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Realize  作者: 147
8/18

未知

CIVIAの最下層──第1層のさらに下、公式地図から抹消された“層の底”。

酸性の霧が濃く立ち込め、崩れたインフラの残骸が鉄の墓標のように立ち並ぶ。

ここは都市の排泄物が溜まる場所。廃棄された機械、忘れられた異能者たちの巣窟。

そして、D.E.Xの“本当の姿”が隠されていると、ライアスの右手が囁いた。

クロノとミラースは、追跡者の目を掻い潜り、この深淵へ降りていた。

ホバーバイクのエンジン音を抑え、霧のヴェールに身を隠す。

ミラースの解析視界が、霧の中の異常を捉える。

「……歪みの集中点、あります。ここが“底”の入口……D.E.Xのデータ廃棄層の、根元です」

クロノはタバコを咥え、右手を取り出した。

指が微かに動く。

『……ここだ……クロノ…… D.E.Xは……“人間の残骸”でできてる……』

声が途切れ、右手の重力が一瞬強まった。

クロノはカメラを構え、シャッターを切った。

現像紙から、頑丈な足場が現実へせり上がる。

霧の奥、崩れた地面に隠された裂け目──

二人はその中へ潜った。

──層の底。

光のない闇。空気は重く、金属の腐食臭が鼻を刺す。

壁は無数のデータケーブルで覆われ、微かな電流音が響く。

まるで都市の神経系を剥き出しにしたような空間。

ミラースが息を抑える。

「ここ……D.E.Xのバックボーン…… エネルギー流が、異常です。人間の“感情”みたいな、ノイズが混じってる……」

クロノは前進しながら、写真を具現化。

道を照らす光源、崩落を防ぐ支柱──

脳の痛みが、再び頭を締めつける。

それでも止まらない。

ケーブルの奥、巨大なサーバー群が現れた。

そこに、ぼんやりとした人影が立っていた。

黒いコート、フードに隠れた顔。

あの夜、ライアスを消した男。

男はゆっくりと振り返る。

空間がねじれ、周囲のケーブルが震えた。

「……お前か。あの時の“フクロウ”」

クロノの瞳が鋭く光る。

「ライアスを……どこへやった」

男は低く笑った。

声は機械的で、感情が欠落している。

「消したんじゃない。“統合”したんだ。D.E.Xの糧に」

ミラースが解析視界を展開。

「この男……異能じゃなくて、“システムの一部”……? D.E.Xのエージェント?」

男の掌が掲げられ、赤い断層が奔る。

空間が裂け、クロノたちの足元が歪む。

「ここはD.E.Xの“心臓部”。都市の秩序を保つために、異能者の残骸を吸収する場所だ。お前たちも、加わればいい」

クロノは即座にカメラを構え、シャッター。

現像から引き出された銃が、手に収まる。

引き金を引き、弾が男の肩をかすめる。

だが、傷口から血ではなく、データノイズが噴き出した。

男は動じず、裂け目を広げる。

ライアスの右手が、クロノのポケットで震えた。

『……奴だ……クロノ…… 重力の楔で……叩き潰せ……!』

クロノはリコンストラクトを起動。

右手の写真を基に、重力の波動を具現化。

黒い重力が凝縮し、男の身体を押しつぶす。

男のコートが裂け、顔が露わになる。

──それは、無表情の合成人間。D.E.Xの端末。

「無駄だ。D.E.Xは永遠だ。お前たちの“感情”は、ただのノイズ」

空間の歪みが爆発し、二人は後退を余儀なくされる。

ミラースが叫ぶ。

「クロノさん、出口が閉じかけてる!」

クロノは最後の写真を弾き出す。

ライアスの笑顔の一枚。

「まだ終わらねぇ……」

光が閃き、男の動きを一瞬止める。

二人は裂け目から脱出。

背後で、男の声が響く。

「……次は、逃がさない」

層の底の霧に、二人の息が白く溶ける。

クロノはタバコに火をつけ、煙を吐いた。

「……D.E.Xの“心臓”か。あいつを壊せば、ライアスは戻る」

ミラースが頷く。

「でも……奴は一人じゃない。もっと、深く潜らないと」

右手の指が、弱く曲がった。

『……そうだ……もっと……底へ……』

追跡者の影が、霧の向こうに迫っていた。

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