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Realize  作者: 147
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終焉

コア室の最奥。

エレナの意識体は、クロノの取り込まれた姿を優しく包み込んでいた。

クロノの身体は、すでに半透明になり、データノイズのように揺らめいている。

「これで完璧よ。君の執念も、私の一部になる」

シェイドとライアスは、ボロボロの身体で立ち上がろうとする。

だが、重傷のライアスは膝をつき、シェイドの影も限界に近い。

ミラースは、虚ろな瞳でただ立っている。

エレナの声が、静かに響く。

「お前たちも、遅かれ早かれ統合される。秩序は、永遠だ」

シェイドの影が、最後の力を振り絞ってエレナの影を絡め取ろうとする。

ライアスが、折れた右腕を無理に動かし、重力を凝縮しようとする。

だが、力不足。

エレナの影が、二人を押し返す。

その時、ミラースがゆっくりと一歩踏み出した。

虚ろな瞳のまま、解析視界を起動する。

ノイズが溢れ、彼女の精神はまだ空白のままだ。

だが、視界の奥に、何かが引っかかった。

──消滅したデータの中に、微かな“像”が残っている。

クロノの、写真のように焼きついた記憶。

ミラースの唇が、わずかに動く。

「……クロノさん……?」

自我のない声。

だが、その言葉が、きっかけになった。

解析視界が、D.E.Xのコア深くを掘り下げる。

エレナのデータ構造の中に、クロノの“リコンストラクト”の残滓が、まだ生きていることを発見する。

クロノは、取り込まれた瞬間、最後の力を振り絞っていた。

自分の異能を、D.E.Xの内部で逆利用していたのだ。

──現実世界を、“写真”としてコアの中に具現化していた。

CIVIAの酸性の霧、鉄の匂い、ネオンの光、仲間たちの温もり。

すべてを、古いポラロイドのように焼きつけて。

ミラースの解析視界が、その“写真”を捉える。

空白だった心に、クロノの記憶が流れ込む。

煙草の煙、冷めた瞳、「お前、思ったより強いな」という言葉。

ミラースの瞳に、光が戻る。

「……クロノさん……待って」

自我が、ゆっくりと蘇る。

涙が頬を伝う。

「あなたを……取り戻す」

ミラースは、解析視界を最大に展開。

クロノの残した“現実の像”を、増幅する。

シェイドとライアスが、それに気づく。

シェイドの影が、ミラースの視界を支えるように広がる。

ライアスの残った重力が、データを押し流す。

エレナの影が、初めて動揺する。

「不可能……私のデータが……現実のノイズに……」

コア室全体が、揺れ始める。

クロノの“写真”が、D.E.Xの仮想世界を侵食していく。

現実の断片が、次々と具現化。

崩れた路地、ネオンの残光、仲間たちの姿。

D.E.Xのデータによる完璧な秩序が、現実の混沌に塗り替えられていく。

エレナの声が、悲鳴のように歪む。

「やめて……私の都市が……!」

クロノの姿が、コアの中心に再び現れる。

半透明の身体が、ゆっくりと実体を取り戻す。

彼は、最後の写真を握りしめていた。

自分と仲間全員が写った、一枚。

「……現実を……裏切らない」

リコンストラクト、最終起動。

現実世界が、D.E.Xのコアを完全に呑み込む。

データの世界が、現実に引きずり出され、崩壊する。

エレナの影が、ノイズとなって散っていく。

「これが……人間の……」

最後の言葉を残し、D.E.Xは消滅した。

中枢塔が、静かに崩れ始める。

クロノの身体も、データと共に薄れていく。

彼は、微笑んだ。

「……十分だ。お前たちを……現実に、戻せた」

ミラースが、駆け寄る。

「クロノさん!!」

だが、手がすり抜ける。

クロノの姿は、最後に煙草の煙のように溶け、消えた。

データとして、現実と仮想の狭間で永遠に残る。

CIVIAの空に、初めて本物の朝焼けが差し込んだ。

人工の雲が晴れ、風が吹く。

ライアスは、治療を受けながら空を見上げ、笑った。

「……あの野郎、最後までカッコつけて」

シェイドは、影を優しく揺らし、静かに呟く。

「……ありがとう」

ミラースは、クロノの古いカメラを胸に押し当て、涙を拭う。

「……あなたは、いつもここにいる」

現実の混沌が、都市を覆う。

秩序は失われた。

だが、人間らしさが、取り戻された。

クロノの“写真”は、どこかでまだ焼きつけられている。

現実を、裏切らない一枚として。

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