴉商会は、表向きはただの大商会だ。
物資流通、傭兵派遣、ギルド支援。
国にとって“なくてはならない存在”。
だから誰も疑わない。
疑えない。
俺は、王都から二日離れた港町で、ひとりの男を待っていた。
元王国官吏。
今は、行方不明者リストに名を連ねている人物。
「……まだ、生きてたのか」
男はやつれていたが、目は死んでいなかった。
「金鴉に、逆らった」
それだけで、話は終わる。
「王は、もう“数字”しか見ていない」
男は震える声で続けた。
「金鴉が出す帳簿を、王は信じている。
税収、軍事、民の声……全部だ」
「操り人形か」
「違う。
操られている自覚すらない」
それが、一番質が悪い。
金鴉商会の倉庫に忍び込んだ夜、俺はそれを見た。
武器。
魔導具。
そして――勇者用装備の試作品。
「……なるほど」
勇者は“選ばれた存在”じゃない。
用意された存在だ。
奥の部屋で、黒幕に近い人物と遭遇した。
年齢不詳の男。
商人の服。
だが、目だけが冷たい。
「単独行動の冒険者か」
俺の名を、彼は知っていた。
「君は、効率が悪い。
群れない。利用しづらい」
「褒め言葉か?」
「事実だ」
男は微笑む。
「勇者は光だ。
王は器だ。
民は資源だ」
淡々とした声で、世界を語る。
「では、お前は?」
「私は――流れだ」
彼は、殺さなかった。
「君は、まだ“役割”が定まっていない」
そう言って、俺を逃がした。
あえて。
翌日、王都では発表があった。
金鴉商会、王国への更なる支援を約束
勇者装備、正式供給決定
拍手と歓声。
誰も気づかない。
首輪が、金色になっただけだということに。
俺は、夜明け前の街を出た。
黒幕は見えた。
だが、まだ触れられない。
勇者が光である限り、
影は俺一人では足りない。
それでも――
誰かが、この流れに逆らわなければ、
世界は“きれいな嘘”のまま終わる。
第五話 敵性個体・単独冒険者
異変は、静かに始まった。
街に入ると、視線が増える。
宿の主人が部屋を渋り、
ギルドの受付が名前を確認する時間が長くなる。
――俺の名が、回っている。
最初に殺しに来たのは、盗賊だった。
だが動きが違う。
連携、装備、撤退判断。
これは盗賊じゃない。
訓練された殺し屋だ。
【孤立者の直感】が最大まで跳ね上がる。
「……やっと来たか」
五人。
全員、顔を隠している。
「相馬 恒一。
“観測過多”につき、排除対象」
命令口調。
感情がない。
――闇の組織は、俺を敵性個体と定義した。
戦いは熾烈だった。
連携を崩す。
一人ずつ削る。
逃げ道を潰す。
だが、向こうは引き際を知っている。
「撤退」
生き残った二人は、霧のように消えた。
深追いはしない。
それも計算のうちだ。
その夜、俺は“招待”を受けた。
部屋に置かれた黒い封筒。
差出人はない。
君は賢い。
だから、殺す前に話をしよう。
場所は、旧王立図書館地下。
行かない選択肢は――ない。
地下には、あの商人の男がいた。
「残念だよ」
彼は本当に残念そうに言った。
「君は、役に立つと思っていた」
「俺は、誰の役にも立たない」
「それが問題なんだ」
男は静かに続ける。
「世界は“管理”しなければ壊れる。
善意も、正義も、不安定すぎる」
「だから、嘘で固める?」
「だから、物語を与える」
勇者。
平和。
王国。
全部、都合のいい物語。
「君は、その物語を“見てしまった”」
男の目が細くなる。
「だから、敵だ」
「なら、答えは一つだな」
俺は剣に手をかける。
「最後まで、一人でやる」
その後、王国全土に密かに通達が回った。
・単独行動冒険者に警戒せよ
・金鴉商会の利害を阻害する者は敵
・必要とあらば、勇者の名を使え
……来る。
勇者の“光”さえ、
俺を照らす刃になる可能性がある。
だが、はっきりしたことが一つある。
もう、逃げ場はない。
どこにも属さない者は、
どこからも狙われる。
それでも――
俺は、剣を置かない。
信じないからこそ、
最後まで裏切らない。
一人で立つと決めた以上、
世界の歪み全部、
俺が受けてやる。
第六話 歯車を一つ、折る
金鴉商会が“流れ”なら、
中枢は一つじゃない。
俺が狙ったのは――帳簿管理局。
金の流れ。
兵の数。
