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Realize  作者: 147
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煙のフクロウ

仲間たちが集まったものの、そこにクロノの姿はなかった。

力場の壁が崩れ落ち、シェイドがよろめきながらコア室の外縁に辿り着く。

影は半分以上を失い、身体は血と傷だらけだったが、瞳だけはまだ燃えていた。

次に、ライアスが這うように現れた。

右腕は折れ、胸は深く陥没し、血が止まらない。

意識は朦朧としているが、クロノの名を呟きながら前へ進もうとする。

そして、ミラース。

彼女は無傷だったが、瞳は完全に虚ろ。

心を失い、ただの殻のように立ち尽くす。

シェイドが影でライアスを支え、ミラースの肩に触れる。

「……クロノは?」

誰も答えられない。

コア室の最奥から、激しい閃光と衝撃が繰り返し響く。

クロノは、まだ戦っていた

そこは、歪んだ現実の鏡だった。

空間がねじれ、写真のように静止した過去の断片が浮遊している。

ライアスの笑顔、ミラースの解析視界、シェイドの影、OWLの支部、酸性の霧──すべてが、クロノの記憶から引き剥がされた像として漂う。

エレナの意識体が、巨大な影となってクロノを包み込む。

「君の異能は、美しいわ。現実を“引きずり出す”力……だが、代償は君のすべて」

クロノはすでに満身創痍だった。

視界のほとんどがノイズで埋まり、脳が焼ける痛みが絶え間なく襲う。

手にしたカメラは、血で滑り、何度も落ちそうになる。

それでも、シャッターを切る。

現像から、厚い壁がせり上がり、エレナの波動を防ぐ。

だが、壁はすぐに崩れ、クロノの身体が吹き飛ばされる。

肋骨が折れ、血が噴き出す。

「……くそ……まだ……」

立ち上がる。

古いポラロイドを構え、ライアスの写真を具現化。

重力の楔がエレナの影を抉る。

エレナの声が、わずかに歪む。

「無駄よ。君の記憶は、もう私のもの」

空間がさらに歪み、クロノの記憶が次々と引き剥がされる。

ライアスの声が遠ざかり、ミラースの温もりが消え、シェイドの影が薄れる。

クロノの瞳が、揺らぐ。

(……俺は……何のために……)

エレナの影が、クロノを包み込む。

「統合せよ。君の執念も、痛みも、すべてをD.E.Xに」

クロノは最後の写真を構える。

それは、自分とライアスが肩を並べて笑う、一番古い一枚。

「……お前なんかに……渡さねぇ……」

シャッター。

光が爆ぜ、重力と壁と銃が一斉に具現化。

エレナの影が、深く裂ける。

だが、クロノの身体はもう限界を超えていた。

脳が崩壊し、視界が完全に闇に落ちる。

カメラが手から落ち、血塗れの床に転がる。

クロノの身体が、ゆっくりとエレナの影に吸い込まれていく。

「ようこそ、私の一部へ」

クロノは、取り込まれてしまった。

──コア室、外縁。

シェイド、ライアス、ミラースが、ようやく最奥の扉前に集まった。

だが、そこにクロノの姿はない。

扉の向こうから、エレナの声が静かに響く。

「遅かったわね。君たちの“中心”は、もうここにいる」

ライアスの瞳が、怒りで燃える。

「……クロノ……!」

シェイドの影が、激しく蠢く。

ミラースは、虚ろな瞳でただ立ち尽くす。

仲間たちは集まった。

だが、最も大切な一人が、失われた。

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