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Realize  作者: 147
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空間の欠如

霧の第1層、崩れた橋の下。

クロノとミラースは、息を潜めて追跡者の影を振り切っていた。

D.E.Xのドローンが上空を旋回し、赤いサーチライトが霧を切り裂く。

クロノのポケットで、ライアスの右手が微かに震えていた。

『……急げ……クロノ……心臓部は……もっと下だ……』

ミラースが解析視界を展開し、周囲の異常をスキャン。

「ドローンのパターンが……変わりました。  囲い込みに来てる。脱出ルートが狭まってるんです」

クロノはタバコを咥え、煙を吐く。

「……くそ。D.E.Xの本気か」

そのとき、通信端末が震えた。

非公式チャネルからの着信。

画面に映るのは、アキサワの顔。

彼女の目は、いつもの無機質さから少し外れ、疲労と迷いが滲んでいる。

「クロノ。聞こえるか」

クロノは警戒しながら応答。

「……アキサワ。何の用だ。削除対象を追う立場じゃねぇのか?」

彼女の声が、低く響く。

「……お前たちの行動を、監視してる。層の底の侵入ログを見た。D.E.Xのエージェント……奴の存在を、確認した」

ミラースが息を呑む。

クロノは目を細めた。

「……それで? 俺たちを売る気か」

「違う。……協力する」

静寂。

アキサワの言葉が、重く落ちる。

「ライアスは、俺の古い相棒だった。  消されたと思っていたが……お前たちのデータで、裏層の真実を知った。D.E.Xは、異能者を“糧”に都市を維持してる。秩序のためって言い訳でな」

クロノは薄く笑った。

「今さらかよ。どうやって協力すんだ」

「座標を送る。心臓部の正確な位置だ。  OWLのアクセス権限を使って、ドローンの目を逸らす。だが、時間は限られる。10分だ」

通信が切れる直前、アキサワの声が小さく付け加わる。

「……生きて戻れ、クロノ」

ミラースがクロノを見る。

「……信じていいんですか?」

「信じるしかねぇ。あいつは、OWLの犬じゃねぇ。人間だ」

上空のドローンが、突然方向を変える。

アキサワの仕業。

二人は霧の奥へ急ぐ。

──層の底、再侵入。

前回の裂け目より深い場所。

ケーブルがより密集し、空気が電流の熱で歪む。

黒コートの男──D.E.Xエージェントの気配が、すでに濃い。

ミラースの解析視界が、最大出力で展開。

「エネルギー流が……複雑すぎます。人間の感情ノイズが、サーバーに絡みついてる。これが……D.E.Xの本質?」

クロノはリコンストラクトで道を切り開く。

写真から具現化した光源が、闇を照らす。

脳の痛みが、限界を告げる。

そのとき、空間がねじれ、エージェントが現れた。

「また来たか。今度は、完全に統合する」

赤い断層が奔り、二人の足元を呑み込もうとする。

クロノはカメラを構えるが、視界が揺れる。

「くそ……負荷が……」

ミラースが前に出る。

「私に任せて!」

彼女の解析視界が、エージェントの構造を深く掘る。

瞳が淡く光り、空間の流れを読み取る。

「……見えました!エージェントの“核”──感情ノイズの中心が、弱点です!そこに、重力の楔を叩き込めば……!」

クロノはライアスの右手を握りしめ、リコンストラクトを起動。

右手の写真を基に、重力の波動を具現化。

ミラースの指示通り、核へ向けて放つ。

黒い重力が凝縮し、エージェントの胸を貫く。

ノイズが爆発し、男の身体が崩れ始める。

「不可能だ……D.E.Xは……」

空間の歪みが弱まり、心臓部のサーバーが露わになる。

そこは、無数の異能者の“残響”が絡みついた、巨大なコア。

ライアスの声が、右手から強く響く。

『……今だ……クロノ……  壊せ……!』

クロノは最後の写真──ライアスの全力の一撃を捉えた一枚──を具現化。

重力の楔が、コアへ直撃。

閃光が爆ぜ、層の底が震動する。

だが、その瞬間──

D.E.Xの無機質な声が、空間全体に響く。

『バックアップ・プロトコル起動。  対象の完全抹消を実行。』

サーバーが再起動を始め、エージェントの残骸が再生する。

ミラースが叫ぶ。

「まだ……終わってない!」

クロノは歯を食いしばり、ミラースの手を掴む。

「退くぞ。だが、次は……全部壊す」

二人は裂け目から脱出。

霧の外で、アキサワの通信が再び入る。

「……成功したか?」

「半分だ。だが、お前の協力で、道は開けた」

「なら、いい。OWL内で、味方を集める。待ってろ」

夜のCIVIAに、二人の影が溶け込む。

ライアスの右手が、温かく脈打っていた。

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