行方不明者の理由。
全部、ここで“物語”に書き換えられる。
帳簿管理局は、王都の地下深くにあった。
元は避難施設。
今は、誰も存在を知らない。
見張りは少ない。
少なすぎる。
――内部の人間しか来ない場所。
【孤立者の直感】が告げる。
罠は三つ。
逃走経路は二つ。
そして――嘘の出口が一つ。
俺は、正解のルートを選ばない。
わざと、嘘の出口へ。
「……来たか」
待っていたのは、若い女だった。
地味な服。
だが目が、計算で濁っている。
「帳簿官、か」
「正確には、“編集者”」
彼女は微笑む。
「人は、数字を信じる。
数字は、私が作る」
戦わなかった。
俺は剣を抜かない。
「君がここを壊しても、意味はない」
「知ってる」
そう言って、俺は袋を投げた。
中身は――本物の帳簿。
「君が消した“元データ”の写しだ」
彼女の顔色が変わる。
「……なぜ?」
「一人で動いてたからだ」
誰にも見せない。
誰にも話さない。
だから、消せなかった“真実”。
俺は、帳簿管理局に火を放った。
派手じゃない。
だが、確実に“記録”が死ぬ。
逃げる途中、背後で女の声がした。
「あなたは……何者?」
「信じない男だ」
それだけ答えた。
翌日、王都は静かに混乱した。
税収が合わない。
軍の数が合わない。
行方不明者の理由が、説明できない。
金鴉商会は、初めて言い訳を始めた。
黒幕の商人は、報告を受けて黙り込んだ。
「……歯車を、折られたな」
「排除を?」
「いや」
彼は首を振る。
「彼は、“壊し方”を知っている」
敵は、剣じゃない。
孤独だ。
俺は、王都を遠く離れた丘から見ていた。
一つ潰した。
それだけだ。
世界は、まだ何も変わらない。
でも――
流れに、確かな亀裂が入った。
最終話 流れに逆らう者
黒幕は、逃げなかった。
それが、すべてを物語っていた。
場所は王都郊外、金鴉商会の最初の倉庫跡。
今は空。
何もない場所ほど、真実に近い。
「君は、やりすぎた」
商人の男は、いつも通り穏やかだった。
「帳簿は再構築できる。
だが、“疑念”は面倒だ」
「流れが、濁ったな」
「一時的に、だ」
彼は否定しない。
「世界は変わらない」
男は言う。
「勇者は物語を続ける。
王国は形を保つ。
民は明日を信じる」
「嘘でも?」
「信じられる嘘なら、真実より価値がある」
――なるほど。
だから、ここまで来た。
剣は抜かなかった。
男も、抜かない。
二人とも知っている。
ここでの殺し合いは、意味がない。
「君を殺せば、別の君が生まれる」
「俺を生かせば?」
「流れが、少し乱れる」
男は、初めて少し笑った。
「だから、取引だ」
彼は一歩、退いた。
「私は、表舞台から消える。
金鴉商会も、分割する」
「信じろと?」
「いいや」
首を振る。
「君は信じない。
だから、この取引は成立する」
……皮肉な話だ。
別れ際、男は言った。
「君が恐ろしいのは、
正義でも悪でもないところだ」
「誉め言葉か?」
「警告だ」
その後、王国は“少しだけ”変わった。
金鴉商会は解体された。
だが、似た名前の商会が増えた。
王は改革を宣言した。
だが、すべては変わらなかった。
勇者は、世界を救い続けている。
俺は、記録から消えた。
名も、功績も、噂だけ。
単独で動く冒険者がいる。
王国の闇を見たらしい。
信じない男だ、と。
真実かどうかは、誰も確かめない。
丘の上で、風に吹かれながら、俺は思う。
世界は、完全には救えない。
でも、完全に嘘のままにもさせない。
それで、十分だ。
信じない。
だから、目を逸らさない。
それが俺の――
異世界での償還だ。
『孤独は、最も信用できる武器だった』
勇者が光を掲げ、
王が未来を語り、
民が明日を信じる世界で。
ただ一人、
何も信じない男だけが、嘘を見抜いた。
彼は英雄にならなかった。
名も残さなかった。
世界を救ったとも、壊したとも言えない。
それでも――
確かに、流れは一度だけ逆向きに揺れた。
誰にも頼らず、
誰にも裏切られず、
最後まで自分の判断だけを手にして。
孤独は、弱さじゃない。
信じないことは、逃げじゃない。
それは、
最も信用できる武器だった。
AIで作成した小説はどうだったでしょうか?




