18 後方腕組み悪役面!
「いや~、お二人とも実に良いですよ。お忍びで男装した姫君と護衛の騎士様だ」
配信用の魔道具を構えたアダムにおだてるように言われて、ルイスはえへへと相好を崩した。
「ランドルフ様はどう見てもお姫様ではないですよ。騎士としては駆け出しの僕のことを、騎士だって認めてもらえるのは嬉しいですけどね」
「……!!」
ルイスの横で、ランドルフは口に拳をあてて笑いを堪えている。発言したアダムは、なんとも言えないまったりとした優しい笑顔になり、話を切り替えた。
「見る側に様々な想像の余地のあるお二人ということですね! すばらしいです。さて、配信の場所は決まっているんですか? かなり注目を浴びているみたいですが」
言われてルイスが辺りを見回すと、遠巻きながら三人の挙動を注視していた人々がハッと目をみはったり、息を呑んだりする。
にこりと微笑んで、ルイスは手を振った。
その対応を見て、ランドルフがおや? という表情になる。
「レインくんは、ファンサービスに慣れているのかな?」
「慣れているといいますか……必要に駆られるとできてしまう、でしょうか。僕の場合は母がいわゆる『やり手の経営者』なので、外にいるときはどんな場面でも笑顔で愛想が良いですからね」
ルイスの母フィリスの鉄の掟は「嫌な相手にこそ、にこにこして決して付け入る隙を見せるな」である。母の薫陶を受けているルイスは、老獪さは及ばず隙だらけなのはともかく、期待されているのを感じると、笑顔で手を振るくらい自動的にできてしまうのであった。
「お母様がやり手の経営者か。俺も知っているひとだろうか」
ごく当然の会話の流れとしてランドルフがそう言って首を傾げた。ルイスは自分の失言を悟り、はうっと笑顔のまま固まる。
(素性に関心を持たれるのは、良くないですね……! お母様は「やり手の経営者女性」として、王都で最初に名前が挙がっても不思議はない……)
ルイスはこれまでたびたび「心の動きがわかりやすく、態度に出る」と指摘されてきたので、自分では自分のことがよくわかっているつもりだ。尋ねられたら誤魔化しきれない、フィリスの名前が出れば「レインくん」の正体にはすぐにたどりつかれてしまうだろうと、肝を冷やす。あと二ヶ月乗り切るために、失言を減らす慎重さが必要だと強く再認識をした。
「ランドルフ様でしたら、母の名前はご存知かもしれません。ですが、僕にとって母はあまりに偉大で、母越しに僕を見られると簡単にかすんでしまいます。僕と母の名前を、今の時点でランドルフ様が結びつけて考えていないのなら、そのままでいて欲しいというのが僕の願いです」
その言葉に、嘘はない。
一方のランドルフは、心動かされたかのようなまなざしで「自分自身を見て欲しい、か」と言いながらルイスを見下ろしていた。
二人の会話が届く距離で見守っていたアダムは、うんうんと頷きながら呟く。
「守りたい、この笑顔。だけどちょっとやらしい空気にして来たいような気もしますねえ……!」
言いながら、すばやく周囲へと視線を滑らせた。建物の陰からひょこっと姿を見せてぶんぶん手を振っている、黒っぽい衣装の相手に軽く頷いてみせる。
それから、すぐに笑みを浮かべて「では、ここから軽く移動した先で配信を始めましょう」と提案をした。
* * *
「じれったいな、あの二人。さっさと押し倒せば良いものを」
遠巻きに「第一騎士団の日常」ゲリラ配信予告を見ていたバルトロメオは、不穏な呟きをもらした。
もちろん「王子様チャンネル★」は配信中につき、視聴者にはその声が届いてしまっている。配信慣れしているバルトロメオはわかった上で、従者の構える魔道具に向かって不敵に笑いかけた。
「ということで、俺が今からやらしい雰囲気にしてきます!」
※しばらくお休みしていてすみません!2月に書いてあった部分短いのですがひとまず更新を……(このあと1500字くらい書いて更新しようと思ってずっと書きかけに沈んでいまして)(まず作者は内容思い出すところから)
……最近私、キャラの名付けで続けてミスっているんですが、進行中のわりとシリアスめの別作品と主要キャラが名前被りしている痛恨の事実に本当についさきほど気づいて、びっくりしています!
無関係です!!




